日本酒同様、焼酎においても「麹」は非常に重要なもの。
日本酒では「一麹、二酛、三造り」という言葉があるように、麹が一番重要とされていますが、焼酎においても麹は一番重要なものと考えられています。
その麹ですが、芋焼酎では「黒麹、白麹、黄麹」の3タイプの麹が使い分けされている、というのはご存知の方も多いでしょう。
これら3タイプは、タイプが異なるのですから、当然のように出来上がる焼酎のタイプの異なります。
それは例えば、「黒霧島(黒麹)」のように、銘柄名で表している銘柄もあるということからもお分かりいただけると思います。
そこで本記事では「黒麹、白麹、黄麹」について、ざっくりと理解していただくため、それぞれの特徴や出来上がる焼酎の味わいなどを簡単に解説していきます。
記事後半では、それぞれの麹を使用した焼酎銘柄もご紹介。
そもそも麹とは?どんなもので何のために使用する?
まず、そもそも麹がどんなものなのか分からない方もいるでしょうから、「麹とは?」の解説をしていきます。
ご存知の方は飛ばしてお読みください。
麹とは、良いカビ菌の一種で、酒造りにおいては、デンプンを糖化(糖分に変える)させる働きをします。
そもそも発酵には糖分が欠かせないのですが、焼酎の主原料である米や麦、芋には糖分がほぼなく、主成分はデンプンとなっています。
麹の働きでデンプンを糖分に変えることで、発酵できる状態にしているのです。
麹は、原料の米などに混ぜ合わせ、繁殖させることで糖化が促されます。(こうして出来るのがいわゆる「麹米」)
ちなみに主な洋酒では麹は使用せずに糖化させており、あえて麹を使用する日本のお酒は、世界的に見て非常に珍しいと言えるでしょう。
一般的に麹を使用することで、味わいに独自の旨味、コクが生まれるとされています。
黒麹・黄麹・白麹の特徴を比較
それではいよいよ黒麹、白麹、黄麹の解説をしていきましょう。
ちなみに芋焼酎においては黒麹か白麹のどちらかが使用されることが多く、これらが主流となっています。
黄麹は主に日本酒造りに使用されるもので、芋焼酎においては少数派です。
それではまず、黒麹から見ていきましょう。
黒麹の特徴
黒麹は泡盛造りには必ず使用される麹菌で、元々焼酎造りは全て黒麹で行われていたとされています。
麹菌の中でもとりわけ多くのクエン酸を生成するとされ、雑菌の繁殖を防ぐ力があります。
そのため、雑菌の繁殖しやすい高温多湿の南の地域で造られる焼酎造りおいては、欠かせないものと考えられてきました。
しかし、菌の色が黒っぽいため、仕込みの際に蔵がとても汚れるのが難点で、一時は白麹が主流に。
その後、焼酎造りの原点でもある黒麹の良さを見直す動きがあり、現在では多くの焼酎が黒麹を使用しています。
ガツンと濃く、重厚な味わいになる傾向があります。
また辛口になる傾向があり、これはクエン酸の酸味がもたらすものと思われます。
力強くキレがあるのが黒麹焼酎の傾向です。
白麹の特徴
白麹は、黒麹の突然変異によって生まれたもので、黒麹同様に多くのクエン酸を生成します。
そのため黒麹同様に南の地域にも強く、芋焼酎造りにおいてはこの白麹と黒麹が向いているとされています。
黒麹とは違い、汚れにくいこともあってか一時は白麹が主流に。
焼酎の味わいも黒麹のそれとは少々異なります。
ちなみに、白とありますが、実際の麹菌自体の色は黄緑色の近い色合いです。
黒麹に比べ、香り味ともに穏やかで、優しい口当たりになる傾向があります。
芋らしい甘みがありつつも、ややスッキリしています。
穏やかでマイルドが味わいが白麹焼酎の傾向です。
黄麹の特徴
黄麹は、日本酒造りに使用される麹菌で、雑菌に対する耐性が黒麹や白麹に比べ弱いため、南の地域での芋焼酎造りには向かないとされてきました。
しかし、技術の進歩により現在では使用できるように。
日本酒の吟醸香のような華やかな香りを生むのが特徴で、黒麹や白麹の芋焼酎とは違った味わいになる傾向があります。
ただし黄麹を使用する焼酎は少数派です。
華やかでフルーティーな香味があり、軽快な飲み口になる傾向があります。
黒麹とは正反対のような味わいで、良くも悪くも芋っぽさをあまり感じない華やかさがあります。
飲みやすい銘柄が多いため、芋焼酎が苦手な方や初心者の方には特におすすめです。
それぞれの麹を比較
麹のタイプ | 香り | 味わい |
黒麹 | 芋感が濃い | 重厚、キレ |
白麹 | 穏やかな芋の香り | ややあっさり |
黄麹 | 華やかでフルーティー | あっさりライト |
これを見ればわかるように、ざっくり言えば黒麹は飲みごたえがあり、黄麹は飲みやすさがある。そして白麹はその中間といったところです。
黒麹・黄麹・白麹、それぞれの麹を使用した焼酎銘柄
それぞれの麹の特徴が分かったところで、銘柄も知りたいところ。
それぞれの麹を使用した代表銘柄をいくつか見ていきましょう。
ちなみに銘柄名に色が付いている、またラベルの色で麹の種類を表しているものも多いので、ある程度の見分けやすさはあると思います。
例えば、黒霧島は黒麹し、霧島(白霧島)は白麹を使用しています。
黒麹の芋焼酎
【㐂六(きろく)】
【吉兆宝山】
【佐藤・黒】
他にも、村尾や伊佐美などの有名銘柄なども黒麹を使用しています。
白麹の芋焼酎
【川越】
【赤兎馬】
【杜氏潤平(とうじじゅんぺい)】
他にも、森伊蔵やなかむらなどの有名銘柄も白麹を使用しています。
黄麹の芋焼酎
【魔王】
【富乃宝山】
【海】
これら銘柄を見ても味わいの違いは顕著に出ており、例えば黒麹の銘柄がいわゆる「濃い、辛口」の銘柄が多いのに対し、黄麹の銘柄は飲みやすい芋焼酎の代表格が揃っています。
まとめ
ここまでそれぞれの麹の特徴や銘柄についてご紹介していきました。
麹の違いは味わいにはあまり違いはもたらさないとも言われることがありますが、それぞれの銘柄を見れば味わいに違いがあることがわかります。
最後にざっくりまとめると…
- 黒麹はクエン酸を多く生成し、ガツンと濃く辛口の芋焼酎に
- 白麹は黒麹とともに主流派で、穏やかでマイルドな芋焼酎に
- 少数派の黄麹は華やかでフルーティーで飲みやすい芋焼酎に
焼酎の銘柄選びの際は「麹のタイプから絞っていく」というのも有効な選び方かもしれませんね。
ぜひ次回芋焼酎を飲む際は、麹のタイプに着目して見てください。
それではこの辺で。
【主要参考文献】
焼酎の基本|エイ出版社
焼酎手帳|東京出版 監修・SSI