ウイスキーやクラフトビールが流行っている日本で、また新たなジャンルのお酒が注目されています。
それが本記事でご紹介する「クラフトジン」です。
このクラフトジンなるお酒が、酒類関係者の間で注目を浴び、日本でも流行の兆しが見えつつあるのです。
そこで本記事では、「クラフトジンは一体どんなジン?特徴や定義は?」などクラフトジンの基本情報をお届けします。
記事後半ではクラフトジンの有名銘柄をいくつかご紹介。
本記事によってクラフトジンについて、ざっくりと理解することができます。
糖蜜や穀物などが原料のベーススピリッツに、ハーブや果皮、スパイスなどのボタニカルを数種加え(ジュニパーベリーは必須)、蒸留させてできるスピリッツ(蒸留酒)。
より詳しくはこちらの記事で解説しています。
⇒今更聞けない!ジンってそもそもどんなお酒?
クラフトジンの定義とは?
実は「クラフトジン」には明確な定義はありません。
定義こそありませんが、一般的な目安として「クラフトジンとは、主に少量生産で強いこだわりを持って造られたジン」のことを指して言います。
この辺りの事情はクラフトビールと同様ですので、クラフトビールのジン版といったところ。
まずクラフトジンと呼ばれるジンは、大手メーカー製の大量生産系の定番ジンなど(例えばビーフィーターやボンベイサファイアなど)とは異なり、規模の小さな作り手が手がける銘柄が多いのが特徴。
こういった小さな作り手は、生産量では大手に太刀打ちできないため、差別化も兼ねて、少量生産で質重視のオリジナリティ溢れるジンを造ります。
飲食店でいうチェーン店(従来的なジン)と個人店(クラフトジン)と捉えるとわかりやすいかもしれません。
(大手メーカーが手がけるケースもあります)
By Foto: Achim Schleuning / , CC BY-SA 3.0 de, Link
クラフトジンのこだわりどころ
では一体どこにこだわるのか?
製法はもちろんですが、クラフトジンでは、ジン最大の特徴であるボタニカル(ハーブや果皮、スパイス)に特に力を入れる作り手が多いです。
ジュニパーベリーさえ使用すれば、ボタニカルの使用に特に決まりがないジン造りにおいては、使用するボタニカルによって個性を出しやすいのです。
そのためクラフトジンでは、従来的なジンのボタニカルだけでなく、これまで一般的ではなかった産地特有のユニークなボタニカルを用いたり、オーガニックのものを用いたりなど、質だけでなく個性も光るものが多くあります。
製法やベーススピリッツの原料を変えている作り手もいますが、ボタニカルに重点を置いているところの方が圧倒的に多いのが実情。
ボタニカルのレシピ=その銘柄の明確な個性ということになるからです。
以上をふまえるとクラフトジンとは、量より質重視でボタニカルに特にこだわったプレミアムなジンという見方もできます。
普通のジンとクラフトジンの違い
それでは次に、普通のジンとクラフトジンとでは具体的にどう違うのか、これについて見ていきましょう。
ボタニカルの違い
前述のように、クラフトジンでは使用されるボタニカルがとても個性的。
普通のジンではジュニパーベリーを主に、コリアンダーシードやアンジェリカ、レモンやオレンジの皮などだいたい5〜10種程度でしょうか。
一方クラフトジンでは、これらのボタニカルだけでなく、普通のジンでは使用されていない独特なボタニカルも使用されています。
例えば、クラフトジンの先駆けとして知られる「ヘンドリックス」では、キュウリやバラの花のエキスなども使用されています。
そして今話題の日本のクラフトジン銘柄「季の美」では、お茶(玉露)やゆずを筆頭に日本特有のボタニカルがふんだんに使用されています。
⇒ジンによく使用されるボタニカル20種まとめ
味わいの違い
ボタニカルは、ジンの香り・味わいを決めるとても大切な要素。
ボタニカルが違えば当然香り・味わいも異なります。
普通のジンがそのまま飲まれるというよりカクテル用となることがほとんどなのに対し、クラフトジンではロックやストレートでも楽しめる味わいのものが多くなっています。
それはクラフトジンでは、味わい深くリッチで飲みやすいものが多い傾向にあるからです。
値段の違い
こだわりを持って造られているだけに、普通のジンに比べてクラフトジンは値段が高くなりがち。
普通のジンなら1,000円台で買えるものも多いですが、クラフトジンの場合その多くが3,000〜5,000円前後。
それでもウイスキーなど他のプレミアムクラスの酒類と比べると安く、値段以上の価値はあると感じます。
ボトルデザインの違い
クラフトジンで面白いのは、ボトルデザインにもとてもこだわっていること。
インスタグラムなどのSNS映えを意識してか、どのクラフトジンもボトルが個性的かつオシャレで、香水やアロマデュフューザーのようなものも多くあります。
飾るだけでも価値があるようなボトルが多いのも、特徴の一つと言えるでしょう。
イギリス、スコットランドが流行の発信地!
