「山崎」の品切れ・品薄問題は本当にサントリーが悪いのか?

山崎・品切れ問題

サントリーの代表的なウイスキー「山崎」といえば、今や日本どころか世界的に人気かつ有名なウイスキー。

あまりの人気ぶりにここ数年は、品切れ・品薄状態が続いており、酒販店やスーパーではなかなかお目にかかることができない状態となっています。
当然のことながら、バーや飲食店ですら仕入れることが難しくなっており、「買う」どころか「飲む」ことすら難しいウイスキーとなっています。

それもあってかネット通販では、山崎12年など山崎ブランドのほぼ全てが定価の倍近くの値段で売られており、それでも売れているのですから、いわば“替えのきかない”ウイスキーなのでしょう。

とはいえ現在の品切れ・品薄状態は明らかに嘆かわしいことです。
それゆえ「品切れさせないのがメーカーの努めである」として、メーカーであるサントリーに対して批判的な意見が聞かれることも少なくありません。

本記事ではこの問題についての筆者の見解を記していきます。
問題の背景には、ウイスキー特有の問題と、社会的な大きな流れが関係していると筆者は考えています。

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そもそもなぜ山崎は欠品・品切れ状態が続いているのか?

まずはなぜ山崎が品切れ・品薄状態が続いているのか、理由を説明していきましょう。

ウイスキーは樽で長期間熟成されるお酒。元は無色透明だったウイスキーの原酒が琥珀色のウイスキーに変化するのはこのためで、樽の木の成分が移ることでおなじみの色へと変化しています。
だいたいどれぐらい熟成されるのかというと、最低でも約3年、長いものだと20年以上熟成されることもあります。
つまり、造り始めてからから売れるようになるまでそれだけの月日を要するということです。

ちなみに、山崎のフラッグシップともいうべき「山崎12年
12年という年数表記がありますが、これは12年“以上”熟成させた山崎の原酒(完成前のウイスキー)を使っているという意味で、12年熟成のものだけで造られているわけではありません。
いくつかの年数の原酒がブレンドされるのが一般的で、18年や25年などの長期熟成原酒がブレンドされることも珍しくありません。(山崎に限らずウイスキーの年数表記は最も若い原酒の年数が表記される)

要するに今市場に出回っている山崎12年は、12年以上前にサントリーが手がけた原酒を使用したもの。
とりわけ山崎12年は顕著ですが、山崎ブランドが品切れ・品薄状態に陥っているのは、ここで使用する原酒が極端に不足しているからです。

山崎12年においては、品切れになったからといって、増産したところですぐに対応できる問題ではなく、売りに出すまでに12年もの月日を要するのです。
これは他の消費財にはないウイスキー特有の問題と言えるでしょう。

なぜ原酒不足に陥っているのか?

ではなぜ原酒が不足しているのかも気になるところでしょう。

一つは世界的なウイスキーの大ブームによって、元から人気だった山崎の需要が一気に増したこと
もう一つはブーム以前のウイスキー業界はずっと下火だったこと、が挙げられます。

数年前からウイスキーがブームとなっていますが、実は日本だけではなく、アメリカやスコットランドはもちろん、ヨーロッパやアジア諸国など世界的なブームとなっています。
なかでもジャパニーズウイスキーは人気が高く、とりわけ山崎はこれまで世界的なコンペで最高賞を複数回獲得するなどブランドとして強いため、急激に需要が増したのです。

そして押さえておかなければならないのが、ブーム以前のウイスキー業界は長らく下火だったこと。

ウイスキーの低迷を表した表

ウイスキーは2008年まで低迷の一途を辿っていた。
出典:国税庁「酒のしおり」

例えば日本におけるウイスキーの消費量は、バブル期を最後にずっと下降線をたどり続け、ようやく底を打ったのが2008年。今から9年前です。
以降はご存じのとおり見事なV字回復となるのですが、今市場に出ている山崎12年の原酒が造られている当時は、ウイスキー業界はかなり深刻な状況だったわけです。
当然サントリーは採算を考慮しなければならないため、そんな深刻な時期に、この先需要が増えるかわからないウイスキーの原酒をむやみに造るわけにはいきません。

このように、山崎を売っている今と、その山崎を造っていた過去のウイスキーを取り巻く状況の違いが、原酒不足を招いているのです。

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世界的なウイスキーブームはなぜ起こり、サントリーは予測できなかったのか?

