クラフトビール、冷やし過ぎていませんか?

クラフトビール、冷やしすぎ?

ビールといえばキンキンに冷えたものがおいしいですよね。
むしろ「キンキンに冷えてなければビールではない」なんて方も少なくないでしょうね。

そんな、冷えてこそおいしいとされるビールですが、ペールエールやIPAなどのクラフトビールの場合、あまり冷やしすぎない方がいいかもしれません。

本記事では、クラフトビールを冷やしすぎない方がいい理由と、ペールエールやIPAなどタイプ別に飲み頃とされる温度について解説していきます。
より適した温度で飲むことで、そのビールの良さを最大限引き出せるようになります。

キンキンに冷えたビールは本当においしく感じるのか?

人間は、冷たいものや温かいものをおいしく感じるように出来ていると言われています。
確かにキンキンに冷えたビールはおいしく感じますね。

しかしこれは実はおいしいというより、喉を通る感覚が気持ちいいと捉えた方がいいかもしれません。
なぜなら一般的には冷たければ冷たいほど、味は閉じていくからです。
味自体を感じにくくなるということですね。

極端な例ですが、凍ったゼリーとそうでないゼリーでは、どちらがよりゼリーそのものの味を感じるでしょうか?
おそらくほとんどの方は凍っていないゼリーの方がより味を感じると思います。
凍ったゼリーでは味が閉じているのですね。

とはいっても、その味が閉じているとされる凍ったゼリーもおいしく感じますよね?
ではなぜおいしいと感じるのでしょうか?

冷やせば冷やすほどのどごしは良くなるが…

キンキンに冷えたビール

キンキンに冷えたものがおいしいと感じるのは、それは「のどごし」が良くなるからです。
喉を通る感覚が気持ちいいので、あたかもその味わい自体がおいしいと感じるのですね。

例えばこれは、発泡酒や淡麗辛口のピルスナービール(大手4社のビールと考えてください)などはのどごしが重視されているので、キンキンに冷やした方がいいかもしれませんね。
しかしクラフトビールなど、香りや旨みが強く、味わいそのものを楽しむビールの場合、キンキンに冷やすのは少しもったいないかもしれません。
せっかくの豊かな味わいを感じにくくなってしまうからです。

もちろんクラフトビールとは言っても、タイプにもよりますし、そもそも個人の好みにもよるでしょう。
なので絶対的なことは言えません。
しかし「最適と考えられる飲みごろ温度」という点は、冷やし方はもう少し考えた方がいいかもしれません。

温度によって味の感じ方は変わる

まず味わいと温度の関係性について簡単に触れておきましょう。

一般的に食べ物や飲み物は、温度によって味わいが変わると考えられています。
温度によって味覚、つまり味の感じ方が変わると言った方がいいかもしれませんね。

ではどう変わるのでしょうか?

温度が高いと…

香り:豊かになる
甘み:増す
苦味:やわらぎ、やわらかく感じる
旨み:強まり、長く感じる
全体:味わいにボリュームとまろやかさが出る

温度が低いと…

香り:閉じた印象、爽やかになる
甘み:減る、スッキリする
苦味:増す、キレを感じやすい
旨み:感じにくい
全体:味わいのボリュームは小さく、引き締まる

このように変化します。
発泡酒や淡麗辛口タイプのピルスナーなど一般的なビールでは、より冷やした方がキレが良くなり淡麗辛口がより強調されることがわかりますね。
逆に、香りと味わいが豊かなクラフトビールの場合、冷やしすぎない方がそれらがより強調されます。

クラフトビールのタイプ別飲みごろ温度

では具体的に温度は何度ぐらいが最適と考えられているのでしょうか?
ビールのタイプごとに見ていきましょう。

ただしこれらは「最適と考えられる」温度であって、銘柄の特徴や個人の好みにもよりますので必ずしも正解ではありません。
最適な温度で飲まなければいけないわけではありませんので、あくまで参考程度にご覧ください。

ピルスナーの飲みごろ温度

4〜7℃
冷蔵庫の野菜室と同程度の温度

大手4社のビールなど、みなさんが普段よく飲むビールはこのピルスナータイプです。
夏は低めで冬は高めが良いとされています。
ちなみに、サントリーのプレミアムモルツでは「夏なら4~6℃、冬なら6~8℃がおすすめ」公式サイトに記載されています。

ペールエールの飲みごろ温度

8〜12℃
冷蔵庫から出して10分後程度

最近人気のよなよなエールやバスペールエールなどがこのペールエールタイプです。
8〜12℃というと日本人の従来的なビールの捉え方からすると、ちょっと緩いです。
しかし、その方が味や香りがしっかりします。

IPAの飲みごろ温度

12〜14℃
冷蔵庫から出して15分後程度

最近人気のパンクIPAやインドの青鬼などがこのIPA(インディア・ペールエール)タイプです。
常温より少しだけ冷たい程度の温度だと、苦味や旨み、味わい深さを感じることができます。
冷やしすぎると苦味だけが強調されてしまいます。

ベルジャンホワイト(白ビール)の飲みごろ温度

4〜7℃
冷蔵庫の野菜室と同程度の温度

ヴェデット、ヒューガルデン・ホワイト、ブルームーンなどがこのベルジャン・ホワイトにあたります。
低い温度だとサッパリしますが、個人的にはもう少しぬるめでも、まろやかになりオススメです。
同じ白ビールであるヴァイツェンタイプもこの温度が最適と考えられています。

スタウトの飲みごろ温度

8〜12℃
冷蔵庫から出して10分後程度

スタウトとは黒ビールの一種で、ギネスがとても有名です。

まとめ

ここまで参考になりましたでしょうか?

最後にまとめると…

冷たい:味・香りが閉じ、スッキリする
温かい:味・香りが開き、まろやかになる

色・味・香りが薄いビールはより冷やす
色・味・香りが濃いビールは少しぬるめ

ということですね。

ペールエールやIPAなどのクラフトビールの場合、最適温度は意外とぬるめが良いとされるということになりますね。
とはいっても、キンキンに冷えたビールが良いと思うのもアリでしょうし、決して不正解ではありません。
ただ、これをキッカケにあえてちょっとゆるいビールを味わってみるのも良いですね。

それではこの辺で。
以上、「クラフトビール、冷やし過ぎていませんか?」でした。

参考サイト:RateBeer|Serving Temperature Guide
参考文献:日本酒の教科書・新星出版社 著・木村克己

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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