テキーラといえばメキシコのお酒。
なんとなくそれは知っている方も多いでしょう。
そもそもテキーラはメキシコでしか造れないお酒です。
それもそのはずで、定義上メキシコ以外では造れないのです。(正しくはテキーラと名乗れない)
この定義上の問題についてはテキーラにそれほど詳しくなくても、ある程度知られています。
しかしそれなら同じ原料で同じ製法で、「テキーラ風」のお酒なら造れるはずです。
しかし、世界を見てもこのテキーラ風のお酒はほぼないに等しいです。
これは実はある特有の事情が関係しています。
本記事ではこの、法律(定義)以外でテキーラがメキシコ以外で造れないワケについて解説していきます。
テキーラの定義についておさらい
本題に入る前にまずテキーラの定義ついて知っておく必要があります。
以下でテキーラであるための定義です。
- テキーラはメキシコ内の指定された5つの州(テキーラ5州という)で蒸留されたもの
- 原料の「アガベ・アスール(ブルーアガベ)」はテキーラ5州で栽培されたものを使用
- 原料の「アガベ・アスール(ブルーアガベ)」を51%以上使用する(つまり原料の半分以上)
- 最低2回は蒸留を行うこと
- アルコール度数が35〜55%の間であること
細かいものは省略していますが、ざっとこんな感じです。
この定義を見れば、メキシコ(しかもテキーラ5州だけ)でしか造れないのは明白ですね。
これがテキーラがメキシコでしか造れない定義上の理由。
しかしこの定義にヒントがあります。
原料を見ると「アガベ・アスール」とありますが、実はこれがテキーラがメキシコでしか造れないもう一つの理由と関係しているのです。
しかしメスカルでは使用するアガベの種類がテキーラと異なり、製法も少し異なることから、味わいもテキーラとは異なります。
テキーラの原料「アガベ・アスール」はメキシコでしか栽培できない?
テキーラがメキシコでしか造られないもう一つの理由。
それは原料のアガベ・アスール(ブルーアガベ)が、他の地域では栽培が非常に難しいとされているからです。
詳しく見ていきましょう。
テキーラの原料アガベ・アスールとは?
By gufm – Flickr: Agave, CC BY 2.0, Link
アガベ・アスールとは、アガベと呼ばれる多肉植物の一種で見た目はアロエに似た巨大な植物です。日本ではブルーアガベ(アガベ・アスールの英語名)と言われることも多いです。
テキーラに使用するのはアガベ・アスールの茎の部分(ピニャという)で、茎を搾りその搾り汁を発酵・蒸留させて出来上がります。
ちなみにアガベ・アスールは、アガベシロップの原料となることで日本でも注目された植物ですね。
アガベ・アスールはメキシコ以外での栽培が難しい
アガベ・アスールの栽培には、平均気温が20℃以上であること、年間晴天日が250日以上であること、さらに海抜1500m以上のやや高地であること、という条件を満たさなければなりません。
この条件を満たすのは産地であるメキシコ(テキーラ5州)とオーストラリアの中心部、南アフリカの一部のみとされています。
さらにテキーラの原料として使用できるようになるまでに、なんと5〜6年もの栽培年数を要します。
このようにアガベ・アスールは栽培が非常に難しく、そのためほぼメキシコでしか栽培されていないのです。
詳しくはこちらをご参考ください。(外部サイト、英語記事)
⇒Tequila industry taking shape in South Africa|drinksfeed
輸入で仕入れ原料として使用するのは非現実的
なら輸入すればいいのでは?と思うかもしれませんが、そもそも原料として使用できるアガベは巨大であるため必要量の輸入は現実的ではありません。
またアガベ・アスールは鮮度が大事であるため、輸入などで仕入れお酒の原料とすることは難しいと思われます。
お酒の原料として、輸入が容易な穀物類とはワケが違うのですね。
まとめ
ここまでテキーラがメキシコでしか造れないワケについて、解説してきました。
最後にざっくりまとめると…
- そもそもテキーラは定義上メキシコでしか造れない
- テキーラの原料はアガベ・アスール(ブルーアガベ)
- アガベ・アスールは栽培が難しく、メキシコ以外ではほぼ栽培されていない
- さらに輸入も現実的にはないため、他国ではほぼ生産されていない
このように実はテキーラは、メキシコ固有とも言える特産物を使用して造られているのですね。
だから他の地域では生産が非常に難しいのです。
南アフリカの例はありますが、これだけ世界的に有名なお酒ながらも生産地域がごく一部に限られるのは、かなり稀と言っていいでしょう。
それではこの辺で。
以上「法律だけじゃない!テキーラがメキシコでしか造れない理由とは?」でした。
【参考文献】
テキーラ大鑑|廣済堂出版 著・林生馬