そもそもなぜウイスキーは樽で熟成させるのか?

なぜウイスキーは樽熟成させるのか。

少しでもウイスキーを知っている方なら、ウイスキーは樽で熟成させたお酒というのはご存じのことでしょう。
しかし、そもそもなぜ樽で熟成させるのでしょうか?

他のお酒を見てみれば、例えばジンやウォッカ、日本酒などは樽を使用しません。ワインやテキーラなどはモノによっては樽で熟成されますが、そうでないモノも多く出回っています。
しかしウイスキーの場合、樽熟成を経ないモノが市販化されることはありません。

この疑問を解き明かすべく、本記事では「ウイスキーはそもそもなぜ樽で熟成されるようになったのか?」そして「樽熟成のないウイスキーが市販化されない理由」について、わかりやすく解説していきます。

ウイスキーの樽熟成は密造酒がキッカケ?

ウイスキーは歴史の長いお酒で、諸説ありますが12〜15世紀頃にはアイルランド、もしくはスコットランドですでに飲まれていたとされています。
しかし当時飲まれていたウイスキーは、樽での熟成をさせていない無色透明のお酒でした。
そもそもはウイスキーは熟成させないお酒だったというわけですね。

ではなぜ樽での熟成をさせるようになったのか?
結論を先にいうと、「密造酒がもたらした奇跡」によって始まりです。

詳しく見ていきましょう。
舞台は18世紀ごろのスコットランド。
当時スコットランドはイングランド(イギリス)に併合され、ウイスキーの製造に対して不公平な税金がかけられるようになりました。
その逃避策としてウイスキーの作り手は、政府の目から逃れるため山奥に拠点を移し、いわゆる密造酒を作るようになったのです。
その際、作ったウイスキーも隠しておかなければなりませんから、その隠しておく手段として樽を使用したと言うわけです。

樽熟成は密造酒を隠しておく手段だった。

ただ隠しておく手段として用いられた樽ですが、いざ開けてみると琥珀色に変化し、まろやかで美味しいウイスキーに変わっていたのです。
この偶然の新発見により、不公平な税制が撤廃され、ウイスキーの作り手が政府公認となってからも、「ウイスキーは樽で熟成させるもの」として一般化したのですね。

このように密造酒がキッカケとなり、樽で熟成させるようになったのです。

樽熟成によって琥珀色に変化

前述したのようにウイスキーはそもそも無色透明のお酒でした。
現在でも樽で熟成させる前のウイスキーは無色透明です。

樽で長期間熟成させることによって、樽の木の成分がウイスキーに溶け出し、だんだんと琥珀色に変化するのですね。
ただ、変化は色だけではなく、無色透明の状態では荒々しかったお酒がだんだんと落ち着き、まろやかな味わいに変化します。

普段飲んでいるウイスキーの味わいは樽熟成によるもの、といっても過言ではないでしょう。

4年熟成と12年熟成の原酒の樽の中での様子

なぜ樽熟成のないウイスキーは存在しないのか?

このように樽での熟成が一般化したウイスキーですが、そもそもなぜ樽熟成をさせていないウイスキーは売られていないのでしょうか?
ワインやテキーラでも樽熟成を用いますが、全てではなく樽を使用しない、もしくはそもそも熟成をさせないモノも多く売られています。

これは、前述のように熟成前のウイスキーが荒々しい味だということもあります。
しかしそれだけでなく、多くの国において、「ウイスキーは樽で熟成させるもの」と定義づけされているのです。

例えば本場スコットランドのいわゆる「スコッチ」の場合、3年以上樽で熟成させたものでなければならないと酒税法で定められています。
つまり樽で熟成させなければスコッチウイスキーと名乗ることができないのですね。
バーボンで有名なアメリカでも、2年以上樽熟成させたものが「ストレート・バーボン」と名乗ることができ、流通している多くの銘柄がこれにあたります。

このように、味わい云々だけでなく、ウイスキーは樽で熟成するものと定義されているのですね。

樽熟成こそがウイスキー最大の特徴

ウイスキーは樽で熟成させた原酒をブレンドして完成する

前述のように、樽で熟成させることによって、色だけでなく味わいも大きく変化するウイスキー。
樽熟成こそがウイスキー最大の特徴といってもいいでしょう。

樽熟成前の無料透明はウイスキーはニューポットといい、これは見学できる蒸留所や限定販売などで飲むことができますが、やはり味はかなり荒っぽいです。
飲み慣れたあの琥珀色のウイスキーとは別物とも感じるかもしれません。
それだけ樽熟成がウイスキーにもたらす影響は大きいのです。

さらに、熟成期間や樽材の種類などによっても味わいは大きく変化し、それをブレンダーと呼ばれる職人たちが巧みにブレンドすることで、あの複雑な味わいのウイスキーが出来上がるのですね。
ウイスキーと樽の関係性については知れば知るほど奥が深く、面白いものであります。

まとめ

ウイスキーはなぜ樽で熟成させるものなのか、理解できましたでしょうか?

