単式蒸留と連続式蒸留の違いとは?初心者向けに簡単解説!

単式蒸留と連続式蒸留

本記事では、単式蒸留と連続式蒸留、それぞれの特徴と違いについて解説していきます。
ちょっぴり専門的に感じるかもしれませんが、イラストなど用いながら、初心者の方でも分かりやすいように解説していきますのでご安心ください。

単式蒸留・連続式蒸留といったワードは、特にウイスキーに頻繁に登場します。
なのでウイスキーを覚えたい方は特に、これらの違いを把握しておきましょう。

これらの違いがわかると、きっと今まで以上にウイスキーなどを楽しみながら飲むことができるでしょう。
知らないで飲むのと、知って飲むのでは味わい方が変わります。

それでは見ていきましょう。

蒸留には単式蒸留と連続式蒸留の2つがある

まず本題に入る前に…

そもそも蒸留って何?
そう思う方もいらっしゃると思うので、簡単に触れておきましょう。

蒸留の仕組み

蒸留とは、液体を熱して、湯気となって蒸発していったもの(蒸気)を冷やすことで、より純度の高い液体を作ること。
お酒における蒸留は、アルコール度数を高めるために行われます。
水とアルコールはそれぞれ沸点が違い、この沸点の違いを利用することでアルコールだけを蒸発させることができ、元の液体よりアルコール度数が高い液体を作ることが可能になります。
度数が高まることによって、より保存性が高いお酒となります。

詳しくはこちらをご参考ください。
【簡単解説】ウイスキーや焼酎でよく聞く「蒸留」とは何なのか?

お酒における蒸留方法は、主に「単式蒸留と連続式蒸留」の2つに分かれます。

ざっくりいうと…
一回ずつしか蒸留ができないアナログな単式蒸留と、
連続的に蒸留ができるハイテクな連続式蒸留です。

単式蒸留は昔からある伝統的な方法で、連続式蒸留は比較的新しい技術です。
ハンドメイドとマシンメイドみたいなものでしょうか。
どちらが良い悪いと言うわけではなく、それぞれ特徴が異なるので、各お酒によって使い分けられています。

それでは次項で、単式蒸留と連続式蒸留、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

単式蒸留とは?

単式蒸留に用いる単式蒸留器(ポットスチル)

単式蒸留に用いる単式蒸留器(ポットスチル)

By Akela NDEOwn work, CC BY-SA 2.0 fr, Link

その名のとおり、単式蒸留器(ポットスチルとも呼ばれる)を用いて蒸留させることです。
主に、アルコール度数は高めたいけど、原料の風味を残したい時に用いられる方法です。

前述のように、昔からある伝統的な蒸留方法で、仕組みはとてもアナログです。

単式蒸留の仕組み

単式蒸留は、単式蒸留器(ポットスチル)を用いて行われます。
その名のとおり、単発式の蒸留方法で、蒸留器の中に入れたモロミ(蒸留させたい材料)の分だけが蒸留されます。

単式蒸留の仕組み

単式蒸留の仕組み。もろみを熱することで純度の高い液体を取り出す。

単式蒸留によって一度に作り出せるアルコール度数は、元の液体の約3倍程度。
例えばウイスキーの場合なら、モロミの度数は7度前後なので20度前後のお酒が出来上がります。
このお酒をまた蒸留器に移して再度蒸留させることで、さらにアルコール度数が高められます。

このように単式蒸留では、数回蒸留を繰り返すことが多く、ウイスキーなど多くのお酒では2〜3回蒸留を行います。
そうすることで、40〜90度前後のお酒を作ることが可能になります。

このとき、作り出すお酒の度数を何度にするかによって、原料の風味の残り具合が変わるのですね。
当然ながら、より度数が低い方が原料の風味は残ります

こうして作りだされたお酒は、そのままでは度数が高すぎて、飲むにしろ樽で熟成させるにしろ不向き。
大抵の場合、水で薄めて度数を調整します。
その後お酒によって、貯蔵なり熟成なりされて出荷されるわけですね。

以上が単式蒸留の仕組みについて。
続いて連続式蒸留の解説に移ります。

連続式蒸留とは?

