本国メキシコやアメリカでのブームを皮切りに、日本でも少しずつ認知が高まってきているメスカル。
輸入されるブランドも増えつつありますが、その中でも注目のブランドの一つが“ブエンスセソ”。
実は先日、ブエンスセソのプロデューサーであるDiego Uvence氏が来日しており、LiquorPageではインタビューを敢行!
よくある疑問の一つ、“テキーラとの違い”を含むメスカルの基本情報と現地での現状、そして製品のブエンスセソについて語っていただきました!
世界でもてはやされるお酒、メスカルの真実と今
− まずはメスカルにまつわるお話を聞かせていただき、その後ブエンスセソについて語っていただきたいと思います。
それでは早速ですが…日本ではまだメスカルについてはあまり知られておらず、テキーラとの違いもよく知られていません。
テキーラとメスカルの分かりやすい違いは何ですか?
Diego(以下敬称略):定義の違いなどはもちろんありますが、分かりやすいところだと主に3つの違いがあると思っています。
まず1つめは原料の違い。
テキーラは原料に使用できるアガベはブルーアガベ種のみと定められていますが、メスカルにはその制限がないため、約50品種のアガベが適宜使われています。
もちろん品種の違いによって味わいも大きく異なり、これがメスカルの個性となります。
ちなみにメスカルは全て100%アガベです。
2つめはスモーキーフレーバー。
メスカルはテキーラと違い、アガベを糖化させる際に土に埋めて蒸し焼きにするのですが、それによって独特のスモーキーなフレーバーが与えられます。
糖化に専用の設備を使用するテキーラにはないフレーバーです。
3つめは大きな違いは、生産規模。
メスカルは小規模の生産者しかおらず、全てがホームメイドであり、クラフトです。
実はメスカルは、製造方法が500年前から変わっていないんです。
基本的にアガベの搾汁には馬を使い、設備も最小限です。
その点テキーラは規模が大きく近代的ですね。
− なるほど…メスカルはテキーラと似ているようで似ていない、といったところでしょうか。
しかしテキーラは元々メスカルだったと聞きます。
なぜこのように違いのあるお酒になったんでしょうか?
Diego:メスカルはテキーラの母だと言われています。
そもそもテキーラも200年前まではメスカルだったんです。
けれどテキーラ村周辺で造られていたメスカルは、約200年前に産業革命の波に乗って、大きな投資をして産業化し、テキーラとして変化していった。
一方それ以外のメスカルは形を変えずに残った…
だから200年前はメスカルとテキーラに“違い”はなかったんです。
ちなみに、誰もが知るとあるテキーラブランドは、最初「テキーラのメスカル」という名で商品を売り出したんですよ。
− 200年前を契機に、今のメスカルとテキーラは違う歴史を歩んだ…だから生産背景も違うということですね?
Diego:そうです。
メスカルはいまだに電気や水道が通っていないようなところで造られていたりします。
いっぱい投資をして、大きな産業にする、っていう発想がそもそもなかったんです。
だからこそ500年前の製法が今も残っているんですよ。
− なるほど…
そのメスカルは今やアメリカを筆頭にブームになっているとされていますが、なぜブームとなっているんでしょうか?
Diego:テキーラは30年前からアメリカを筆頭に大きなブームになりました。
原産地呼称が認められて、世界に「メキシコでしか造れない酒」として認知され広がっていったんです。
その後メスカルも原産地呼称が認められて、同じように世界に羽ばたいていきました。
特にアメリカでは、テキーラの流行という土台があった上でメスカルがやってきたので受け入れられたのだと思います。
それで「こんなにも銘柄ごとにフレーバーが違うのか」「面白い酒だな」と。
− 現地メキシコでもブームになっているんでしょうか?
Diego:メキシコでも同じくブームになっています。
ファッショナブルなお酒として認知されるようになっていて、特に若い人から人気を集めています。
バーでもメスカルのメニューがかなり増えていますね。
− では現地ではメスカルはどんな風に飲まれているんですか?
Diego:若い人たちはメスカルの伝統的な酒器である“ヒカラ”を使って、基本的にはストレートでゆっくり、オレンジをかじったりビールと一緒に飲んだりしています。
− 少し話が変わりますが、最近の大手メーカーによるメスカルブランドの買収が相次いでいます。それについてどう思いますか?
Diego:確かに世界的なスピリッツメーカーがメスカルを買収してますが、彼らには昔ながらの製法に対するリスペクトがあり、それを変えようとはせず、伝統として継続していこうとしています。
だから良いことだと思いますよ。
− ありがとうございます。では続いてディエゴさんが手がけるメスカルブランド“ブエンスセソ”について聞いていこうと思います。