流行りのお酒「ジャパニーズクラフトジン」特徴から“魅力”をひも解く

ジャパニーズクラフトジン・特徴と魅力

クラフトジンの世界的なブームを受けて、ここ日本でもクラフトジン造りが活発になってきています。
2016年9月に京都蒸留所の「季の美」がリリースされたのを皮切りに、焼酎の酒蔵や大手ウイスキーメーカーまでもが参入し、今の日本のジンブームを牽引しています。

日本産のクラフトジンは「ジャパニーズクラフトジン」とも言われますが、ジャパニーズクラフトジンは世界のジンと比べ独特の傾向があり、特徴的と言えるでしょう。

本記事では、ジャパニーズクラフトジンの特徴をご紹介しつつ、そこから筆者が思う“魅力”について紐解いていきます。

ジャパニーズクラフトジンの“特徴”を知る

まずはざっくりとジャパニーズクラフトジンの特徴を挙げていきます。

  • 日本らしさが反映されている
  • 焼酎をベースに使用する例が少なくない
  • 地域性が反映されている
  • 日本特有のボタニカル
  • 蒸留酒造りの技術力を活かした造り

それぞれ詳しく見ていきましょう。

日本らしさが反映されている

ジャパニーズクラフトジンに限らず、クラフトジンはその土地や風土などの「〜らしさ」で説明できるのが大きな特徴。
ジャパニーズクラフトジンにおいても、ただ単に日本で造られているだけでなく、用いる素材や製法など「日本らしさ」が反映されています。
詳しくは後述しますが、ある意味では「日本人に最適化されたジン」と捉えることもできます。

ジャパニーズクラフトジンには日本らしさが反映されている

ジャパニーズクラフトジンはとても日本的なお酒。

焼酎をベースに使用する例が少なくない

ジンはベースとなるお酒にボタニカル(ハーブ、スパイス、果皮など)を加え風味づけされますが、ジャパニーズクラフトジンでは、ベースとなるお酒にも「日本らしさ」が反映されています。
芋焼酎をベースに使用する油津吟AKAYANE、それに米焼酎もしくはライススピリッツを使用する季の美や、和美人など、焼酎や日本酒由来のスピリッツをベースに使用する例が多々あります。

地域性が反映されている

ジャパニーズクラフトジンでは「日本らしさ」はおろか、さらにローカルに、産地の地域性が反映されている例も多々あります。
例えば「京都らしさ」に強いこだわりを見せる季の美や、「鹿児島らしさ」にこだわる和美人、それから3月にリリース予定のSAKURAO GINでは「広島らしさ」にこだわりを見せています。
もちろん、その土地の風土や特産品がボタニカルとして活用されています。

日本特有のボタニカル

ジンは、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカルの華やかな香りや風味を楽しむお酒。
ジャパニーズクラフトジンでは、日本特有のボタニカルが多く使用される傾向があります。
日本には国内の各地域や四季によって様々な名産品があり、それらは独自のボタニカルとして活かせるのです。
例えば柚子や茶葉、山椒や生姜、ときにはヒノキや桜の花まで使用される例があります。
これらのボタニカルは日本人なら誰しも味わった、もしくは感じたことがあるものでしょう。
もちろん、他国産のジンでこれらのボタニカルは一般的ではありません。

ジャパニーズクラフトジンでは茶葉が使用されることも少なくない

茶葉が使用されることも少なくない。

蒸留酒造りの技術力を活かした造り

日本では古くから焼酎造りが行われ、近年はウイスキーの産地として世界から評価されています。
その蒸留酒を造る技術が、ジンづくりにも活かされています。
丁寧で繊細な造りはもちろん、具体的な例を挙げると、ジンではあまり用いられない、ボタニカルを特性ごとに分けて注出する方法や、それに伴いブレンドを行うジンも多々あります。
これらの製法は、当然のことながら技術力や経験なしにはできません。

ジャパニーズクラフトジンの“魅力”とは?

