今日本酒好きの間で大人気となっている「新政(あらまさ)」
最近その名を見聞きした方も少なくないでしょう。
本記事のテーマはこの「新政」について。
新政の基本的な情報や特徴、人気のワケとなっているその独自性、それから「no.6」などの新政の主要銘柄など、徹底的に新政をご紹介していきます。
それでは見ていきましょう。
今大人気の日本酒「新政」とは?
まず新政(あらまさ)とは、秋田県秋田市にある新政酒造が造る日本酒。
新政酒造は意外にも、秋田市の市街地にほど近い場所にあります。
1852年の幕末の時代に創業した蔵元で、新政という名は明治政府が掲げた「新政厚徳」からとったものとされています。
新政は昔から有名な蔵元で、なぜなら現在使用されている中でも最古の酵母「協会6号」が生まれた蔵元でもあるのです。
先の大戦時は、政府の指示によって全国の蔵元が使用していた酵母でもあり、現在使用されている多くの酵母は、この協会6号の子孫にあたります。
このように由緒ただしき蔵元であり、以前から名のしれた蔵元ではありましたが、近年、当主交代を機に銘柄を刷新し、それ以降全国で人気を集めるようになりました。
若き八代目当主であり現在社長を務める佐藤祐輔氏は、東大卒のエリートであり、元フリーライターという異例の経歴の持ち主。
2007年に31歳で蔵に入社して以降、全銘柄6号酵母使用、全銘柄生酛造り、秋田県産米使用など、様々な改革(当人は伝統への回帰と言っている)を打って出て、現在人気を集める新しい「新政」を築いた人でもあります。
さて、続いては日本酒としての「新政」の特徴について見ていきましょう。
新政の5つの特徴
八代目の佐藤祐輔氏が当主となって以降、様々な変化をもたらし、現在の新政には様々な特徴があります。
また、そのどれもが独自性があるものとなっています。
1. 全銘柄6号酵母を使用
新政では現在、全銘柄で6号酵母のみを使用しています。
同蔵元で生まれた伝統を活かした格好でしょう。
現在使用されている多くの酵母とは異なり、6号酵母は出来上がるお酒が良くも悪くも「地味」になります。
しかしこれが、新政の唯一無二の味わいに寄与しています。
2. 全銘柄秋田県産米を使用
新政では全銘柄で、秋田県産の酒米のみを使用しています。
例えばワイン用のブドウが、たとえ同じ品種だったとしても、産地によって特徴が異なるのと同じように(よくテロワールと言われる)、酒米にもテロワールがあるのです。
また、酒米品種についても、多くの人気銘柄が兵庫県産の山田錦を使用するなか、新政ではそれを使用せず、あきた酒こまちや吟の精、美山錦などを使用しています。
これらは、山田錦と比べるとやや落ちついた味わいのお酒を生み出しますが、これもまた、新政の唯一無二の味わいに寄与しています。
3. 全銘柄生酛造り
新政では現在、全銘柄で、伝統的な醸し方である「生酛造り」を採用しています。
生酛造りは伝統的な製法ではありますが、とても大きな労力がかかる製法でもあるため、採用する蔵元がとても少ないのが現状です。
現在多くの人気銘柄では「速醸」と呼ばれる、その名のとおり速く労力をかけずに醸す方法を採用しています。
あえて手間暇かかる「生酛造り」を採用することで、お酒に独特の深い旨味が生まれます。
4. 全銘柄純米酒
新政は全銘柄「純米酒」にあたります。
ご存じの方も多いと思いますが、日本酒には精米歩合などによって「吟醸」や「純米大吟醸」などのグレードがあり、今特に人気が高いのは最も華やかである純米大吟醸。
しかし新政では、このグレードにはこだわらず、いかなる精米歩合でも、あえて全て「純米酒」表記にしているとのこと。
純米の方がお米の旨味が活きるため、秋田県産米の特徴、酒米品種の特徴が活かされます。
5. 主力銘柄は四合瓶のみ
新政は主力銘柄である「No.6」は「生酒」となっており、他の銘柄もフレッシュ感が大きな特徴。
そのため酒質は極めてデリケートであり(そもそも日本酒はデリケートである)、酸化に気を使う必要があります。
それに対処するため新政では、ほとんどの銘柄が容易に飲みきれるサイズである四合瓶(720ml)のみとなっています。
日本酒は一升瓶(1800ml)が従来の定番であり、最高級酒を除くほぼ全ての銘柄で採用されていることから、ほぼ四合瓶というのはかなり異例と言えます。
新政が人気のワケとは
ここまで新政の特徴をご紹介してきましたが、なんとなく今大人気となっている理由がわかってきたと思います。
その独自性溢れる「日本酒として造り」が、人気を呼んでいる主要因ではあるでしょう。
しかし、他にも筆者が思う「人気のワケ」がありますので、いくつか挙げていきます。
唯一無二の味わい
独特の味わいも、新政の人気を支える要因の一つであることは間違いないでしょう。
全銘柄6号酵母、生酛純米、そして秋田県産のあきた酒こまちなどの酒米によって造り出されるお酒は、とても特徴的で今までの日本酒になかったような唯一無二の味わいとなっています。
