樽熟成用語「エンジェルズシェア / 天使の分け前」を理解する

エンジェルズシェア(天使の分け前)とは?

特にウイスキーで多いでしょうか。
エンジェルズシェアもしくは天使の分け前という用語を見かけることがあります。

「樽熟成中に原酒の量が減っていくこと」
なんとなくざっくりとは理解している方も少ないないでしょう。

本記事ではこのエンジェルズシェア(天使の分け前)について、その仕組みや程度について詳しく解説していきます。
味わううえで必要な知識ではありませんが、知っておくとウイスキーがより楽しくなるはずです。

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エンジェルズシェア(天使の分け前)とは?

エンジェルズシェアは日本では天使の分け前とも言われ、樽熟成中に中に入ったウイスキー(原酒)の量が少しずつ減っていくことを指します。
蒸発によって量が減っているわけですが、これを昇天していると捉え「天使が飲んでいる」として、エンジェルズシェアと呼ばれています。
これはウイスキーだけではなく、ワインやブランデー、ラム、テキーラなど樽熟成を用いる全てのお酒で起こる現象です。

エンジェルズシェア(天使の分け前)の仕組み

4年・12年の原酒の中の様子を見ればどれだけ目減りしていくかが分かる

木でできた樽は、液体を漏らさない程度に密閉はされていますが、木材であるがゆえ気体は通します。
「樽が呼吸する」とも言われるように、空気などを取り込んでは放出しています。

これにより、少しずつ蒸発し蒸気となったウイスキーの逃げ場ができるため、少しずつ外に放出され量が減っていくのです。
一般的には水よりアルコールの揮発性が高い(蒸発しやすい)ため、エンジェルズシェアで中身が減っていくとともにアルコール度数も下がっていきます。
一般的な目減り量は年間約2〜3%とされています。(条件によって異なります)

これを樽の中で長年繰り返していくことで、中に残ったウイスキーと樽の木の成分がうまく溶け合い、味わい深いウイスキーができているのですね。

エンジェルズシェアの疑似体験
エンジェルズシェアに似たような現象はごく簡単に体験することができます。
ウイスキーをストレートでごく少量グラスに注ぎ、半日ほど放置すればかなり量が減っている(または完全になくなっている)ことがわかります。
条件こそ違いますが、仕組みとして同じようなものです。
ちなみに、香りの成分は残ったままなので、アルコール臭なしの凝縮された香りを堪能することができます。

条件によって目減りする量は変わる

気温や湿度によってエンジェルズシェアの進行具合は異なる。

エンジェルズシェア(天使の分け前)の進行スピード、つまり目減りしていく量は温度や湿度などの条件によって異なります。
例えば冷涼な気候であるスコットランドでは年間2〜3%程度。
しかし同国アイラ島では、海が近く熟成庫が適度な湿度で保たれるため、年間1〜2%程度となります。

寒暖差が激しく、乾燥しているバーボンの主産地ケンタッキー州に至っては目減り量はケタ違いです。
その量は、熟成初年度でなんと約10〜18%!2年目以降でも4〜5%程度という驚きの量で、10数年程度で樽が空になってしまうことになります。

このように原酒が目減りしていくという事実だけみると、生産者はエンジェルズシェアを嫌いそうですが、「天使が飲んだ分だけ美味しくなる」とも言われており、決して嫌味嫌うものではないようです。
だからと言って、目減り量が多いほど味が良いというわけでもありません。

バーボンはエンジェルズシェアによって度数が上がる?

ビーム社の熟成庫の様子
By BbadgettOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

温暖で乾燥しているケンタッキー州で作られるバーボンでは、稀にエンジェルズシェアによって度数が上がることがあります。(通常は下がる)
これは熟成庫の最上部に置かれたウイスキーで見られる傾向で、アルコールより多くの量の水が蒸発していくことで度数が上がっていきます。
温暖かつ乾燥という気候に加えて、熟成庫内の高い位置で熟成されることにより気温の影響を受けやすくなるため、通常ならアルコールが優先的に蒸発していくところを水の蒸発量が上回り、相対的にアルコールの割合が増え度数が高まるのです。

バーボンの中でもジョージTスタッグがこれが顕著に表れた銘柄です。
バーボンでは樽に詰める際の度数は62.5度以下と決められているのですが、熟成によって逆にこの数値を上回り、完成品の度数は70度前後となっています。(度数にはバラつきがあります)

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まとめ

エンジェルズシェアについて理解は深まりましたでしょうか?
最後に本記事の内容をざっくりまとめると…

  • エンジェルズシェア(天使の分け前)とは、樽熟成中に中に入ったウイスキー(原酒)の量が少しずつ減っていくこと。
  • 中のウイスキーが少しずつ蒸発し、樽から蒸散されることで起こる。
  • 目減り量は年間約2〜3%だが、条件によって異なりバーボンなどでは10%を超えることも。
  • 目減り量の多い少ないと味の良さは関係ない。

なお、一般的に樽熟成は25~30年を過ぎると劣化が始まるとされています。
50年熟成のウイスキーが稀にリリースされることがありますが、相当良い状態で熟成された原酒だけを使用しているということになりますね。

ウイスキーにおける樽熟成は、全工程の9割以上を占める重要な工程。
それゆえかなり奥が深いものですが、少しずつでも知っていくとウイスキーがより楽しくなりますね。

それではこの辺で。
以上「樽熟成用語「エンジェルズシェア / 天使の分け前」を理解する」でした。

【参考文献】
ウイスキーコニサー資格認定試験教本|ウイスキー文化研究所
ウイスキー完全バイブル|ナツメ社

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小針 真悟
著者:小針 真悟

[LiquorPage代表] 豊富な現場経験と長年のお酒愛によって、ジンを筆頭にあらゆるお酒の知識を持つ。ジン専門書籍やテキーラメディアなど外部酒類メディアの執筆協力の他、イベントの企画運営にも携わる。

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