それではジャパニーズクラフトジンの“魅力”はどうでしょうか。
基本的には、先に挙げた“特徴”を“魅力”として捉え直した格好となります。

  • 日本人なら馴染み深いボタニカル
  • お湯割りにも対応できるまろやかさ
  • 日本人の舌に合う飲みやすさ
  • 焼酎、日本酒との親和性の高さ
  • 洋酒らしさと和酒らしさの混在によるリーチ層の幅広さ、ひいてはみんなで楽しめるお酒

それぞれ詳しく見ていきましょう。

日本人ならなじみ深いボタニカル

前述のように、ジャパニーズクラフトジンには、柚子や茶葉など日本人になじみ深いボタニカルが使用されています。
これが何を意味するかというと、ズバリ親しみやすさでしょう。
一般的なジンに使用されるボタニカルは日本人にとってなじみが薄いものが多いですが、日本のジンは決してそうではありません。
お茶が好きなら茶葉を使用したジンは魅力的でしょうし、柚子の香りが好きなら柚子を使用したジンは魅力的でしょう。

山椒や柚子、お茶など、日本人には親しみのあるものが使用されている。

山椒や柚子、お茶など、日本人には親しみのあるものが使用されている。

日本人の舌に合う飲みやすさ

日本人が造るジンなので、当然日本人の舌にあうような造りになっており、優しい味わいで「飲みやすい」と感じるものが多いのもジャパニーズクラフトジンの魅力です。
焼酎がベースだったり、日本特有のボタニカルが使用されたり、今までジンに魅力を感じなかった人も魅了されるような味わいに仕上がっている傾向があります。

お湯割りにも対応できるまろやかさ

ジャパニーズクラフトジンは、飲みやすく仕上がっているのはもちろん、海外のジンで多く見られるドライでスパイシーなジンというより、まろやかで甘みも感じるジンが多い傾向にあります。
そのため、例えば水割りやロックはもちろん、お湯割でも楽しめ、まるで焼酎を味わうかのようにジンを味わえます。
日本的な飲み方に対応しているのは大きな魅力の一つです。

焼酎、日本酒ファンとの親和性の高さ

ジャパニーズクラフトジンは米なり芋なり焼酎ベースのものも多く、しっかりと和を感じる味わいとなっているのも魅力の一つで、焼酎や日本酒など日本のお酒が好きな方にも受け入れられやすい傾向にあります。
ジンではあるものの洋酒感がそれほど強くはなく、しかも前提知識を必要とせずみんなが知る言葉でジンについて語れるのも魅力でしょう。
実際、焼酎がウリのお店に日本のジンが置かれるケースが増えてきており、日本の、いわゆる和酒が好きな方との親和性が高いと言えます。

芋焼酎好きなら芋焼酎ベースのジンは魅力的に映るはず。写真はAKAYANE。

芋焼酎好きなら芋焼酎ベースのジンは魅力的に映るはず。写真はAKAYANE。

洋酒っぽさと和酒っぽさの混在によるリーチ層の幅広さ、ひいてはみんなで楽しめるお酒

すでに何度か挙げているように、日本のジンでは焼酎が使われたり、茶葉や柚子、山椒をボタニカルとして用いたり、はたまた繊細な造りだったり、一言に「日本らしさ」と言っても、幅の広さがあり、リーチする層も幅広いといえます。
つまり、ジャパニーズクラフトジンに魅力を感じる層が幅広いのです。

言い換えると、ジンとはいえ、洋酒っぽさと和酒っぽさが混在しているのがジャパニーズクラフトジンであり、洋酒好きの方はもちろん、普段洋酒を飲まない方でも楽しめるお酒なのです。

極端に言えば、日本人なら皆で盛り上がれるお酒であり、これはジャパニーズクラフトジンならではの魅力と言えるでしょう。

まとめ

最後に、ジャパニーズクラフトジンの特徴と魅力について、おさらいしておきましょう。

ジャパニーズクラフトジンの特徴

  • 日本らしさが反映されている
  • 焼酎をベースに使用する例が少なくない
  • 地域性が反映されている
  • 日本特有のボタニカル
  • 蒸留酒造りの技術力を活かした造り

ジャパニーズクラフトジンの魅力

  • 日本人なら馴染み深いボタニカル
  • お湯割りにも対応できるまろやかさ
  • 日本人の舌に合う飲みやすさ
  • 焼酎、日本酒との親和性の高さ
  • 洋酒らしさと和酒らしさの混在によるリーチ層の幅広さ、ひいてはみんなで楽しめるお酒

ここまでご覧になって、ジャパニーズクラフトジンがいかに日本的な魅力がつまったお酒か、お分かりいただけたかと思います。
ジンという洋酒でありながらも、ここまで日本的なお酒はないかもしれません

これは(ジュニパーベリーさえ使えばOKという)定義のゆるいジンだからこそ、起こりえたことで、今後もさらに面白いジンが生まれることでしょう。

続編記事として、ジャパニーズクラフトジンの“これから”を予想してみました。
さらに流行る?ジャパニーズクラフトジンの“今後”を予想してみる
著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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