連続式蒸留とは、連続式蒸留機(コラムスチル、パテントスチルとも呼ばれる)を用いる蒸留方法。
主に、原料の風味をあまり残さずに、効率的に高アルコール度数のお酒を作りたい時に用いられる方法です。

19世紀から使用され始めたもので、単式蒸留に比べ新しくて機械的な蒸留方法です。
(蒸留”器”ではなく蒸留”機”であるのもそのため)

連続式蒸留の仕組み

連続式蒸留の仕組みは、簡単に例えるなら、連続式蒸留機には、その中に単式蒸留器がいくつも入っているといったところ。
連続式蒸留機の内部で単式蒸留の仕組みが繰り返されているのです。

連続式蒸留の仕組み

連続式蒸留機内部の棚一段分が単式蒸留と同じ働きをする。

連続的にモロミを投入でき、蒸留機の中で、何度も何度も蒸留が行われているため、連続式蒸留と呼ばれています。
アナログな単式蒸留とは異なり、一回蒸留機を動かすだけで、90度前後とアルコールがかなり高いお酒を作ることができます。
より効率的にアルコール度数を高めることができるわけですね。

連続式蒸留で作りだされたお酒も、単式蒸留の場合と同様に、水で薄めて度数を調整します。
このとき、90度前後まで高められたものなど度数が高ければ高いほど、原料の風味は残らなくなります
つまりは単式蒸留で出来たお酒と比べて、よりクリアな味になるのですね。

このように連続式蒸留は、効率的で時間と手間がかからないので、どちらかというと大量生産に向いています。

ウイスキーや焼酎などはどちらの蒸留方法?

ウイスキーや焼酎、ウォッカ、テキーラなどの蒸留酒は、どちらの蒸留方法で作られているのか気になるところ。
それぞれ見ていきましょう。

単式蒸留で作られるお酒

  • モルトウイスキー
  • テキーラ
  • コニャック(ブランデー)
  • 芋、麦、米などの本格焼酎
  • 泡盛
  • ジン(※)
  • 一部のラム

※多くのジンでは、連続式蒸留と単式蒸留を併用します。

単式蒸留は時間と手間がかかるため、あくまで傾向としてですが、ちょっぴり高価なお酒が多い傾向にあります。
また、モルトウイスキーやテキーラ、芋焼酎など、原料の風味が強いお酒で用いられています。

連続式蒸留で作られるお酒

  • バーボン・ウイスキー(※1)
  • グレーン・ウイスキー
  • アルマニャック(ブランデー)
  • ウォッカ(※1)
  • 一部のラム
  • 甲類焼酎
  • ニュートラル・スピリッツ(※2)

※1. 単式蒸留を使用する場合もあります。
※2. ニュートラル・スピリッツとはジンやリキュールなどのベースとなるお酒。

単式蒸留と比べて、原料の風味が軽いお酒で用いられる傾向があります。
それもあってか、特にウォッカやライトなラム、甲類焼酎などはカクテル用としても多く用いられるお酒でもあります。
ちなみにグレーン・ウイスキーとは、主にブレンデッド・ウイスキー用に作られるもので、モルトウイスキーと混ぜることでブレンデッド・ウイスキーになります。

まとめ

ここまで単式蒸留と連続式蒸留の基礎的な知識を解説してきました。
これらの違いについて、お分かりいただけたでしょうか?

最後にまとめると…

  • 単式蒸留とは、単発のアナログな蒸留方法で、原料の風味が残りやすく、手間がかかるため出来上がるお酒はやや高価になる傾向がある。
  • 連続式蒸留とは、連続的に行うハイテクな蒸留方法で、効率的により度数が高いお酒を作ることができ、原料の風味が残りづらくクリアなわいになる傾向がある。

繰り返しになりますが、単式蒸留と連続式蒸留、どちらが良い悪いと判断できるものではありません
それぞれ特徴が異なるため、どういったお酒を求めるかによって使い分けられています。

こういった知識はお酒を味わう上では必要ではありませんが、知っておくと味わい方は変わることでしょう。
ぜひ今後は、蒸留方法を気にしながらお酒を選び味わってみてください。

それではこの辺で。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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