クラフトジンは今世界的なブームとなっており、ここ日本も例外ではありません。
最近では、日本産のクラフトジンがテレビでも紹介されるようになり、日に日に注目度を増しています。
その、日本のクラフトジンの中でも特に注目度が高い銘柄の一つが、京都蒸留所発の「季の美」です。
季の美は、日本らしさ、ひいては京都らしさが溢れる、これぞ和のクラフトジンといった銘柄。
本記事ではこの季の美について、先日参加した生産者のセミナーの内容を元に、特徴や味わい、他のクラフトジンとの違いなどを徹底的に解説していきます。
日本らしさを活かした「ジャパニーズクラフトジン」が活況
まずそもそもジンとは、ハーブや果皮、スパイスなどのいわゆる「ボタニカル」を使用した蒸留酒(スピリッツ)。
ベースとなるスピリッツ(ベーススピリッツ)に、ジュニパーベリーを筆頭としたボタニカルを5〜10種程度を加え、蒸留することでできています。
そしてクラフトジンとは、ジンのなかでも強いこだわりのもと造られる主に少量生産のジンで、例えば普通のジンとは少し製法を変えてみたり、あまり一般的ではないボタニカルを使用したりなど、とりわけ個性が強いのが特徴。
値段も普通のジンに比べて割高になるため、「プレミアムジン」などと呼ばれることもありますが、もちろんそれは味わいにも反映されています。
そして日本のメーカーが手がける、いわゆるジャパニーズクラフトジンは、日本の酒類製造の技術力の高さを活かしており、ボタニカルには日本らしさ溢れる和のボタニカルをふんだんに使用しているのが特徴です。
それは例えば、お茶の葉や山椒、そしてゆずなどを使用し、日本人の味覚にあったジンとなっているのです。
⇒ジャパニーズ・クラフトジンが今アツい!話題の4銘柄をご紹介
季の美を手がける京都蒸留所はジン専門の蒸留所
季の美を手がける「京都蒸留所」は2016年8月に操業開始したばかりの新しい蒸留所。
日本初となるジン専門の蒸留所であること、そして京都という土地であることから、国内外から注目を集めました。
ジンはそもそも、ウイスキーのように長期間の熟成を必要とせず、設備や諸経費なども抑えられることから、新生ウイスキー蒸留所がウイスキーを熟成させている間の利益獲得の手段として手がけていたり、巨大蒸留所などが片手間的に手がけることが多いお酒でもあります。
そのなかで「ジン専門」というのはとても珍しいのです。
そしてさらに興味深いのは、蒸留所に携わる人物。
京都蒸留所を管轄する株式会社ナンバーワンドリンクスの代表を務めるのは英国人であるデイビッド・クロール氏で、氏は有名酒類会社「ウィスク・イー」の代表でもあり日本在住歴が長い人物。
さらにヘッドディスティラーも英国人であるアレックス・デービス氏で、氏はイギリスの有名クラフトジン・コッツウォルズを手がけ、若くしてヘッドディスティラーを務めた人物。
ジンの本場イギリスのスペシャリストと、日本のスピリッツ業界のスペシャリストでもある大西正己氏や元木陽一氏といった、強力なタッグによって季の美は生み出されています。
季の美の特徴でもある、ボタニカルごとに原酒を造りわけ最後ブレンドさせるといった製法(後述)は、スペシャリストたちの高い技術力によって成し得ているのです。
季の美の特徴とは
京都発のジャパニーズクラフトジン「季の美」は個性に富み、他のジンにはない特徴を多く持ち合わせています。
なかでも特徴的なのは以下の3つ。
- ベーススピリッツにライススピリッツを使用していること。
- 京都産のボタニカルをふんだんに使用していること。
- ボタニカル別に蒸留し、ブレンドさせる。
これらの特徴によって季の美は特別なジンとなっているのです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ベーススピリッツにライススピリッツを使用
多くのジンでは、ベースとなるスピリッツにサトウキビの廃糖蜜などを原料としたスピリッツを使用しています。
しかし季の美では、お米だけを使用したライススピリッツを使用しています。
