あの芋焼酎がベース!ゆず香るクラフトジン「油津吟」を徹底解剖

クラフトジン・油津吟とは

世界的なジンブームのなかで、特に存在感が大きいのがクラフトジン
少量生産のこだわりが強い個性派ジンを指しますが、日本で造られる、いわゆるジャパニーズクラフトジンも存在感を増してきています。

今年に入り大手メーカーも参入するなど銘柄がかなり増えてきていますが、その中でも特に個性が光る銘柄の一つが、今回ご紹介する「油津吟」です。

本記事では、油津吟がどのようなジンなのか、筆者の視点で造りの特徴や味わいなどを徹底的に解説していきます。

油津吟[Yuzu Gin]とは

今年の7月末にリリースされたばかりの油津吟(Yuzu Gin)は、焼酎で有名な宮崎の京屋酒造が手がけるクラフトジン。約180年に及ぶとされる焼酎造りの技術を活かして造られたジンです。
京屋酒造といえば、甕壷に入った人気の芋焼酎「甕雫」で有名な蔵元。油津吟ではなんとその甕雫と、もう一つの高級芋銘柄「空と風と大地」がベーススピリッツの一角として使用されています。

油津吟は、それらをベースにゆずなど和柑橘を中心としたボタニカル(ハーブや果皮、スパイス)を使用した贅沢な造りの「和のクラフトジン」で、シックでモダンなボトルデザインに目がいきますが、肝心の中身も特徴的で、ゆずが香る和のエッセンスが強いクラフトジンとなっています。

ちなみに銘柄名の「油津」とは、単にゆずの当て字ではなく、実は蔵元がある場所の地名(ちなみに“あぶらつ”と読む)。
つまり、地名の油津とボタニカルのゆずを掛け合わせた名前なのです。

油津吟のチラシ

地名である油津とゆずをかけたネーミング。©︎京屋酒造

油津吟の特徴まとめ

油津吟には他の多くのクラフトジンと同じように、独特の個性と唯一無二の特徴があります。
なかでも特徴的だと筆者が感じたポイントを、以下の3つに厳選しご紹介していきます。

  1. 芋焼酎がベースの和製クラフトジン
  2. ゆずなど和柑橘を中心とした9つのボタニカル
  3. ボタニカルは一種ずつ蒸留

それぞれ詳しく見ていきましょう。

人気の芋焼酎がベースの和製クラフトジン

前述のように油津吟は、芋焼酎をベーススピリッツの一角として使用しています。
焼酎を使用したジンは他にもありますが、芋焼酎を使用するジンはおそらく初で、しかも使用するのは「甕雫」と「空と風と大地」といった高級かつ人気の銘柄。贅沢なラインナップはさることながら、このように使用銘柄がはっきりとしているのはかなり異例です。

これらの芋焼酎は、ジンのベースとして最適な度数になるように再蒸留し、度数を高めてから、ピュアなスピリッツとともにベーススピリッツとなります。
そうすることで、ボタニカルの香味成分がうまく抽出され、芋特有のクセがなくなるのです。
そのため油津吟は、芋焼酎が苦手な人でも飲みやすく仕上がっています。

ゆずなど和柑橘を中心とした9つのボタニカル

ジャパニーズクラフトジンといえば、日本ならではの和のボタニカルが特徴ですが、油津吟でも例に漏れず和のボタニカルをふんだんに使用しています。
とりわけ特徴的なのが、ゆずなど和柑橘を中心とした構成で、ゆずの他にもヘベス、日向夏といった宮崎の特産の柑橘類も使用されています。
特にゆずの香りは特徴的で、どこか懐かしい爽やかで温かみのある香りとなっています。

この他にも生姜や山椒といった日本人にはおなじみのスパイスも使用することで、味はしっかりと引き締まっています。

使用ボタニカル全9種
ジュニパーベリー、コリアンダーシード、ゆず、ヘベス、日向夏、山椒、生姜、きゅうり、クローブ

ボタニカルは一種ずつ蒸留

メーカーに伺ったところ、油津吟では上記のボタニカルを一種ずつ別々に蒸留させているようです。
つまり、最終的にはそれらをブレンドする工程が必要になるわけで、かなり手間をかけて造られています。
別々に蒸留しブレンドすることで、各ボタニカルの特徴が活きたジンになるだけでなく、作り手の求める味わいにしやすくなり、出来上がるジンにバランスがもたらされます。

クラフトジンがブームとなった今でこそ、それほど珍しい製法ではなくなりましたが、とはいえ少数派。
油津吟の、複層的ながらも絶妙なバランスの味わいは、この製法によるものが大きいでしょう。

油津吟の香り・味の特徴

ここまでざっくりと特徴についてご紹介してきましたが、肝心の香りと味の特徴についても見ておきましょう。(あくまで筆者の主観です)

香り
第一印象はゆずの香り。柑橘主体の爽やかな香りが広がるも、奥には山椒やジュニパーベリーの凛とした香りがあります。芋臭さは感じまぜんが、奥ゆかしい独特の甘い香りは本格焼酎特有のものかもしれません。


ボディはミディアム。フルーティーでなめらかな甘みが口を包みますが、後味には生姜と山椒のスパイシーな風味があり全体を引き締めます。ジンとしてはかなり飲みやすい味わいです。

まとめ

油津吟がいかに個性的な和のクラフトジンか、お分りいただけたかと思います。

油津吟について、ざっくりとまとまめると…

  • 「甕雫」など人気芋焼酎がベースの和製クラフトジン。
  • ゆずなど和柑橘を中心としたボタニカルによる爽やかな香味。
  • ボタニカルを一種ずつ蒸留することで複層的な仕上がりに。

油津吟の値段は5,400円とジンにしてはやや高価に感じますが(とはいえクラフトジンの相場は3,000〜5,000円前後)、手の込んだ贅沢な造りを踏まえると決して高くはないでしょう。
ちなみにSNS上で油津吟は、味はもちろんのことボトルデザインにも好感がもたれているようです。

最後におすすめの飲み方ですが、蔵元いわくジントニックとのことですが、筆者としてはまずストレートかトワイスアップ(酒1:水1 / 常温にて)で、特徴的な油津吟の香味を堪能することをおすすめします。
その後でジントニックにすると良いかもしれません。度数が47度と最適なので、薄めても特徴がぼやけすぎることはありません。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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