テキーラはセレブのお酒?メキシコの地酒がアメリカで大人気になるまで

テキーラ・アメリカで人気になるまで

ジンやウォッカ、ラムとともに4大スピリッツの一角をなすテキーラ。
日本でも、罰ゲームのお酒ではなく、味わうお酒として人気が高まりつつあります。

世界的にも人気のお酒であるテキーラですが、特にアメリカでの人気は凄まじいことに。
何せアメリカは、本場メキシコをしのいでテキーラの最大消費国です。(Economistより)

特に近年はハリウッドセレブらの間でテキーラが大人気となり、「テキーラはセレブのお酒」として地位を高めつつあります。

本記事では、メキシコの地酒にすぎなかったテキーラが、どのようにして世界的なお酒となり、セレブのお酒となるまでに至ったのか、その道のりを辿っていきます。

テキーラはメキシコのうまい地酒にすぎなかった

そもそもテキーラは、法律の定めによってメキシコでしか造れないお酒。
実はテキーラは、長い間メキシコ国内で飲まれる「うまい地酒」にすぎず、メキシコ国外で知られるようになったのもここ100年の話。

1900年代に入り、アメリカのお酒のコンクールなどに出展するようになり少しずつ、メキシコ国外で知られるようになっていきます。
1968年にはアメリカで、The Champsの曲「Tequila(テキーラ)」が大ヒット。(この曲はみなさんも一度は聞いたことがあるはず。リンクはYouTubeの音源)

こうして少しずつ認知度を上げていくのですが、1968年にさらに大きなムーヴメントがやってきます。

キッカケはメキシコオリンピック?

オリンピックのフラッグ
By www.volganet.ru, CC BY-SA 3.0, Link

そう1968年に開催された「メキシコオリンピック」です。
世界中の人々が注目するオリンピックによって、メキシコの文化にも注目が集まるようになると、自ずとテキーラへの注目度も高まります。

こうしてテキーラが世界からの関心を呼び、世界に進出するように。

そして1974年には、テキーラの原産地呼称制度が成立し、産地や製法などが細かく定められることによって品質も守られることになります。

「100%アガベテキーラ」の制定によって、ハリウッドで大人気に

テキーラが世界に知れ渡ると、地理的にもメキシコに近いハリウッドで特に人気が高まるように。

1993年には「100%アガベテキーラ」という新たな区分が制定されます。
これはいわゆるプレミアムテキーラというもので、アガベのみを原料とする文字通り100%アガベのテキーラ。

このプレミアムテキーラが、90年代、ハリウッドを中心に大ブームとなります。

ハリウッドサイン

プレミアムテキーラについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ハリウッドで大流行!プレミアムテキーラとはどんなもの?

あまりの人気に原料不足に陥り、テキーラ価格が上昇

しかしあまりの大ブームに、その弊害も見られるようになってきます。
原料のアガベが不足し、テキーラが品薄状態に陥ってしまったのです。

そもそもテキーラの原料アガベは、法律でその品種もブルーアガベだけと定められており、原料として使用できるようになるまでに成長するには、なんと6〜10年ほどの育成期間を要します。
当然品薄となったプレミアムテキーラは、希少になり、価格も上昇していきます。

テキーラはハリウッドセレブの間で大人気に

ところが今度は、その希少性、プレミア性によって、ハリウッドセレブやミュージシャン、ITなどの富裕層などの間で大人気に。
有名なところではロバート・デ・ニーロやジェイミー・フォックス、リル・ウェイン、そしてモデルのケイト・モスなど、挙げればキリがありません。
近年では、あまりにテキーラに魅了されてしまったジョージ・クルーニーなどの有名セレブが、自らテキーラを手がけるようになるほどの熱狂に。(詳しくは後述)

カーサミーゴスのオーナーを務めるジョージ・クルーニー
By nicolas genin – originally posted to Flickr as 66ème Festival de Venise (Mostra), CC BY-SA 2.0, Link