クラフトジンの流行の発信地は、ジンの本場イギリス、そしてウイスキーの本場スコットランド。
なぜこれらの国でクラフトジンが流行するようになったのかというと、これらの国で新たな生産者が急激に増えているからです。
ジンは基本的に熟成要らずで、ウイスキーのように販売までに何年も待つ必要がありません。
そのためコストを回収しやすいといった大きな利点があり、小規模なメーカーでも他の酒類に比べ参入障壁が少ないのです。
そしてこれらの国は元々のジンやウイスキーの本場だけに、ジンを造る環境は整っています。
また、世界的なウイスキーブームとも深く関係しており、ブームを受けて開業した新鋭のウイスキー蒸留所などが、既存設備を有効活用し、ウイスキーを寝かせている間の収入源としてジンを造るといった動きがあります。
元々こだわりを持ってウイスキーを造っているだけに、そのノウハウがジンにも活きるのです。
そうして造られたプレミアムなクラフトジンは、富裕層を中心に流行し、クラフトジンを楽しむことがステータスになりつつあるのです。
今や世界で流行!日本にも流行の兆し
クラフトジンは、今ではイギリスやスコットランドのみならず、アメリカやドイツなどにも人気が飛び火し、新たなクラフトジンが造られるようになりました。
そしてここ日本でも流行の兆しが。
最も分かりやすい例が、2016年10月に京都蒸留所からリリースされたクラフトジン「季の美」です。
京都蒸留所は日本では初となるジンに特化した蒸留所で、今国内外で話題となっています。
さらにそのクラフトジンの普及を担うべく「日本ジン協会」が今年から活動を本格化させるというニュースが発表される(酒類専門誌WANDSより)など、酒類業界での動きが盛んになっています。
より身近なところでは、飲食店ではクラフトジンを扱うお店が増え、さらにAmazonでは大々的に特集が組まれるなど、着実に日本でも流行しつつあります。
代表的なクラフトジン銘柄
クラフトジンについて理解できたところで、その銘柄についても知っておきたいところ。
代表的な銘柄をいくつかご紹介していきましょう。
ヘンドリックス
ヘンドリックスは、クラフトジンの先駆けとも言える銘柄で、グレンフィデックなどで有名なウイスキーメーカー「ウイリアムグラント&サンズ社」が手がけています。
キュウリとバラのエキスによる、ジンの新たな可能性を感じさせてくれる銘柄です。
ヘンドリックスについてはこちらの記事もご参考ください。
⇒ヘンドリックス…クラフトジンのパイオニア的銘柄を徹底解剖
「NO.3」ロンドン・ドライジン
NO.3は、ヘンドリックスと並んで有名なクラフトジン銘柄です。
イギリスの由緒ただしきワイン商「ベリーブラザーズ&ラッド(通称ベリーズ)」が手がけるクラフトジンで、ロンドン・ドライジンの伝統的なスタイルにこだわった銘柄です。
ザ・ボタニスト
このボタニストは、ウイスキー好きの方ならよくご存知かもしれません。
なぜなら、何かとファンが多いアイラモルトの蒸留所「ブルイックラディ蒸留所」で造られているからです。
使用する22種のボタニカルはアイラ島で採れたものという、こだわりが詰まった1本。ボトルは香水のようなオシャレなデザインです。
コーヴァル
こちらはアメリカ・シカゴ発のクラフトジン「コーヴァル」
一見するとアロマデュフューザーのようなデザインに目がいきますが、ボタニカルは全てオーガニックというこだわりぶりで、SWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)という世界的な品評会ではダブルゴールドを受賞(2015年)するなど、実力も兼ねそろえています。
コーヴァルについてはこちらの記事もご参考ください。
⇒オーガニックでおしゃれなクラフトジン「コーヴァル」に迫る
季の美
前述した日本・京都発のクラフトジン「季の美」は、日本らしさが詰まったジン。
ジンでは珍しく米で作られたスピリッツをベースにし、加えるボタニカルには、宇治の玉露やヒノキ、ゆずなどが含まれるなど、日本のクラフトジンとしてのこだわりが詰まっています。
季の美についてはこちらの記事もご参考ください。
⇒日本・京都発のクラフトジン「季の美」を徹底解説!【完全保存版】
まとめ
ここまでクラフトジンについての基本情報について解説してきました。
クラフトジンの魅力や可能性についてお分かりいただけたでしょうか?
最後にざっくりとまとめると…
ということです。
今回ご紹介した銘柄は、いずれも4,000〜5,000円程度と一般的なジンと比べるとやや高価ですが、ちょっと良いものとなるとたちまち1万円を超えるウイスキーなどと比較すると、かなりの割安感があります。
この手頃感も流行に一役買うことでしょう。
まずは一度、クラフトジンを味わってみてください。
それではこの辺で。
以上「日本でも流行必至!「クラフトジン」の特徴と銘柄まとめ」でした。
⇒ジャパニーズクラフトジン総まとめ!10銘柄を一挙ご紹介
⇒焼酎を使って造られている日本のクラフトジン12銘柄まとめ
こちらのクラフトジン関連記事もぜひご覧ください。
⇒クラフトジン入門・とりあえず飲んでおきたい王道8銘柄
⇒超個性的!ちょっと変わったおすすめクラフトジン8選
⇒ウイスキー蒸留所が手がけるクラフトジンまとめ【全8銘柄】
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【参考文献】
世界の名酒事典2017年版・講談社
WANDS2017年2月号・ウォンズ・パブリシング・リミテッド社