ロンドンドライジンやオールドトムなど…タイプ別ジンの定義まとめ

ロンドンドライジンやオールドトムなど…タイプ別ジンの定義まとめ

様々なお酒が世に溢れている中で、ウイスキーが「ウイスキー」として、そしてジンが「ジン」として流通しているのは、そう名乗るための定義を満たしているからです。
普通に飲んで楽しむ上で、お酒の定義を知る必要はありませんが、知識としてインプットしておくとより深く愉しむことができます。

今回は、日本はもちろん、今世界中で大注目を浴びているお酒「ジン」の定義について解説。
ジンにはロンドンドライジンやオールドトムジン、ジュネヴァなど様々なタイプがありますが、それぞれの定義をご紹介します。

そもそも「ジン」の定義とは?

お酒の定義は各国で微妙に異なります。日本では、ジンは定義されていないため、世界的産地を多く含むEU(欧州連合)におけるジンの定義をご紹介します。
EUのそれは、ジンの定義を説明するときの主流であり、日本でも造り手らプロが参考としている定義でもあります。
定義の原文が記された「EC No 110/2008」をもとに、なるべく文章や体裁をいじらずに日本語で記していきます。

それでは、まずそもそもどういったものを「ジン」と呼ぶのか、その定義を見てみましょう。

[「ジン」とは]

  1. ジンとは、農作物由来のエチルアルコールにジュニパーベリーで香りづけすることによって製造された、ジュニパーべリー風味のスピリッツ(蒸溜酒)である
  2. 最低でもアルコール度数が37.5%以上であること
  3. 香りづけには、定められた天然素材、または天然もしくはそれと同一の成分の香料を使用し、ジュニパーベリーの香りが主であること

分かりやすくまとめると、「ジュニパーベリーで香り付けされた37.5%以上の蒸溜酒で、使う素材は天然の素材だけじゃなく香料も可」。
ジュニパーベリーの香りが必須であるものの、製造時に使用する素材は基本的に自由に選ぶことができ(基本的にジュニパーベリーの他、数種類のボタニカルが使用される)、数あるお酒の種類の中でも、比較的自由度が高いと言えます。

自由度が高いからこそ個性豊かなジンが増えている

自由度が高いからこそ個性豊かなジンが増えている

ロンドンジン(ロンドンドライジン)の定義

伝統的なジンのタイプであり、ジンのシーンでよく目にする「ロンドンドライジン」ですが、上記で解説した「ジンの定義」に加え、下記の前提条件と「ロンドンジン(ロンドンドライジン)の定義」を満たしたものをそう呼びます。

[前提条件]
アルコール度数が96%以上の農作物由来の高品質エチルアルコールを、ジュニパーベリーと天然由来のボタニカルと再蒸溜したもの

[ロンドンジン(ロンドンドライジン)の定義]

    1. 使用するエチルアルコールのメタノール含有量が、100%アルコール換算で、1HL(100L)あたり5g以下であり、使用する素材は全て天然のボタニカルであること。それらを伝統的な蒸溜器を用いて再蒸溜することで風味づけをする
    2. (1.で得られる)蒸溜液のアルコール度数が70%以上であること
    3. 農作物由来のエチルアルコールを追加する場合、アルコール96%以上であり、メタノール含有量がアルコール100%換算で、100Lあたり5g以下であること
    4. 完成品に、1Lあたり0.1g以上の甘味料や着色料が含まれていないこと
    5. 再蒸溜後は水以外の添加物を加えないこと
  1. 瓶詰め時のアルコール度数が37.5%以上であること
  2. ロンドンジンという用語は、「ドライ」という用語で補完される

項目が多く、複雑で厳格な定義にも感じられますが、重要な項目をまとめると、

  • 度数が96%以上の農作物由来(主に穀物や糖蜜など)のアルコールをベースに、天然のボタニカルのみを使用し、再蒸溜したもの
  • 再蒸溜後の添加物が基本的にNG

といったところ。

「ジンの定義」と違って、ボタニカルを加えた後の再蒸溜がマストになる他、近年よく見られるボタニカル別に蒸溜して原酒をブレンドするスタイルのジンは(a.5)に反するため、ロンドンドライジンの定義からは外れます。
ちなみに、ここでの蒸溜が“再蒸溜”と呼ばれるのは、そもそもベースとなる96%以上のアルコールを製造する際に既に蒸溜を経ているからです。

シップスミスのジン&トニック

ロンドンドライジンの代表的ブランドの一つ「シップスミス」

それともう一つ重要なポイント。
ロンドンという地名が付くものの、産地はどこでも構いません。
そもそもロンドンドライジンという名は、このタイプのジンがロンドンで誕生したことにちなんでおり、産地を限定するわけではないのです。

オールドトムジンの定義

砂糖などが加わっていることにより、ドライジンに比べて甘く感じられることで知られる「オールドトムジン」。
ジンの代表的なタイプの一つとして知られていますが、実はEUではその定義を定めていません。

一般的には、瓶詰めの際に、砂糖もしくは甘いボタニカルを2~6%加えたものを、オールドトムジンと呼びます。
18~19世紀ごろに誕生していたとされますが、当時は荒い味わいにならざる得なかったジンを、飲みやすくするために砂糖を加えていたとされています。
しかし今日では、ドライジンとは異なるバラエティの一つとして、趣向を凝らしたオールドトムジンが多く流通しています。

ヘイマンズ オールドトムジン

オールドトムジンの代表的ブランドの一つ「ヘイマンズ」

ジュネヴァの定義

ジュネヴァの造り手として日本でもよく知られる「ズイダム」

ジュネヴァの造り手として日本でもよく知られる「ズイダム」

歴史的にはジンの原型であり、現在もオランダなどで造られる「ジュネヴァ」。
ジンとはまた少し異なりますが、その仲間として世界的に知られています。

そんなジュネヴァは、原産地呼称制度(AOC)で産地が定められており、オランダ、ベルギー、それにフランス、ドイツの一部の地域のみでしか造ることが許されていません。
ただし、製法についての明確な定義はなく、ジンと同様にベースとなるアルコールの他、「モルトワイン」と呼ばれる大麦麦芽などの穀物を原料に、単式蒸溜で造られるスピリッツを用いるのが特徴です。
また、ジュネヴァは、モルトワインの使用割合によって「ヤング」と「オード(オールド)」に大別されます。
モルトワインが全体の15%以下ならヤング、15%以上ならオードに分類されます。オードは、ウイスキーのように樽熟成されることが多いのも特徴です。
ジンと同様にジュニパーベリーの他、複数のボタニカルが使用されますが、ジンと比べその使用数は少ない傾向にあり、だからこそ穀物由来の香味が強くなります。
35~38%前後と、アルコール度数が低い傾向にあるのも特徴です。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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