近年のウイスキーブームによって、日本でもアメリカのバーボンウイスキーの人気が高まってきています。
人気銘柄ジムビームがテレビCMに力を入れるなど、より一般的に認知されつつありますね。
しかしまだまだスコッチやジャパニーズウイスキーに比べ情報量が少なく、分からないことが多い分野でもあります。
そこで本記事では、バーボンにまつわる疑問としてよく挙がる「熟成年数の表記」について、それから「バーボンの熟成スピード」について簡単に解説していきます。
「バーボンは熟成年数の表記がないものが多いって本当?」
「バーボンは他のウイスキーより熟成が早く進む?」
本記事によってこれらの謎が解けます。
それでは見てきましょう。
バーボンは他のウイスキーが早く熟成が進み、熟成年数の表記がない銘柄が多い
まず先に結論から入りましょう。
たしかにバーボンは、スコッチや日本のウイスキーなどより熟成が早く進みます。
そのため熟成年数は、表記があったとしても8年前後のものが多く、そもそも年数表記がないバーボンがほとんどです。
例えば、日本でも有名なバーボンであるジムビームやメーカーズマーク、フォアローゼズの主要商品は年数表記がありません。
ワイルドターキーは年数表記があるものが多いですが、定番商品は8年と表記されたものです。
かたやスコッチはどうでしょうか?
マッカランの定番商品は12年と表記されています。グレンリベットも12年です。
人気のブレンデッド・スコッチであるジョニーウォーカー・ブラックもラベルにはしっかり12年と表記されています。
年数表記があるうえ、バーボンのそれより熟成年数が長いですよね。
これは実はバーボンの樽熟成の熟成スピードの早さが関係しています。
以下で詳しく見ていきましょう。
こちらはバーボンの事情とは全く異なり、詳しくはこちらの記事で解説しています。
なぜバーボンは他のウイスキーより熟成が早く進むのか?
そもそもバーボンは、アメリカで作られるアメリカンウイスキーの一種で、トウモロコシを主原料(51%以上)とし、内側を焦がした新しい樽で熟成させなければならないという決まりがあります。
そしてそのほとんどがケンタッキー州で作られています。
実はこれらがバーボンの熟成スピードに大きく関係しています。
小分けして見ていきましょう。
By Bbadgett – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
内側を焦がした新樽だから熟成が早く進む
全部新しい樽を使うんじゃないの?と思うかもしれませんが、世界の多くのウイスキーは何らかのお酒を熟成させた後の「中古の樽」を熟成に使用しています。
対してバーボンでは新しい樽で、なおかつ内側を火で焦がしたものを使用しなくてはなりません。
中古樽と新樽では、熟成スピードに明確な差が生まれ、新樽の方が早く熟成が進みます。
なぜかというと中古樽と新樽とでは、熟成中にウイスキーに溶け出す樽の木の成分の量が違うから。
中古樽はすでに熟成に使用されたものですから、ウイスキーに溶け出す樽の成分量が少なくなり、熟成はゆっくりと進みます。
対して新樽は当然溶け出す成分量が多くなり、これにより熟成が早く進みます。
これを別のもので例えると、設立間もないイケイケなベンチャー企業(新樽)で働くのと、安定した大企業(中古樽)では働くのでは成長スピードが異なると思います。
これと同じようなことですね。
もちろんどちらが良いというわけではなく、それぞれ一長一短です。
バーボンの主産地ケンタッキー州の気温が関係している?
バーボンは95%近くがケンタッキー州で作られていると言われています。
実はこのケンタッキー州の気温も熟成スピードの早さに関係しています。
ケンタッキー州はアメリカの中部に位置しており、年間を通しての気温差がとても大きい地域です。
夏場の平均気温は31℃と暖かく、逆い冬場は-5℃まで冷え込むとされています。
このように気温差が大きいとウイスキーの熟成は早まります。
例えば野菜なども気温差がある方がよく育ちます。
それと同じようにウイスキーも気温差があった方がよりダイナミックに熟成していくのです。
ちなみに他のウイスキーは比較的冷涼な地域で作られることが多く、例えばスコッチの産地スコットランドでは、夏場でも平均最高気温が18℃前後で冬は最低気温でも1℃前後と気温差も大きくありません。
熟成年数の表記がないバーボンが多いワケ
熟成が早く進むワケについてはお分かりいただけたところで、次は「熟成年数の表記がないバーボンが多いワケ」について解説します。
実は熟成年数の表記がない理由と前述した熟成スピードの早さは関係があります。
バーボンは定義上、熟成年数4年未満の銘柄に限り、ラベルに熟成年数を表記しなければいけません。
逆に言えば、4年以上熟成させれば熟成年数の表記は自由になります。
そのため多くのバーボンが4年以上熟成させ、表記こそありませんが定番商品は概ね4〜8年といったところでしょうか。
ではそれでなぜあえて熟成年数を表記しないのか?
それは他の国のウイスキーと比べたとき、熟成スピードが早く熟成年数が短いバーボンの方が、消費者にどうしても若く見られてしまい、場合によっては質が低いとすら見られてしまうからです。
熟成スピードが早いことは生産者としてはメリットではありますが、「熟成年数」という数字上は12年物がほぼ定番であるスコッチや他の国のウイスキーと比べると不利なのですね。
これは良くないということで、バーボンでは熟成年数を表記しないことが慣習となったとされています。
いくらバーボンの4年とスコッチの12年の熟成度合いはほぼ同じと言われても、やはり見栄えはよくありませんからね。
まとめ
ここまでバーボンの熟成速度・年数とその表記についてお送りしていきました。
最後にまとめると…
これによって熟成年数という数字上はスコッチなどより見劣りするため、熟成年数の表記をしないのが一般的に。
だから年数表記のないバーボンが多い。
ちなみに、前述のように近年スコッチやジャパニーズウイスキーでも年数表記のないウイスキーが増えてきました。
さらに熟成に使用する樽の研究も進み、熟成年数が短くても質の良いウイスキーを作ることが可能になってきているのだとか。
もしかしたら近い将来「ウイスキーの価値を熟成年数で計るのは過去の話」になっているのかもしれませんね。
それではこの辺で。
以上「早く熟成する?バーボンの熟成年数と年数表記の謎を簡単解説」でした。
【参考文献】
ウイスキーガロア VOL.03|ウイスキー文化研究所
ウイスキーコニサー資格認定試験教本|ウイスキー文化研究所