最後にざっくりとまとめると…

  • ウイスキーは元々は熟成させないお酒だったが、密造酒がキッカケとなり樽で熟成させるように。
  • 「スコッチ」など、今では樽を使用しなければウイスキーと名乗ることができない地域もある。
  • 琥珀色やあの複雑な味わいは樽熟成によって得られている。

樽熟成こそがウイスキーの最大の特徴であって、今やなくてはならない工程なのですね。

なおこういった知識は必要不可欠ではありませんが、ちょっとした豆知識として知っておくとウイスキーがより楽しめるようになります。
少しでも多くの方が、よりウイスキーを楽しめるようになっていただければ嬉しいですね。

それではこの辺で。

参考文献:ウイスキー完全バイブル|ナツメ社

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

関連記事

  1. ウイスキーラバー必見!グランド ハイアット 東京オリジナルの「イチローズモルト」が数量限定で登場! ウイスキーラバー必見!グランド ハイアット 東京オリジナルの「イ…
  2. 「愛せよ、さもなくば憎めよ」熱狂的なファンを持つウイスキー「ラフロイグ」の特徴と魅力 愛せよ、さもなくば憎めよ…熱狂的なファンを持つウイスキー「ラフロ…
  3. 2017年にもっとも飲まれたウイスキーランキングTOP100を一挙紹介!by「HIDEOUT CLUB」 2017年にもっとも飲まれたウイスキーランキングTOP100を一…
  4. スペイサイドモルトを知る シングルモルト入門〜「スペイサイドモルト」を簡単解説!
  5. ハイボールの起源とされるスコッチ「デュワーズ」はなぜ若年層に人気? ハイボールの起源とされるスコッチ「デュワーズ」はなぜ若い世代に人…
  6. ストレートであるべき? ウイスキーはやっぱりストレート飲むのがおすすめ?
  7. 世界最強のピーテッドウイスキー「オクトモア」の新エディション「09.3 アイラ・バーレイ」が数量限定! 世界最強のピーテッドウイスキー「オクトモア」の新エディション「0…
  8. Whisky Festival 2018 in大阪が6/3(日)に開催!国内最大級のウイスキーの祭典! Whisky Festival 2018 in大阪が6/3(日)…

おすすめ記事

広島市・ベネチア市 友好協力記念!「SAKURAO GIN」と「MARTINI」を使ったカクテルプロモーションを開催! 広島市・ベネチア市 友好協力記念!「SAKURAO GIN」と「MARTINI」を使ったカクテルプロモーションを開催!

水の都として世界的に知られるイタリアのベネチア市、そして中国地方最大の都市・広島市が友好協力関係にあ…

日本一のバーテンダーと行くロンドン・バー巡り - 旅でかきたてられた創造力とは?その集大成カクテルもご紹介 日本一のバーテンダーと行くロンドン・バー巡り – 旅でかきたてられた創造力とは?その集大成カクテルもご紹介

新たな発見や想像しえないインスピレーションを得られるのは、旅の大きな醍醐味の一つ。日本一のバーテ…

日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』後編 - こだわりの蒸溜法と最先端のサスティナビリティとは? 日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』後編 – こだわりの蒸溜法と最先端のサスティナビリティとは?

『ボンベイ・サファイア プレミアクリュ』のカクテルコンペティションで日本一に輝いた加藤晋悟さん(TH…

人気の記事

  1. あのパーカーポイントが日本酒に!90点以上78銘柄を発表 日本酒版パーカーポイント
  2. ジャパニーズ・クラフトジンが今アツい!話題の4銘柄をご紹介 ジャパニーズ・クラフトジン
  3. 日本でも流行必至!「クラフトジン」の特徴と銘柄まとめ クラフトジンとは?
  4. ウイスキー世界売り上げランキングTOP20 世界ウイスキー売上ランキング
  5. 世界一売れているビールは?2015年世界シェアTOP10を発表! 世界一のビールは?

新着記事

関連記事

PAGE TOP