こうして少しずつ「テキーラはセレブのお酒」としてもてはやされるようになっていきます。

カクテル「マルガリータ」もテキーラ人気を後押し

上記は主にアメリカ西海岸の話ですが、ニューヨークなどの東海岸ではまた違った経緯があるかもしれません。

ニューヨークを代表するカクテル「マルガリータ」の流行です。
今や定番となったニューヨーク生まれのカクテルによって、当然ベースであるテキーラにも注目が集まるように。
これが東海岸でのテキーラ人気を後押ししたとされています。

ハリウッド映画にもよく登場するように

このようにしてアメリカで大人気となったテキーラは、たびたびハリウッド映画にも登場するようになります。
なかでも有名なのが、Facebookの成り立ちを描いた映画「ソーシャルネットワーク」のワンシーン。
契約成立のお祝いの席で、成功者のお酒として有名プレミアムテキーラ「ドンフリオ1942」が登場。

さらに「ウォール・ストリート」では株で大金を得たあとに「グランパトロン」飲むシーンが描かれるなど、映画においてもセレブのお酒として登場するようになります。

「テキーラはセレブのお酒」を裏付ける、有名ハリウッドスターが手がけるテキーラたち

前述のように、テキーラに魅了された有名セレブらが自らテキーラを手がけるといったケースも見られるようになります。
ここではそのいくつかをご紹介。
誰もが知るあのハリウッドスターも実はテキーラを手がけています。

カーサミーゴス 〜 ジョージ・クルーニーのテキーラ

カーサミーゴスは、日本でも知らない方が珍しい超有名ハリウッドスター・ジョージ・クルーニーが友人と共同で立ち上げたブランド。
ちなみにその友人は実業家のランディ・ガーバーという人物で、モデルのシンディ・クロフォードの夫です。
つい最近、その高い品質が評価され、酒類の世界トップメーカーであるディアジオ社により買収されました。

日本では現在入手が困難となっています。

カボワボ 〜 サミー・ヘイガーのテキーラ

カボワボを手がけるのは、日本でも有名なメタルバンド「ヴァンヘイレン」の元ボーカルであるサミー・ヘイガー。
サミー・ヘイガーは大のテキーラ好きとして知られ、カボワボ以外にもいくつかテキーラを手がけており、またテキーラ専門のレストランなども経営しています。

カボワボは日本でも入手可能で、人気が高いプレミアムテキーラです。

サントメスキーラ 〜 アダム・レヴィーンのテキーラ

サントメスキーラは、日本でも人気が高い「マルーン5」のボーカルであるアダム・レヴィーンと、サミー・ヘイガーが共同で立ち上げたブランド。
その斬新な造りゆえ、定義上はテキーラではありませんが、今後大注目のブランドです。

立ち上げたばかりのため、日本では現時点では入手できません。

他にもジュスティン・ティンバーレイクが立ち上げた「サウザ901(旧名901)」など、セレブが手がけるテキーラは挙げればキリがありません。

セレブが手がける他の銘柄はこちらでご紹介しています。
有名ハリウッドセレブが手がけるプレミアムテキーラ8選!

まとめ

テキーラがいかにアメリカで人気があり、どのようにして人気が高まっていったのか、お分かりいただけたと思います。

最後まとめると…

  • テキーラはメキシコのうまい地酒にすぎなかった
  • メキシコオリンピックで注目が集まるように
  • プレミアムテキーラがハリウッドで大人気に
  • ニューヨークではマルガリータが人気を集める
  • 自らテキーラを手がけるセレブも
  • テキーラがセレブのお酒として地位を確立

日本ではまだまだ罰ゲームのお酒のイメージも強いテキーラですが、このような事実が知れ渡ると、たちまち日本でも大ブームになるかもしれませんね。
少しずつプレミアムテキーラなど人気が高まりつつありますが、もっと多くの方がテキーラを楽しむようになっていただきたいですね。

それではこの辺で。

【参考文献】
テキーラ大鑑|廣済堂出版 著・林生馬

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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