現在のウイスキーブームのおかげでウイスキー業界は活気を取り戻したのですが、皮肉にも原酒不足、つまりは相次ぐ品切れ・品薄状態をも招いてしまったわけです。

では、そもそもなぜウイスキーはブームとなっているのでしょうか?
ひいては、サントリーはブームを予測できなかったのでしょうか?

まず、現在のウイスキーブームは、日本では2008年頃からのサントリーによるハイボールの大掛かりなプロモーションが功を奏し、ハイボールの再ブームが到来し、さらにはNHKの朝ドラ「マッサン」によって、より一般層にも浸透するようになったと言われています。

山崎の限定ボトル

現在のウイスキーブームは社会的な流れの変化も大きく関わっている。

しかし筆者は、理由はそれだけではないと感じています。
まず感じているのは、SNSの台頭やスマホの普及でネットがより便利になったことで、あらゆる情報が身近になったこと
ウイスキーは元々多くの情報が出回っておらず、専門書を買うか、バーに行くか、など積極的にアクションを取ることでしか情報を仕入れることができませんでした。
つまり敷居が高かったわけです。

それがSNSの台頭によって、ウイスキーを飲んでいる人が自ら情報を発信することで興味を持つ人が増えます。
それだけでなく、スマホの普及も相まってネットがより身近になったことで、ウイスキーの情報、しかもわかりやすい情報が増え、積極的なアクションを起こさなくともウイスキーについてある程度知れるようになったのです。
つまり、ウイスキーを飲む・買う上での敷居が下がったのです。

さらに、近年は個人の嗜好が多様化しており、長らく定番だったものではなく、他と違うユニークなものが好まれる傾向にあります。
(例えば観光では旅行誌で散々紹介されたスポットではなく、SNSで話題のスポットがブームになり、ビール界隈ではクラフトビールがブームになっている)

これらの事象が複雑に重なり合って、現在のウイスキーブームが起きているのだと筆者は感じています。
これなら日本だけでなく世界でウイスキーがブームになっていることの説明もつきます。

12年前に予測することは困難だった…

これらの潮流をサントリーがずっと前に(例えば山崎12年の場合、12年前に)予測できていれば、原酒不足に陥ることはなく、現在の山崎の極度の品薄・品切れ状態になることはありませんでした。
しかし、サントリーが12年に前にブームを予測し、原酒を増産しておくことは限りなく不可能だったと思います。
そもそも、SNSやネットの普及についてはサントリーは門外漢ですし、自らが及ばない分野。このテクノロジーの進化と社会的な流れを12年前に予測することはかなり難しかったでしょう。
さらに当時のウイスキー業界の状況を鑑みれば、原酒をたくさん造っておくわけにはいきません

筆者が最終的に言いたいのは「現在の「山崎の品薄・品切れ問題」についてはサントリーにそれほど落ち度はなく、仕方がないこと」だということです。
特にサントリーを擁護しているわけではありません。マッカランなど有名スコッチでも同様の問題が起きており、これらの問題はメーカーとしては防ぎようがなかったと思います。

ちなみに近年ウイスキーの新銘柄や年数表記(NAS、またはノンエイジという)のないものが多くリリースされていますが、これらの諸問題に対応できる最善策が、新銘柄や年数縛りのないウイスキーだから。
つまりメーカー側としても出来る限りのことはやっているのです。

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小針 真悟
著者:小針 真悟

LiquorPage運営者。様々な業態のバーテンダー経験からジンやウイスキー、日本酒や焼酎など幅広い知識を持つ。

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