− 通常ジンは、使用するボタニカルは全種まとめて蒸留されますが、季の美ではそれをカテゴリー分けし別々に蒸留していますよね?
マーシー:ボタニカルを別々に蒸留するというのは最初から考えていた製法です。
というのもボタニカルは、それぞれ最適な浸漬時間も違えば、蒸留の温度、摘出方法も違います。
それぞれ素材の良さを最大限に引き出すには、この手法がベストだと思っています。
手間やコストはかかりますが、元々最高のものを造ろうと思っていましたし、この手法は、造りわけた原酒をブレンド、いわば調整を経ることにより、商品の質を安定させ一貫性を持たせることができるメリットもあります。
マーシー:それと、(他の農産物と同じように)年によって収穫されるボタニカルそのもののキャラクターが微妙に違ってきます。
完璧で完全なものはクラフトではないかもしれませんが、品質のブレはそれに対する甘え。
そういった意味で、“揺らぎとブレ”の違いは意識しています。
季の美という枠の中で揺らぐ分には、それもクラフトの良さかもしれませんが、その枠をはみ出るようなブレはあってはいけません。
だからこそ、ブレンドして調整するんです。
今後の展望は?品切れリスクや高評価の理由について
まず、IWSCでトロフィーを獲ったことで、世界からの引き合いが増えることが予想されます。
今後、海外での需要増による品切れのリスクはありますか?
クロール:実は、海外からの問い合わせは以前から結構きているのですが、そのほとんどを断っています。
季の美には、希少な素材も使用しているため、大幅な増産はできません。
そうした中で、一番大事にしている国内市場での品切れは避けなければいけません。だから輸出の調整を行っているんです。
今のところ、品切れリスクについては問題ありません。
− 今回のIWSCでの快挙は、世界から評価されている証でもありますが、その理由についてはどのようにお考えですか?
クロール:海外のジンはいろんな国のボタニカルを使いますが、季の美では地元京都を軸とした国産ボタニカルをたくさん使っています。
京都であることがしっかり表現され、味も香りも海外のジンとは全然違う。
それから季の美は、それぞれのボタニカルのハーモニーが絶妙で、飲みやすく仕上がっています。
だからこそストレートで飲む人も多い。海外のジンはアルコールの刺激も強いためジントニックなどで飲むのが一般的です。
そうした味の違いが評価されたのだと思います。
− ではその季の美の、個人的にオススメの飲み方は何ですか?
クロール:最近はジンスリングが気に入っています。
水とガムシロップを入れただけのシンプルな飲み方ですが、ボタニカルの個性が引き立ちます。
マーシー:僕は水割りで飲むことが多いですね。
炭酸などで割るより、まろやかな仕上がりになるかなと思っています。
− それでは最後に、今後の展望についてお聞かせください。
クロール:まずは季の美の品質を守ることが大切だと思っています。
季の美としてのストーリーを大事に、素材や質の妥協はせずに、良いものだけを造り続けます。
それから、限定商品もいろいろ試してみたいと思っています。季の美は定番銘柄として中身を変えず、限定商品には、新たなボタニカルなども使ってみたいですね。
− 取材にご協力いただき、ありがとうございました。
ジャパニーズ・ジンのカルチャーを牽引していく季の美
インタビューにあったように、計画的で、コンセプトを明確にした上で「最高をものを、コストは最後」という方針であったからこそ、高価なライススピリッツや京都産を軸とした和のボタニカルを使用するに至り、季の美は誕生しました。
偶然ではなく、明確なコンセプトと強い意志、京都という土地に導かれた、ある意味“必然”から、のちに世界一の賞を受賞するほどの味わいのジンが生まれたのです。
IWSCでのトロフィーは、過去には日本のウイスキーも受賞し、それをきっかけにジャパニーズ・ウイスキーは世界に羽ばたいていきました。
それと同じように、ジャパニーズ・ジンも世界に羽ばたき、ひいては日本のジンカルチャーもさらに盛り上がることでしょう。
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