12年物のテキーラは存在しない?長期熟成のテキーラが少ないワケ

テキーラの「12年」を見ないワケ

テキーラには主に、熟成なしのシルバータイプと、熟成させ色づいたタイプの2種類があります。
ウイスキーと同じく、樽で熟成させることでゴールドっぽく色づいているのですが、ウイスキーほど長期熟成させたテキーラは実はありません。

わかりやすく言うなら、テキーラにはウイスキーの定番でもある「12年」がほぼ存在しません
テキーラでは長期熟成の最高級品でも、せいぜい3年程度とウイスキーの熟成年数とはかなり差があります。

これは実は、テキーラ独特の事情が関係しています。
本記事では、テキーラにウイスキーほど長期熟成させたものが少ないワケについて、簡単に解説していきます。

テキーラの熟成期間が短いのは産地の気候が関係している

テキーラの熟成期間がウイスキーよりも短い理由は、産地であるメキシコの気候が関係しています。
先に結論だけ言うと、熟成環境(気候)の違いにより、テキーラをウイスキー同様に10数年熟成させると樽の中身が空っぽになってしまうのです。

どういうことか見ていきましょう。

樽熟成では避けて通れないエンジェルズシェア(天使の分け前)

ウイスキーのエンジェルズシェアの様子

ウイスキーのエンジェルズシェアの様子。右の12年の方が量が減っている。

まず、樽で熟成させると必ず、中の原酒が少しずつ減っていきます
樽の中というと密閉空間と思うかもしれませんが、樽は木材ですから水は通さずとも気体は通します。
中の原酒は水分ですから、何もせずとも少しずつ気体となって蒸発していき、量が減っていくのです。
このように樽熟成によって中の原酒が減っていくことを「エンジェルズシェア(天使の分け前)」と言います。

当然樽熟成を用いるテキーラも、それからウイスキーやワインなども同様に、このエンジェルズシェアは避けて通ることができません。

テキーラのエンジェルズシェアは年間12%にもなる

エンジェルズシェア(天使の分け前)によって減っていく量は、各お酒や熟成環境によって異なります。
年間2〜3%程度目減りしていくのが一般的で、ウイスキーも同様に概ね2〜3%程度とされています。(主産地スコットランドの場合)

ところがテキーラのエンジェルズシェアはなんと、年間12%程度にものぼるとされています。
熟成環境によって異なるため、もちろん銘柄によってその数値は異なるのですが、単純に見ればスコッチ・ウイスキーの5倍以上の早さで原酒が減っていくことになります。

年間12%程度減っていくのですから、10年程度熟成させると中の原酒が空っぽになってしまう計算です。
つまりテキーラは、ウイスキーと同程度の長期熟成させることができないのですね。

テキーラのエンジェルズシェアが多い理由

メキシコの風景(アガベ)

先に触れたようにエンジェルズシェア(天使の分け前)での目減り量は熟成環境によっても変わります。
熟成環境とは産地の気温・湿度などを指し、温暖な気候の方が原酒が減るスピードが早くなります。

ウイスキーの主産地スコットランドが冷涼な気候であるのに対し、テキーラの産地メキシコは基本的には温暖な気候です。
さらにメキシコは、砂漠があることからもわかるように乾燥しています。
そしてテキーラの産地周辺(主にハリスコ州)では、昼夜の寒暖差が激しいとされています。
これらも熟成を早める要因とされ、テキーラは熟成スピードが早まる条件を多く満たしているのです。

これによって年間12%もの量の原酒が、エンジェルズシェアによって減っていくのですね。

テキーラは3年熟成でも最高級品となる

テキーラはウイスキーのように「〇〇年」とラベルに熟成年数が記されることはありません。
ご存知の方も多いかもしれませんが、テキーラは熟成年数によってグレードが分けられ、これがラベルに記されます。

  • 熟成なし(もしくは60日未満):ブランコ
  • 2〜12ヶ月熟成:レポサド
  • 1年〜3年熟成:アネホ
  • 3年以上熟成:エクストラ・アネホ

当然ウイスキー同様に熟成期間がより長いものが高級品となり、テキーラにおいてはエクストラ・アネホが最高級品ということになります。
つまり、ウイスキー(スコッチ)では3年熟成といえばまだまだ若いですが、テキーラの3年熟成は熟成がかなり進んだもの、ということです。

そのため3年以上熟成のエクストラ・アネホは流通量が少なく、ましてや2桁の熟成年数のテキーラがほぼ存在しないのです。

まとめ

テキーラにウイスキーのような長期熟成物が少ないのには、エンジェルズシェア、そしてメキシコの気候が関係していたのですね。

最後ざっくりまとめると…

  • エンジェルズシェアによって樽の原酒の量は減っていく
  • エンジェルズシェアの量は熟成環境によって異なる
  • メキシコが温暖で寒暖差が激しいため、熟成が早く進む
  • スコッチウイスキーでは年間2〜3%、テキーラではなんと年間約12%も減っていく
  • よってウイスキー同等の熟成年数を設けることができない(する必要がない)

ちなみに今回はテキーラとスコッチウイスキーで比べましたが、ウイスキー内でも同様の違いがあり、バーボンではテキーラと同等程度のエンジェルズシェアとなります。
だからバーボンはスコッチより若い(熟成はしっかり進んでいるが)年数のものが多いのですね。(そもそも表記がないものが多いですが)

それではこの辺で。
以上「12年物のテキーラは存在しない?長期熟成のテキーラが極端に少ないワケ」でした。

【参考書籍】
テキーラ大鑑|廣済堂出版 著・林生馬
ウイスキーコニサー資格試験教本|ウイスキー文化研究所

小針 真悟
著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、ジン専門書籍やテキーラメディアなど外部酒類メディアの執筆協力の他、イベントの企画運営にも携わる。(ただの酒好き)

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