キケンなお酒?偉人達を虜にしたアブサンの魅力とは?

アブサン・その魅力と真実

ピカソにゴーギャン、それにゴッホ…挙げればキリがないほど偉大な芸術家達が魅了されたお酒があります。

アブサンというお酒をみなさんはご存知でしょうか?
普段バーに行かれる方や洋酒好きの方ならご存知かもしれません。

その昔、偉人達に愛されヨーロッパで社会現象にもなったお酒で、「キケンなお酒」とされ長い間製造・販売が禁止されていたものです。
販売解禁となった今でも「アブサンはキケンなお酒」という情報を目にすることがあります。

果たして本当にアブサンは「キケンなお酒」なのでしょうか?
本記事ではアブサンの真実とその魅力に迫っていきたいと思います。

アブサンとはどんなお酒なのか?

アブサンとは、ニガヨモギを筆頭としたハーブ類を原料としたお酒で、大まかにはリキュールに属します。
とてもアルコール度数が高いお酒で、70度前後のものが多く、低くても40度前後、高いものではなんと90度を超えるものまで。

アブサンの原料ニガヨモギ。

アブサンの原料ニガヨモギ。日本のヨモギとは少し違う。

By Matt Lavin from Bozeman, Montana, USA – Artemisia absinthium
Uploaded by Tim1357, CC BY-SA 2.0, Link

味わいがかなり独特で、ハーブ由来のちょっと薬っぽい風味がありながらも、程よい甘さと口の中がスーッとする爽やかさがあります。
そのあまりに独特な味わいの主張が強いせいか、驚くほど高いアルコール度数をあまり感じず飲めてしまいます。

アブサンの発祥は?

アブサンは主にフランスで社会現象になったお酒であるため、フランス発祥と思われることが多いですが、実は発祥はスイスとされています。
19世紀前後、フランスとの国境にほど近いスイスのボヴレスという小さな村で、ニガヨモギを用いた薬酒と飲まれたいたものがベースとなり「アブサン」として商品化されました。

初めてアブサンを商品化したのはフランスのペルノ社。
そのペルノ社は今は「ペルノリカール社」に名前を変え、世界最大級の酒類メーカーとなっています。

偉大な芸術家達が愛したお酒

アブサンにまつわる話でゴッホは必ず出てくる

アブサンにまつわる話でゴッホは必ず出てくる

先にも触れたとおり、アブサンは過去偉大な芸術家達を魅了してきました。
詩人のヴェルレーヌや画家のロートレック、ゴーギャン、そして誰もが知るピカソやゴッホなど…世界的な偉人ばかりです。
アブサンが題材となった作品も生まれるなど、とてつもない影響力があったお酒だということがわかります。

また当時その人気はヨーロッパで広く浸透するようになり、フランスにおいては社会現象になったほどと言われています。
しかし、その当時安価で入手が簡単だったアブサンは、多数の犯罪者を出したことから「キケンなお酒」とされ、ついには製造・販売禁止となってしまいます。

果たして本当にアブサンは「キケンなお酒」だったのでしょうか?

アブサンは「キケンなお酒」は本当なのか?

「アブサンを飲む男」ヴィクトル・オリヴァ作

アブサンは幻覚症状が出るとされた。「アブサンを飲む男」ヴィクトル・オリヴァ作

19世紀ごろ社会現象にもなったアブサンの主原料であるニガヨモギには、有毒成分ツヨンが含まれ、乱用すると幻覚・錯乱症状が生じるとされ、犯罪者や中毒者が出るのはこれによるものとされてしまいました。
ゴッホは晩年、自分の耳たぶを切り落とすなど精神異常な行動をとったことでも有名ですが、これもアブサンによるものだとレッテルを貼られてしまいました。

つまりは有毒成分ツヨンを含む=キケンなお酒とされたわけです。

しかし、ツヨンは一度によほど大量に摂取しない限り毒性が出ないものとされ、しだいに中毒症状やゴッホの奇行などとツヨンの因果関係は薄いという見方が強まります。
そもそもアルコール度数が70度前後ととても高いアブサン。「奇行や中毒症状は単なるアルコール中毒では?」と思う方が自然です。(これは筆者の見解ですが)

そのような見方も広まり、1985年ついにWHO(世界保健機関)がツヨンの成分量を制限したうえで、アブサンの製造・販売を認めるとしました。
長い年月を経てようやくアブサンが復活したのです。

以上をふまえると、確かにアブサンはキケンなお酒かもしれませんが、それは単純にアルコール度数がとても高いお酒だから、ということでしょう。

そもそもなぜアブサンは多くの人を魅了したのか?

多くの芸術家達が虜になり、フランスで社会現象にまでなったアブサン。
そもそもそこまで多くの人を魅了した理由は何なのでしょうか?

よく語られるのが「高アルコールで安価なお酒だった」ということ。
安く手っ取り早く酔えるお酒は当時貴重だったのでしょう。
多くの芸術家が愛飲したのも、これも関係していると思われます。(死後評価された芸術家が多く、生前は決して裕福ではなかった)

やはり「唯一無二の味わい」は魅力

これは筆者が思うにですが、そのあまりに独特な味わいもアブサンが愛された理由だと思います。
アブサンを一度飲まれた方はわかるかもしれませんが、他のお酒にはない独特の味わいがあります。

ハーバルでとても複雑な香り、程よい甘さと苦味の深みある味わい、そして口の中でスーッとする後味。
まさに「唯一無二の味わい」で、アブサンにしかないものです。

アブサンの飲み方は?

ここまで読まれた方はきっとアブサンが飲みたくなっていることでしょう。
そこで気になるのがアブサンの飲み方。

もちろんアブサンの魅力を直に感じるためにストレートで飲むのもいいでしょう。
しかし、アルコール度数が40〜90度前後ととても高いので、あまりおすすめできる飲み方ではないかもしれません。

実はアブサンの主流とされる飲み方は「水割り」です。
流行した当時も水で割って飲むのが主流でした。

アブサンの水割り方法

アブサンの水割り方法。水で薄めるとアブサンは白く濁る。

By Eric LittonOwn work, CC BY-SA 2.5, Link

ただ普通の水割りとはちょっと異なります。
アブサン用の小さなワイングラスのようなグラスにアブサンを注ぎ、そのグラスの上にアブサン専用のスプーンをのせ、そのスプーンの上に角砂糖を載せる。その砂糖を溶かすように水を当てながら水割りにする、というちょっと面倒な飲み方ですが、これがアブサンの主流の飲み方とされています。

ただバーで飲むならまだしも、自宅で飲まれるなら普通の水割りでいいと思います。
砂糖もお好みで良いでしょう。
それでも十分にアブサンを堪能できます。

それからソーダ割りも、アブサンの風味が立っておすすめです。

まとめ

ここまでアブサンの真実とその魅力についてお伝えしてきました。

ここまでをざっくりとまとめると…

一時販売禁止にもなったアブサンがキケンなのは、有毒成分ツヨンによるものというより高いアルコール度数によるものとみなす方が自然。(現在のアブサンに含まれるツヨンは基準値以下)
多くの芸術家を魅了したお酒で、唯一無二の味わいが魅力。

少々長くなりましたが、アブサンにまつわる話はもっと奥が深く、なんと専門の書籍が出ているほどです。
また本記事の執筆にあたって参考にさせていただいた、下記のサイトはアブサンの専門店で、アブサンにまつわるブログなど情報量がとても多いです。
ぜひご覧になってみてください。

それではこの辺で。
以上「キケンなお酒?偉人達を虜にしたアブサンの魅力とは?」でした。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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