日本でも知名度や人気が高まり、定番ワインとなりつつあるチリワイン。
2015年の輸入量では、なんと本場フランスのワインを抜いてチリワインが1位になりました。(※)
日本で最も人気があるワインとも言えるわけですね。
そんなチリワインですが、みなさんがチリワインと聞いて思い浮かぶのは、
「とにかく安い」「高コスパ」「旨安ワイン」
などではないでしょうか?
確かにチリワインには、コストパフォーマンスが高いいわゆる旨安な銘柄が多いです。
しかし、なぜそういった傾向があるのか、なぜチリ産だと旨安になるのか、その理由についてご存知の方はそう多くはありません。
そこで本記事では、チリワインに旨安ワインが多い理由についてワイン初心者の方でも分かりやすいよう解説していきます。
後半には、代表的な銘柄をいくつかご紹介します。
※日経ビジネスより
なぜチリワインは安いのか?
チリワインが人気を集めている理由には、まず「値段が安い」という大前提があります。
ではそもそも安いワインを作れる理由は何なのでしょうか?
土地代や人件費が安い
チリワインが安い理由として真っ先にあげられるのが、土地代や人件費の安さです。
フランスやイタリア、アメリカなどとは違い、発展途上国であるためこれらが安く抑えられ、それが価格に反映されているのですね。
大規模生産により生産コストが安い
チリのワイナリーは、もともと裕福な大地主などが手がけていたため、他のワイン先進国と比べて大規模生産を行なっています。
大規模であるため生産効率が高く、生産コストを抑えられるため、それが値段にも反映されているわけですね。
その中でもコン・チャ・イトロ社は特に大きなワイナリーで、日本でも人気のフロンテラやコノスルなどを手がけています。
輸入時にかかる関税が安い
日本とチリはEPA(経済連携協定)を結んでいるため、他国のワインと比べると輸入でかかる関税が安く済みます。
本来のワインの関税15%に対して、チリワインは段階的に関税が引き下げられていて、2017年4月には3.5%→2.3%となり、2019年には関税がゼロになります。(※)
輸入コストが抑えられる分、価格も当然安くなるわけですね。
※日チリEPA附属書より
なぜチリワインはおいしいのか?
チリワインが安い理由についてはわかりました。
ではそのワインがおいしい理由は何なのでしょうか?
ブドウの栽培に適している
ブドウを発酵させただけのシンプルなお酒であるワインは、ブドウの良し悪しで味わいが大きく左右されます。
実はチリは、そのブドウの栽培に適した土地だと言われています。
これはチリだけでなくアメリカなどのワイン新興国全般に言えることですが、これらの地域は、ヨーロッパの主産地と比べると気候が温暖であるためブドウがよく熟します。
さらにチリにはアンデス山脈があり、昼と夜の寒暖差が激しいため、果実味が凝縮されたブドウに育ちます。
より高地ともなると、土地が痩せていて水はけが良いため、ワインにはもってこいのブドウができると言われています。
フランスやカリフォルニアからの技術移転
実はチリのワイン市場にはフランスやカリフォルニアのワイナリーが多く参入しています。
例えばボルドーの五大シャトーである「シャトー・ムートン・ロートシルト」を手がけるバロン・フィリップ社や、「ラフィット・ロートシルト」を手がけるバロン・ド・ロートシルト社、カリフォルニアからは、あの「オーパス・ワン」の共同生産者であるロバート・モンダヴィ社などが参入しています。
これら名門から高度な技術が入ってくることによって、当然現地のワイナリーの栽培や醸造の技術も底上げされます。
チリの旨安ワインの有名銘柄
代表的なチリワイン銘柄を5つご紹介します。
どれも旨安で人気がある銘柄です。
アルパカ
チリにおける輸出ワインのパイオニアであるサンタ・ヘレナ社が手がける廉価シリーズ。
「高コスパ」「旨安」と話題を呼び、近年特に人気を集める銘柄です。
ブランドサイトによれば「輸入ワイン市場売上容量No.1」とあります。
コノスル
アルパカとともにチリ産旨安ワインとしてよく挙げられるのがコノスルです。
コノスルは、チリ最大のワイナリー「コン・チャ・イトロ社」傘下で、同社の輸出を主軸とした銘柄です。
1,000円前後という価格ながら、ブドウ品種由来の味わいをしっかり感じることができます。
カッシェロ・デル・ディアブロ
こちらの銘柄は、コノスルも手がけるコン・チャ・イトロ社の上位シリーズです。
コンビニで売られることもある銘柄なので、ラベルをご存知の方も多いと思います。
位置付けは上位シリーズですが、ほとんどの銘柄が2,000円弱で購入できます。
モンテス・アルファ
モンテス・アルファはチリ産プレミアムワインとして、世界で初めて認められた銘柄だと言われています。
他の銘柄では「安いのに」というように前置きがありますが、モンテス・アルファはフランスの高級ワインにも引けをとらず「明らかにおいしい」銘柄です。
そのぶんは価格は高めですが、そうは言っても2,000円前後購入できます。
ロス・ヴァスコス
フランス・ボルドーの五大シャトーのひとつ「シャトー・ラフィット・ロートシルト」を作るバロン・ド・ロートシルト社がチリで手がける銘柄です。
いずれのシリーズも果実味が豊かで、それぞれのブドウ品種の特徴が出たワインです。
まとめ
チリワインが「旨安」な理由、おわかりいただけたでしょうか?
その理由をまとめると…
- 土地代、人件費が安い
- 大規模で生産コストが低い
- 輸入コストが安い
- ブドウの栽培に適した土地
- 名門からの技術移転
といった感じですね。
ちなみに筆者は、先ほどご紹介したモンテス・アルファが大好きで、よく人にすすめる銘柄でもあります。
個人的にはフランスの下手な一万円ワインよりも、高品質で果実味をしっかり感じると思っています。
イチオシ銘柄なので、まだ飲んでいない方はぜひ試してみてください。
それではこの辺で。
以上、「コノスルやアルパカなど、チリワインが旨安なのはなぜか?」でした。
※参考文献
ワインの基礎力70のステップ・美術出版社 著・石井文月
世界の名酒事典2017年版・講談社