誰しもが普段何気なく飲んでいるビール。
お酒の定番であるビールには、意外と知られていない事実がたくさんあります。
その代表的なものの一つが、ビール造りにおける水の重要性。
ビールの主原料は言わずもがな大麦麦芽(モルト)ですが、実は水も隠れた主原料であり、重要な原料なのです。
本記事では、ビールにおいてなぜ水が重要なのか解説していきます。
ビールの全成分の9割は水
表示義務のあるビールの主原料は、前述のように大麦麦芽やホップですが、ビール造りには大量の水が使用されます。
ビール1L造るのに必要な水の量は、全ての工程を含めなんと5〜10L。
さらにビールの全成分の約9割を水が占めているといいます。
そのため、ビール造りにおいて水はとてつもなく重要な原料でもあり、水が美味しいところでないと美味しいビールは造れないとされています。
ゆえにビール造りは、まずは水が美味しい土地を探すところから始まる、とも言われています。
ちなみに、ビール造りで使用する水は「醸造用水」といい、そのままの水ではなく、ビール造りに適した処置が施された水が使用されます。
ビールのタイプによって適した水も変わってくため、醸造用水の使用はとても重要なのだとか。
いずれせよ、水はビールの根幹ともいうべく重要な原料なのです。
硬水か軟水かで適したビールのタイプが変わってくる
ビール好きでなくとも、水には軟水と硬水があるのはご存じかと思います。
硬度の数値によって軟水か硬水関わってきますが、そもそも硬度とは水に含まれるカルシウムとマグネシウムの濃度。
要するに鉄分量(ミネラル量)を指すわけですが、当然のことながらその量の違いはビールの質をも左右します。
一般的には硬水は濃色ビール(黒ビールなどの色が濃いビール)に向いているとされ、軟水は淡色ビール(ピルスナーなどごく一般的なビール)に向いているとされています。
味が濃いとされる濃色ビールに、こちらも味がはっきりしている硬水が適し、味がすっきりしている単色ビールに、こちらもすっきりしている軟水が適している、ということです。
淡色ビールの定番・ピルスナーは水の違いから生まれた?
さて、みなさんが普段銘柄などは意識せずに「生」と言って飲んでいるビール、これは実は淡色ビールのピルスナーというタイプにあたります。
日本に限らず、大手メーカーが手がける多く人が飲み慣れたビールは、9割以上がこのピルスナーなのです。
実はこのピルスナー、水の違いによって偶然生まれたとされています。
ピルスナーが生まれた1842年以前は、ビールは濃色ビールが一般的でした。
ドイツのミュンヘンなど、それまでのヨーロッパの主産地はほぼ硬水の地域。しかも麦芽の乾燥に使用する設備が旧式だったため、色が濃いビールしか造れなかったそうなのです。
しかし1842年、チェコのピルゼンにてドイツのビールを真似て造ったところ、完成したビールは色が淡い、黄金色のビール(今日のピルスナー)だったのです。
これはピルゼンが軟水地域だったことが深く関係しているとされ、麦芽の色を硬水ほど抽出しなかったため黄金色のピルスナーが生まれたとされています。
今や大定番のピルスナーは、計画通りできたものではなく、水の違いが生んだ奇跡によって誕生したビールだったのです。
まとめ
最後に、ビール造りにおける水の重要性についてざっくりまとめると…
- ビールの全成分の9割は水
- 硬水・軟水で適したビールのタイプが変わる
- 硬水なら濃色ビール、軟水なら淡色ビールが適している
- ピルスナーは偶然軟水だったために生まれた
水を大量に使用するビール造りでは、主原料の麦芽などの質はもちろんですが、根幹をなす水が美味しくなければ美味しいビールは造れません。
これはビールに限らず、日本酒やウイスキーなど、水を使用するお酒全てに言えることです。
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