沖縄発トロピカルなジン「ORI-GiN 1848」~ 開発者に聞く、誕生ストーリーとジンに込めたこだわり

沖縄発トロピカルなジン「ORI-GiN 1848」の開発者に聞く、誕生ストーリーとジンに込めたこだわり

決して流通量が多くないジンでありながらも、バーテンダーなどプロから特に高い評価を得ている沖縄のジンがあります。

そのジンとは、沖縄は首里最古の泡盛の酒蔵、瑞穂酒造が手がけるトロピカルなクラフトジン「ORI-GiN 1848 (オリジン)」。
沖縄ならではの素材を使用した南国を感じさせるジンですが、今回は、首里城に程近い那覇市に拠点を置く瑞穂酒造を訪問し、ジンの開発および製造を手がけた仲里彬さんにインタビュー!
ORI-GiN誕生までのストーリーや開発裏話、ジンに込めた思いなどを聞いてみました。

創業170周年を機に始まったジンのプロジェクト

– まずは仲里さんの今に至るまでを含め、自己紹介をお願いしても良いですか?
仲里(敬称略):沖縄生まれの32歳で、現在製造部の開発室長を務めています。
様々な経緯はありますが「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」という村上春樹さんの本や、トムクルーズの映画「カクテル」でお酒の世界に憧れを抱くようになりまして、お酒造りを学問として学べる場所として東京農業大学へ進学し、醸造学を専攻しました。大学院も経て、瑞穂酒造に入社したのは2012年のことですね。

– お酒が好きで、酒造りをするにまで至ったのですね?
仲里:趣味もお酒なんです。
泡盛やウイスキー、ジン、そしてそれらのカクテルを飲む機会が多く、バーテンダーさんとの意見交換が好きで、BARもよく行きます。
飲んで味を知ることはもちろん、歴史や文化、文献を調べるのも好きで、起きている時間の大半はお酒の事を考えていますね。

仲里彬さん

仲里さんはもしも造り手になっていなかったらバーテンダーを目指していたと言う

– 酒造りで大事にしていることやこだわりなどありますか?
仲里:弊社では、沖縄だからできること、瑞穂酒造だからできること、この二点を妥協なく追及することは、常に意識しています。
個人的なところで言えば、味の識別能力はとても大事だと思っています。そのお酒がどういった香味を持つのか客観的に評価できる能力がなければ目指すべきお酒ができませんから。

– では、なぜ、いつ頃からジンを造ることになったのでしょうか?
仲里:ある日、首里のオーセンティックバー“Birthday”のバーテンダーの方からジンの世界的な流れをお聞きしまして、その後何度も開発を勧められていたんです。
当初はまだピンとこなかったのですが、2015年ごろ、スコットランドのジン“ザ・ボタニスト”の存在を知りまして、大好きなウイスキー蒸溜所が手がけていたことからグッと気持ちが押し上げられたんです。
その頃から「自分たちにしかできないジンが造れるのでは?」と意識し始めました。

– 実際にはいつ頃から開発を始めたのですか?
仲里:2016~2017年頃からですね。
2018年に弊社が創業170周年を迎えるとあって「世界を見据えて新しい挑戦をする」絶好のタイミングでもあったんです。
それで私が社内で猛アピールをしまして(笑)、170周年記念としてジンを手がけることになりました。
ただ、洋酒へのチャレンジは生半可な気持ちではできません。自分自身も洋酒は大好きなので、本気で取り組もうと思い、まずは世界中のジンを徹底的にテイスティングしました。

ORI-GiNの蒸溜に使用される蒸溜器

現在ORI-GiNに使用されている蒸溜器

一口で沖縄の魅力が伝わるトロピカル&リッチなジンを

– どのようなジンを目指して開発を進めていったのですか?
仲里:170年の節目に登場することもあり、沖縄の魅力、そして瑞穂酒造の魅力をたくさんの方に知っていただくために、クラフトマンシップについて徹底的に掘り下げました。
ジンのブームが来るから造るのではなく、20年先も残っているジンブランドでありたいと思って、納得がいくまで時間をかけて考えました。
それで行き着いたのが「一口で沖縄の魅力が伝わる」というコンセプトです。

– それを香りや味に落とし込んでいったのですね?
仲里:渋谷でジンのお店(TOKYO FAMILY RESTAURENT)やジンフェスティバルなどを主催されている三浦武明さんとの出会いはとても大きかったです。
ジンの多様性や魅力を余すことなくお教えいただき、その中で“ジンマーレ”というスペインのジンと出会い、理想のジンのアイディアが湧いてきました。
このジンは伝統的なロンドンドライジンとは少し異なるリッチな味わいを特徴としてまして、それを弊社らしさ、沖縄らしさというフィルターを通してみて思い浮かんだのが「トロピカル&リッチ」という味のテーマでした。
テーマに沿って、弊社独自のさくら酵母仕込みの泡盛をベースに使用することを決めたのですが、これはORI-GiNのために造られているもので、香りの成分が普通の泡盛とは違うんです。華やかでトロピカルなフレーバーを持つことから、味のテーマを実現する上で重要な役割を担いました。

キーボタニカルであるピーチパイン

キーボタニカルであるピーチパイン

– ピーチパインなどユニークなボタニカルを使用されてますが、これらはどのように決まったのですか?
仲里:ピーチパインはその名のとおり、桃の香りがするパイナップルなのですが、生産量が少ないため希少です。
その生産者として名高く、とりわけ希少価値の高いピーチパインを手がける西表島の“アララガマ農園”の方が知人でして、ジンへの思いを伝えた結果、素材を分けてくれることになったんです。
その他にも、沖縄らしいボタニカルを使用することになったのですが、極力農家さんに直接伺って、フレッシュな状態で入手することで、生が良いのか、それとも乾燥させて使用するのが良いのか、ORI-GiNに適した方法を見極めることができました。

【次ページ】「これはジンじゃない」の一言から遂げた変化とは

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