これはジンでは非常に稀なことで、日本だからこその手法と言えるかもしれません。
これによりお米独自の甘みや旨みを感じることができ、従来のジンとは異なる、優しい口当たりとなっています。
玉露やゆずなど、京都産のボタニカルをふんだんに使用
クラフトジンはボタニカルに特に力を入れることが多いですが、季の美も例外ではありません。
季の美はただ京都で造られているだけでなく、「京都であること」に強いこだわりがあります。
茶葉(玉露)、ゆず、山椒、ヒノキ、生姜、笹の葉、赤しそ、レモンといった日本産のボタニカルを使用し、これらのうちレモンを除いて全て京都で採れたものというこだわりぶり。(レモンは瀬戸内産)
これらを使用し出来上がった季の美からは、ゆずの華やかな香りや玉露の甘みなど、日本そして京都らしさを感じる複雑かつ奥行きのある味わいとなっています。
ジュニパーベリー、オリス、ヒノキ、玉露、ゆず、レモン、山椒、生姜、笹の葉、赤しそ、木の芽
※ボタニカルの特徴についてはこちらで解説しています。
⇒ジンによく使用されるボタニカル20種まとめ
ボタニカル別に蒸留、そしてブレンド
通常ジンは、使用する数種のボタニカルは全て混ぜて蒸留されます。
しかし季の美では、11種のボタニカルを特性ごとに6つのカテゴリーに分け、それぞれ別々に蒸留されています。
別々に蒸留させているゆえに、最後ブレンド、つまり混ぜるという工程が必要になります。
蒸留→ブレンド、という通常のジンにはない手間のかかる工程を経ることで、各ボタニカルの特徴がしっかり表れ、尚且つそれらが複層的に重なり合うことで複雑な味わいクラフトジンとなっているのです。
さらにブレンド後、アルコール度数調整のために用いる水は、名水と名高い「伏見の水」
程よくミネラルを含んだ軟水を使用することで、繊細でまろやかな風味がもたらされています。
以上の3つの特徴だけでも、いかに季の美が個性的で、日本的、ひいては京都的かがお分かりいただけたかと思います。
季の美の味わい、楽しみ方
最後に、季の美の味わいや飲み方について見ていきましょう。
季の美の香り・味わい
始めはゆずの香りが強いが、だんだんと玉露の上品な甘い香りや、山椒などの凜とした香りがあらわれる。複雑な香り。
【味わい】
まろやかでコク深く、甘みのあるジン。やがてジンらしいハーバルな風味があらわれ、生姜や山椒のスパイシーな風味が。
おすすめの飲み方
季の美は、一般的な大量生産系のジンとは異なり、そのまま飲んでも飲みやすく、かつ味わい深いため、ストレートやトワイスアップといったお酒そのものを味わう飲み方が、筆者としてはおすすめです。
またジンでは非常に珍しく、お湯わりに対応しているのも魅力です。ライススピリッツを使用し、日本のボタニカルを使用しているがゆえでしょう。
ロックやジントニックの場合、ガーニッシュ(フルーツなどの副材料)として季の美で実際に使用されているボタニカルを加えてみるのもおすすめです。(手軽なものでいえばレモンピール)
またジントニックの場合は、トニックウォーターにもこだわりたいもの。フィーバーツリーなどの本格的なトニックウォーターがおすすめです。
まとめ
本記事では徹底的に季の美の特徴やその独自性などについて解説してきました。
いかに季の美が個性的で日本的なクラフトジンかがお分かりいただけたと思います。
最後に季の美についてまとめると…
- 季の美は「京都であること」にこだわったクラフトジン
- 玉露やゆず、山椒、生姜など和のボタニカルを使用
- ボタニカルを別々に蒸留、その後ブレンド
- ゆずや茶の風味が効いたまろやかで甘みのある味わい
季の美は日本でもとても注目度が高く、新聞、テレビなどでも取り上げられるジャパニーズクラフトジンの代表銘柄。
まだ味わったことがないという方は、ぜひ一度味わってみてください。
それではこの辺で。
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