【実験】ジンの香りを自分でブレンドしてみる…“あのジンの香り”は作れるのか?

【実験】ジンの香りを自分でブレンドしてみる…“あのジンの香り”は作れるのか?

ジンといえば、ボタニカル(ハーブやスパイス、フルーツなど)で香りづけされた、なにものにも変えがたい華やかな香りが特徴のお酒。

先日、そのジンの香りに関するワークセッションが、Mixology Experience(東京・六本木)で行われました。
今回の会場を含め都内にミクソロジーBARを5店舗もつ、国内随一のミクソロジストである南雲主于三さんと、スイス系の香料メーカー、フィルメニッヒ社によるワークセッションで、「ジンのボタニカルの食用エッセンシャルオイルをブレンドして、実際に飲める“ジンウォーター”を作ってみる」というもの。
本来ジンの香料をブレンドできるのはその製造に携わる者だけ。かなり貴重な機会とあって筆者も胸を躍らせながら体験してきました。

果たして、普段飲まれているようなオーソドックスなジンの香りは作れるのでしょうか?

南雲さんは日本のバー業界で最も影響力のある人物の一人。

南雲さんは日本のバー業界で最も影響力のある人物の一人。

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ジンの代表的なボタニカルの“食用”エッセンシャルオイルをブレンドに使用

今回のワークセッションで用意されたのは、この度フィルメニッヒ社が開発した、飲むことのできるエッセンシャルオイル。(なんと食用は世界初!通常エッセンシャルオイルは食用不可)

用意されたラインナップは、ジンに度々使用される以下のボタニカルから抽出したエッセンシャルオイルです。

ジュニパー、オリス、アンジェリカ、コリアンダー、レモン

  • ジュニパー(ジンには必須)
  • コリアンダー・シード(コリアンダーの種、ジンの柑橘系の香りの元)
  • アンジェリカ・ルート(アンジェリカの根、ほとんどのジンで使用される香りの土台役)
  • オリス・ルート(オリスの根、アンジェリカと似た役目)
  • レモン
  • リコリス
  • カッシア
  • カルダモンなど、計12種。

これらの香料を、水をベースに自由にブレンドしてジンならぬジンウォーターを作るのですが、筆者は今回、“ジュニパーと柑橘系の香り”が強調されるオーソドックスなジンの香りを目標とし、チャレンジしてみます。

ベルガモットやグレインズ・オブ・パラダイスなど比較的珍しいものも用意された。

ベルガモットやグレインズ・オブ・パラダイスなど比較的珍しいものも用意された。

いざブレンドしてみると想像以上の難しさと意外な発見が…

ワークセッションでは、まず始めにフィルメニッヒ社の調香師、加藤さんから各ボタニカルに関する基本的な説明を受けます。
その後に、いよいよそれらを用いてのブレンド。

各ボタニカルの説明をするフィルメニッヒ社の加藤さん。

各ボタニカルの説明をするフィルメニッヒ社の加藤さん。

とはいえ、いきなり「さあやってみてください」というわけではなく、まずベースとなるブレンドの比率を教わり、それを実践してみます。
その割合は「(水100mlに)ジュニパー5の割合に対して、コリアンダー、アンジェリカ、オリス、レモンを1ずつ」というもの。
実際にやってみると、アンジェリカやオリスなどの根っこ系(ルート系)の香りが強く、柑橘系の香りが少し弱いなと感じました。

ルート系(根っこ系)の香りが強すぎる?

オリジナル・レシピでのブレンドに挑戦。

オリジナル・レシピでのブレンドに挑戦。

今度こそは、自分の考えたレシピのブレンドに挑戦。
上記レシピよりジュニパーの量を倍程度に増やし、コリアンダーも少し増やしてブレンドします。
(ある生産者曰く、オーソドックスなジンでは、使用ボタニカルに占めるジュニパーの割合は7〜8割前後になるという)

すると、あることに気づきます。
それは、根っこ系の香りが異様に強いということ。

アンジェリカやオリスなどの根っこ系は、香りのタイプでいえば重く、文字通り根をはるような香りが特徴です。
香りを下支えし、ジュニパーと他のボタニカルの香りを引っ付ける役割も果たすというのは、ジン界隈では知られた話。(だからこそ多くのジンで使用される)
とはいえ、思っていた以上にずっと香り方が重たく、そして強いことに驚きます。

主催の南雲さん曰く「ブレンドする順番によっても香りに違いが生まれ、重い香りのアンジェリカやオリス(ルートを使う根っこ系)より先にレモンなどの軽い香りを入れてしまうと、後から入るルート系の香りに潰されてしまう」とのこと。

アロマを入れる順番によっても香り方が異なる、南雲さんは言う。

アロマを入れる順番によっても香り方が異なる、南雲さんは言う。

それを念頭に、様々なブレンドレシピを試してみるものの、納得がいくものには遠く…
ジュニパーと(柑橘系の香りの元である)コリアンダーの割合をさらに増やし、レモンも少し増やしても、それでも根っこ系が強く感じられました。
(ジンの香りの中でも香り立ちが強いカルダモンなどを試してみても、それでもなおアンジェリカやオリスの印象が強い)
それともう一つ感じたのが、試せるレシピのパターンが多すぎて「もっと〇〇を増やせば〇〇な香りになるかも」と、だんだん迷宮入りしていくということ。

結論、セルフ・ブレンドで目指すジンの香りに仕上げるのは非常に難しい

“ジュニパーと柑橘系の香り”が強調されるオーソドックスなジンの香りを作ってみる、という今回のチャレンジ。
結果は、当然といえば当然ですが「非常に難しく、修行を重ねないと無理」でした。

普通ジンはワンショット、マルチショットなどと言い、ボタニカルは全種類まとめて蒸留される(香りが抽出される)ので、今回のようにブレンドを介するジンは、実はかなりの少数派です。
今回のワークセッションをとおして、そのブレンドの難しさを痛感させられたのと同時に、それを生業とするブレンダーに対する尊敬の思いがより強くなりました。

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今後ジンウォーターが浸透するかも

今回用いたエッセンシャルオイルは、ティンクチャー(チンキ)などとは違いノンアルコールで、しかも飲むことができる代物なので、当然それで作ったジンならぬジンウォーターも飲めます。
実際に飲んでみると、香りはジンっぽいものの、味はほぼ水という不思議な飲み物でした。(水ではなくトニックで作るとちゃんとジントニックになりました)

主催の南雲さん曰く「フィルメニッヒ社が開発した食用のエッセンシャルオイルによって、(アルコールというハードルがなくなるため)ジンウォーターを子供が楽しめたりジンがより身近になるかもしれない、香りそのものの楽しみ方もぐっと幅が広がる」とのこと。

氣水などのノンアルコール・ジンを作る方法もあるが、完成している食用エッセンシャルオイルをブレンドする方が手軽で、楽しみ方の幅は広い。

氣水などのノンアルコール・ジンを作る方法もあるが、完成している食用エッセンシャルオイルをブレンドする方が手軽で、楽しみ方の幅は広い。

ジンはボタニカルのお酒であり、香りを楽しむお酒。
実際に、お酒という枠を超えて、老若男女その華やかな香りを楽しめる未来がくるかもしれません。

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小針 真悟
著者:小針 真悟

[LiquorPage代表 / CRAFTGIN.JP共同運営者 / ジンフェスティバル東京 運営事務局] 豊富な現場経験と長年のお酒愛によって、ジンを筆頭にあらゆるお酒の知識を持つ。ジン専門書籍やテキーラメディアなど外部酒類メディアの執筆・編集にも携わる。

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