ヨーロッパ各国やアメリカなど世界的なブームとなっているクラフトジン。
最近は日本でも大注目の分野となり、造り手も増えています。
少量生産のこだわり派・個性派のジンとされるクラフトジンですが、今回、クラフトジン業界のキーマンの一人である「三浦武明氏」にクラフトジンについてインタビューしてみました。
クラフトジンのどんなどころが面白くて、そもそもなぜ流行ったのか?その選び方や楽しみ方は?など、クラフトジンについてかなり詳しく語っていただいています。
ベースのスピリッツに、ハーブや果皮、スパイスなどの「ボタニカル」を数種加え風味づけされたお酒。
規定上ジュニパーベリーは必須だが、他ボタニカルのレシピは自由。
クラフトジンの名店・グッドミールズショップを手がける三浦武明氏にインタビュー
今回インタビューさせていただいた三浦武明氏は、現在250種以上のクラフトジンの扱う名店「グッドミールズショップ」などを手がける株式会社フライングサーカスの社長であり、日本におけるクラフトジンの第一人者でもあるお人。
三浦氏はクラフトジンについて何を語ってくれるのでしょうか?
それでは早速ですが、三浦さんが思うクラフトジンの魅力ってどんなところですか?
よく語られる多様性や個性の幅広さはもちろんですが、それぞれのストーリー性も面白いし、その土地にフォーカスして、その土地ならではの素材を大事にしているのがクラフトジンであり、その魅力だと思っています。
ジュニパーの味わいを主体にしてってところ以外は原料の規定はほとんどないし、自由。だからこそ「これもジンなの?」って予想もしないものが頻繁に生まれたりしているんですよ。
それから、ジンは突出して「わかりやすいお酒」だと思っています。
ジンに使用されるボタニカルなどの素材って、みんなが知る共通言語じゃないですか。
例えば「これキュウリ入ってんだよ」「こっちはシナモンだよ」「これはぶどう使ってるからぶどうの味もするでしょ」って。
他のお酒と違って、ジンは前提の知識がなくても共有できる部分が多いんですよ。
ストーリーも面白いけど、ボタニカルという共通言語で話せるし、そう言った意味ではかなり敷居が低いお酒だと思います。
いわゆる酒通の人やバーカルチャー以外の人たちも巻き込める可能性がある、そういった魅力を持つのがクラフトジンだと思っています。
なぜいまクラフトジンの動きが活発なのでしょうか?
コーヒーやビール、そして食のカルチャーで起きた流れと、ジンは同じ流れをたどっています。
20年前ごろから、世の中が急速に便利になり、情報の格差がなくなり、あらゆるものが画一的になっていきました。
けどそういった画一性に埋れてしまったものもあって、最近はそれを見直す動きが強まっている。
例えば北欧では、これまであった食の文化を見直す動きが出ているんですけど、ただ見直すだけじゃなくて、食材や素材、その土地にフォーカスして進化させているんですよ。
それは「ニューノルディックフード」と呼ばれていて、今面白い食のカルチャーの一つになっています。
他にも、コーヒーやビールなんかも変革が起きて、サードウェーブやクラフトビールのカルチャーが生まれた。
そういった世界的な食の流れと呼応して、ジンでも同じことが起こっていると感じています。
ジンっていうのはある意味かなりゆるい規定だからこそ、その土地ならではのボタニカルを活かしたり、個性を表現できる幅を持ったお酒で、アイディアを形にするまでのスピードが速く、比較的参入のハードルも低い。
だから変化が起きやすかったんだと思います。
それに、今のクラフトジンは若い人が数人で造り初めたり、新しいカルチャーとして面白いし、ワインやビール、ウイスキーや焼酎など、他の酒類を造っているメーカーからの参入も増えて、もっと活発に動いていくだろうなと思います。
そもそもグッドミールズショップで「クラフトジン」をあえて選んだ理由って何なんでしょうか?
単純に僕自身が「クラフトジン面白いな」って思ったというのもありますが、グッドミールズショップのコンセプトを表現するのにもピッタリだったんですよね。
実は始めからジンのお店にする計画だったわけではなくて、「なるべくカラダに良いものを、できるだけ手作りで」っていうお店のコンセプトにピッタリ当てはまったんですよ。
そのコンセプトには、みんながよく知ってる、例えばチキンナゲットだったりアイスだったり、そういったものを「もう一回丁寧に手作りしてみようよ」って思いがあって。
知ってるものだからこそみんなを巻き込みやすいし、ジンはジントニックって形で誰でも飲んだことがあるお酒じゃないですか。
それにジンは専門知識がなくても共有できる、わかりやすいお酒なんだけど、素材やその土地にフォーカスしていて、手作りで、そこには強いこだわりがある。
そういったところに共感して、どんどんフォーカスしていった感じですかね。
では三浦さんがクラフトジンを知ったキッカケ、はたまた面白いと思ったそもそものキッカケって?
