ジャパニーズウイスキーの定義とは?他国との違いを検証

世界から高評価を得ている日本のウイスキー。
ウイスキーの世界ではしばしばジャパニーズウイスキーと言われますが、当然ながら”ウイスキー”と名乗る以上”ウイスキー”の法定義を遵守して造られています。

本記事では、ここ日本における「ウイスキーの定義」について詳しく解説。
素晴らしい品質のウイスキーが多いだけに、さぞかし厳しい定義の上で成り立っているのかと思いきや、実は他国の定義と比べると意外とその定義は大雑把。
それでは見ていきましょう。

ジャパニーズウイスキーの定義

まず先に、お伝えしなければならないのが「ジャパニーズウイスキー」としての明確な定義はないということ。(例えば「和牛」のように名乗る上での規定はない)
つまり単純に、日本発のウイスキーが「ジャパニーズウイスキー」として見なされているということです。

では、日本でウイスキーと名乗るためにはどのような定義があるのか?
その定義は、日本の酒税法におけるウイスキー品目に基づいています。

ウイスキーの定義

  • 発芽させた穀類、水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの
  • 蒸留の留出時のアルコール分が95度未満であること
  • 上記の酒類にアルコール、スピリッツ、香辛料、色素または水を加えたもの
  • 原酒混和率が10%を超えること

参考:酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達|国税庁

以上を満たしたものがウイスキーに該当します。
わかりにくい部分もあると思うので、要点をまとめてわかりやすく解説していきましょう。

定義の要点をわかりやすく解説

上記の定義を簡潔にまとめると、「発芽させた穀物を糖化・発酵させ、それを95度以内に蒸留させたもの。規定の範囲内でカラメルなどを加えても良い」といったところ。

これだけ見ると分からないかもしれませんが、日本のウイスキーの定義は他国と比べてかなり大雑把で、いくつか重要な項目が抜けています。

その項目をあげると…

  • 樽熟成に関する規定が一切ない
  • 瓶詰めアルコール度数に関する規定がない
  • 生産場所に関する規定がない

白州蒸留所の熟成庫

まず、ウイスキーをウイスキーたるものにしている樽熟成に関する規定がないのは少々驚きです。
極端な話、樽で熟成せずともウイスキーを名乗ることができてしまいます。
それから瓶詰め度数に関しても、多くの国では40度以上と定められていますが、日本にはその規定はありません。
ただしいずれにしても、主要国産ウイスキーはほぼ全て樽熟成されている上、度数は40度か43度、もしくはそれ以上となっています。

このように、定義が大雑把であるのは、酒税法は課税を目的とするためのものであるため、具体的な製法を問わないものだからだとされています。生産場所に関する規定がないのもそのため。
生産場所に関する規定がないとはいえ、日本で造られたウイスキーをジャパニーズウイスキーとする見方が一般的です。

他国産ウイスキーとの違いは?

それでは次に各国のウイスキーの定義との違いを見てみましょう。
比較対象は、日本を除く世界五大ウイスキーの国であるスコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ。

樽熟成について

樽熟成に関しては多くの国で詳しい規定があります。
スコットランドやカナダ、アイルランドではオーク樽で3年以上熟成させなければなりません。
アメリカでは樽熟成さえすれば期間は問われませんが、例えばバーボンウイスキーでは”内側を焦がした新樽を使用する”など、他にも4年以上熟成させれば優遇されるなど独自の規定があります。
日本ではそもそも樽熟成は必須ではありません。

瓶詰め度数について

スコットランド、アメリカ、カナダでは瓶詰め度数は40度以上と定義されています。
アイルランドは日本と同じように瓶詰め度数の規定はありません。

生産場所について

スコットランド、アイルランド、カナダでは蒸留もしくは熟成(もしくは両方)を国内で行うと定義されています。
アメリカではテネシーウイスキーを除いては生産場所に関する規定はありません。
日本も生産場所に関する規定はありません。

このように、他国と比べるとジャパニーズウイスキーの定義はかなり”ゆるい”印象を受けますが、前述のように日本ではあくまで税法上の定めであるため、例えばウイスキー専用の法律があるスコットランドやアイルランドなどと比べると具体性がないのはある種仕方がないのです。
しかも実際は、樽熟成され他国のウイスキーと変わらぬ造りをしているものが多いため、必ずしも「定義がゆるい=悪い」というわけでもありません。

まとめ 〜 法定義が品質を左右するわけではない

ここまで日本のウイスキーの定義について解説してきました。

最後にざっくりまとめると…

  • 日本のウイスキーの定義では樽熟成、瓶詰め度数、生産場所に関する規定がない
  • あくまで課税を目的とする酒税法の範疇であるため具体的な製法が規定されていない
  • とはいえ国際的な”ウイスキーの定義”は満たして造られている

はっきり言ってザル法の上に成り立つ日本のウイスキーですが、決して低い基準で生産しているわけではなく、実際のところ、その多くはしっかりと世界基準で造られています
それに加えて日本独自の生産体系も関係して、世界から賞賛されるウイスキーを世に送り出せているのです。
その、日本のウイスキーの強みの部分についてはこちらの記事【ジャパニーズウイスキーの特徴、そして強みとは?】で詳しく解説します。

それではこの辺で。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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