上品な酸味、口に入れた瞬間にほんの少しシュワっと感じる泡感、そして6号酵母による香りや味の主張が抑えられたやや薄味の飲み口。
爽やかなミネラル感があり、酸味が主体ながらもしっかりとお米の旨味も感じる味わいは、全ての主要銘柄に共通しています。
フルーティーではありませんが、独特の味わいはよく白ワインのようだと例えられ、今まで日本酒が苦手だった方からも好評です。
おしゃれなボトル
新政のラインナップを見ていただければわかりますが、全てのボトルデザインが良い意味で「日本酒らしさ」がなく、おしゃれなデザインとなっています。
こちらも白ワインやスパークリングワインを思わせるようなデザインとなっており、SNS映えも期待できます。
いくら飲み物とはいえ、見た目も重要な要素であるのは言うまでもなく、新政の人気に一役買っていることでしょう。
社長の存在
新政の当主である佐藤祐輔氏は現在41歳。しかも30代で当主になっており、このような若い蔵元を応援したくなるという方は少なくないでしょう。(筆者はその一人)
ただ、新政の場合は当主が若いというだけでなく、異例の経歴であることや、ここに至るまでのストーリーなど、とても興味深いものがあります。
このような「ストーリー」も、お酒が選ばれる要素だと筆者は思います。
さらに佐藤祐輔氏は、従来的なお酒関連のメディアだけでなく、ビジネス誌やファッション誌など幅広いメディアに盛んに出ており、認知度向上に一役買っていることは間違いありません。
⇒異色のキャリアで新境地を切り開く日本酒の革命児 新政酒造代表 佐藤祐輔(前編)|日経BP
新政の主な銘柄をご紹介
新政の主力銘柄は「No.6」ですが、それ以外にもいくつか個性的な銘柄があり、いずれも人気銘柄となっています。
ここでは主な銘柄をいくつかご紹介。
もちろんいずれの銘柄も、6号酵母使用、秋田県産米使用、そして生酛造り。
現在の人気銘柄でよく見られるフルーティーさはなく、スッキリ淡麗で上品な酸味は新政全銘柄に共通しています。
それではまずはNo.6から。
No.6
主力銘柄であるNo.6には、3つラインナップがあります。
いずれのラインナップも、麹米に「吟の精」そして掛米に「あきた酒こまち」を使用。(一定ではないようです)
そしてNo.6最大の特徴が、生酛純米の「生酒」であること。
これにより、酸味がとてもフレッシュで、キレイながらも旨味があるお酒となっています。
それぞれ見ていきましょう。
X-typeは最上級シリーズで、麹米、掛米ともに精米歩合が30%となっています。
口に含んだ瞬間、少しシュワっと微炭酸を感じ、味わいは全く雑味を感じず洗練されています。
【No.6 S-type】
X-typeはX-typeに続く上級シリーズで、精米歩合は麹米が40%、掛米が50%となっています。
こちらも新政らしい淡麗旨口の味わいで、後味のキレがよくスッキリしています。
【No.6 R-type】
R-typeはNo.6の定番ラインナップ。精米歩合は麹米が40%、掛米が60%となっています。
新政らしい、上品な酸味と淡麗旨口の味わいです。
瑠璃(ラピスラズリ)
青いラベルが美しいラピスラズリは、秋田県産の「美山錦」を使用しており、精米歩合は麹米が40%、掛米が50%となっています。
高い精米歩合ながらも定価は2,000円前後と手頃なのも魅力。
非常に穏やかで淡麗な味わいで、時間が経つにつれてやや甘みも感じるようになります。
もちろん新政らしい酸味は健在。
生成(エクリュ)
ラベルがアイボリーのような色合いのエクリュは、「あきた酒こまち」を使用しており、精米歩合は麹米が40%、掛米が60%となっています。
こちらはラピスラズリより手頃な値段で購入できます。
香りは控えめでミネラル感が強い白ワインのような香りがします。
口に含むと微炭酸のような泡を感じ、酸味が豊かで後味はすっきりシャープ。飲みあきしない味わいです。
亜麻猫(あまねこ)
亜麻猫は、日本酒では珍しい麹に白麹を使用したシリーズ。(白麹は主に焼酎に用いられる)
日本酒はほぼ全てにおいて黄麹を使用しているのですが、クエン酸が豊富な白麹を使用することで、さらに酸味が増しています。
ちなみに酒米は、あきた酒こまちを使用。
とてもユニークな銘柄なので新政の定番銘柄を味わってからの方が良いかもしれません。
⇒芋焼酎の黒麹・黄麹・白麹…それぞれの特徴や違いを簡単解説
まとめ
ここまで今大人気である「新政」について、基本情報や特徴、銘柄などを解説してきました。
いかに独自性溢れる日本酒で、なぜ人気となっているのか、お分かりいただけたかと思います。
新政は現在、そのこだわりの造りと全国的な人気により、入手が困難なお酒となっています。
もし酒販店や飲食店で見かけた際は、ぜひ味わってみてください。
また、本記事でご紹介した以外にも、新政の銘柄はありますので、ぜひホームページもチェックしてみてください。
それではこの辺で。
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