「ショリゲル」を飲んだのが全ての始まりです。
もともとジンは好きなお酒ではあったんですけど、たまたま入ったお店で「ショリゲル」っていう当時は全く知らなかったジンを飲んだんです。生産者の家族と知り合いの方が日本に少量輸入しているとかで、今は見かけない陶器のボトルに入ったものだったのですが。
そしたら、これがめちゃくちゃ美味しくて。
「なんでこんなに美味しいんだ」って思って調べたら「マヨネーズ発祥の地であるメノルカ島で17世紀から飲まれている島酒」で…
そういったストーリーも含めて、いわゆるロンドンドライジンやオールドトムのスタイル以外にも、個性的で面白いジンもあるんだなって思って、そこからどんどんハマっていきました。
それと同時に、ジンを楽しむ上で重要なトニックウォーターにも興味を持ちました。
フィーバーツリーを始めとして、合成の香料や甘味料を使用しない天然由来のものが出てきていて、結構クオリティ高いし、面白いなーと思ったんですよね。
クラフトなジンをナチュラルなトニックで飲んだら面白いんじゃないか、そう思って、これまたスペインのジンですけど「ジンマーレ」をジントニックにして飲んだとき「もはやライムとか入れちゃダメだな」って思っちゃって。
「これはもう面白すぎる!」そう感じて、日本に入ってきているジンを少しずつ集め始めて、イベントなどで使用するようになりました。
グッドミールズショップでも飲み方は基本ジントニックを推してますよね。
ジンの面白さをそのまま味わってもらいたいっていう気持ちがあるので、ウチではジンとトニック、That’s allっていう。ライムも基本使いません。
バーテンダーの方には「そのやり方は逆に勇気がいる」とか言われたりしますけど。
そのジンでしか作れないカクテルっていうのはバーテンダーさんが作ってくれるだろうし、僕らは僕らでテイスティングに近い形で楽しんでもらうっていうのがスタイルだと思っています。
特にジンは具体的に材料が違うから、それだけでも面白いし、追求しやすいんですよ。
三浦さんが個人的にオススメしたいジンってありますか?
カッコつけて言うなら、僕らが年内にリリースする予定のオリジナルジンをオススメしたいです(笑)
個人的な好みで言うなら「ショリゲル」はやっぱり外せないし、ジンの美味しさを再確認させてくれたって点では「ジンマーレ」
あとはストーリーも含めて面白いのが、アメリカの「バーヒル」かな。これは養蜂家が造っているジンです。
それからフィンランドの「テヌジン」も素晴らしいですね。
味がやりすぎではなく、リンゴンベリーやオリス、野バラらによる芳香も良いけど、まず単純に美味しい。しっかりとした個性をもちながらも奇をてらってないので長く残るだろうとは思います。
今も普段ジンを飲みますか?それから個人的にオススメしたい飲み方とかあればお聞きしたいです。
最近は仕事でジンを飲むことが多いので、普段はあえて別のお酒と触れ合うようにしています。
プライベートではラムが若干多いかなー…あと最近紹興酒にもハマってます。
ジンの飲み方については…
僕は、グラスに氷とジンを入れて、少し味を開かせながら、まずはジンだけ味わって、その後ジントニックにするという飲み方が好きですし、ぜひオススメしたい。
ただ、たまにはそのジンに使われているボタニカルを使ってジントニックにしたり、素材をふくらますようなイメージで楽しんでみるのも良いと思います。
例えば、テヌジンのジントニックにドライのリンゴンベリーを入れてみるとか。そうすると味は広がるし、ちょっと赤みがかって見た目も良くなる…
何も入れないか、ジンに使われているボタニカルをアレンジとして加えたりとか、シンプルに素材と向き合っていくだけでも、ジントニックはこだわりがいがあると思いますよ。
今は日本でもクラフトジンを飲み始める人が増えてきています。そういった初心者の方がクラフトジンを選ぶにあたってのアドバイスをいただけますか?
お店の人にもっと聞いたら良いと思う。
そういうの聞かれたい店員さんっていっぱいいるし、そういう人の話って面白いし、特にジンは現在進行形で新しい味わいの商品が次々とリリースされているので、そのワクワクをみんなで楽しむという意味でも、おすすめしたいですね。
別に前提知識がなくても、自分の言葉で好みなり求めているものを伝えてあげれば、ちゃんと応えてくれると思いますよ。
それから、まずは見た目で選ぶってのもありだと思います。
個性あふれる見た目のクラフトジンが多くて、その見た目どおりの味になっていることが多いですから。
クラフトビールもそうですけど、造り手が「俺はこれが好きだから!」みたいな感じで造っているところが多くて、それはやっぱりラベルに反映されているんですよ。
エレガントな見た目のジンにはエレガントなジンが入ってるし、やけにごっつい見た目のジンだなと思ったらやっぱりそういったフレーバーのジンが入っているし。
もちろんボタニカルや素材から選ぶってのも分かりやすいと思います。
「ぶどう使ってるからこれにしよう」みたいな。
クラフトジンが日本でもっと普及するには何が必要だと感じますか?
ジンがわかりやすいお酒だということを、僕たち提供する側はもっとたくさん、どこまでも丁寧に伝えていかなければいけないと思っています。
「ジンにこんなに種類があるよ、こんなボタニカル使ってるよ、それにトニックにもこんなに種類があるよ、安くて頭が痛くなるようなお酒ではないんだよ」って感じで。
実際のところ世界的にもハードリカーの消費は伸びていて、当店でも思っている以上に家用にクラフトジンを買っていく人が多いんですよ。
伝わっている人にはすでに伝わっていて、受け入れられているんです。
だからこそ、分かりやすく丁寧な説明が必要だと思っています。
例えば僕は、年配の人にジンを説明するとき「ジュニパーベリーってハーブを使ってる焼酎です」って言ってます。
既存のバーカルチャーの人や酒好きの人はもちろん、「今までハードリカーなんて飲んだことない」って人にも楽しんでもらえるだけのポテンシャル、可能性がジンにはある。
だからこそ、既存のやり方にとらわれず、いろんな角度からアプローチしていけると思います。
クラフトジンが今後日本でどうなっていくか、三浦さんの予想をお聞きしたいです。
日本って、良い軟水、優れた蒸留技術、そして良い素材やボタニカルと、全て揃ってるんですよ。
だから、もっともっと面白いジャパニーズクラフトジンが増えてくると思います。
それから、ジントニックって、かなり多くの飲み屋さんで出しているメニューじゃないですか。
いま少しずつクラフトビール屋さんじゃないお店にクラフトビールが置かれるようになってきていて、ビールがそうなったのであれば、ジンも同じ道を辿っていくと思います。
先日遊びに行った国産ワイン専門の料理屋さんに日本のジンが置かれていました。
楽しくなりそうですよね。
最後に、三浦さんの今後の活動や考えていることについてお聞きしてもいいですか?
まずは3月中に、限りなくカジュアルなスタイルでジントニックを提供するお店をオープンする予定です。
屋外のお店で渋谷駅の埼京線ホームから見える場所。キャンピングトレーラーと、テントと席があって、そこでジン50種ぐらいとトニックウォーターを、ホッピーのナカとソトみたいに個別に提供して、自分の好みでジントニックを飲んでもらう。営業は昼間からで、日差しの下でこれ以上ないカジュアルなスタイルで楽しんでもらいたいって思いがあります。
それから、まだ企画中ですが、6月に都内某所にてジンの大きなイベントを開催したいと思っています。
企画段階なので確かなことは言えませんが、インポーターやメーカー、バーテンダーも巻き込んで、これもカジュアルなんだけど、ビアフェスよりも少し大人っぽくやりたいなって。もちろん日差しの下で。
クラフトジンってそもそも造り手と売り手、そして飲み手の距離が近いお酒。だから横のつながりを作っていきたいんです。
実はそれに関連しているもので「CRAFT GIN CLUB」っていうサイトも作ったんですよ。
本格的な始動はこれからですが、造り手と売り手、そして飲み手が情報を共有しあえるサイトで、これもみんなで楽しめるように強化していきたいですね。
あと、先ほどちょっとだけ触れましたが、実は3年前から僕たちオリジナルのジンづくりを始めているんです。
まだ完成はしていないのですが、今年こそはリリースする予定です。
それに付随して、ハウスジンやオリジナルジンを造るお手伝いを、プロジェクトとして考えています。
いずれにせよ、みんなで楽しめるようなカルチャーだからこそ、僕たちらしいカジュアルな形でクラフトジンを提案していきたいですね。
貴重なお話ありがとうございました。
まとめ
クラフトジン業界の第一人者でもある三浦氏が語ったクラフトジンの魅力は「その土地ならではの風土・素材を活かした新しいカルチャーであること、ストーリーが面白いこと、そしてみんなで共有できる分かりやすさ」
インタビュー内容から、クラフトジンに対する知識や思いの深さが伝わってきたかと思います。
同氏が今後もクラフトジンを盛り上げてくれることは間違いありませんし、今後の動きに期待したいところです。
住所:東京都渋谷区東1-25-5 2F/3F
アクセス:「渋谷」駅 徒歩9分
営業時間:12:00〜0:00 (日曜定休)
ホームページ:http://www.flyingcircus.jp/
Facebook:facebook.com/goodmealsshop/
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