アイリッシュウイスキーが今アツい!定義や特徴、銘柄をおさらい

アイリッシュウイスキーの定義・特徴・銘柄まとめ

世界五大ウイスキーの一つであるアイリッシュウイスキー。
ウイスキー発祥の地とも言われ、歴史が長いアイルランドのウイスキーですが、スコッチやバーボン、そして近年はジャパニーズウイスキーの台頭もあり、長い間衰退傾向にありました。

しかし、今アイリッシュウイスキーが見事な復活を遂げ、流行しつつあるのです。

本記事では、まさに今アツいアイリッシュウイスキーについて、その定義や特徴などをおさらいし、今一度アイリッシュウイスキーの魅力についてを解説していきます。
記事後半では代表銘柄もいくつかご紹介。

それでは見ていきましょう。

アイリッシュウイスキーが復活!そして流行の兆し

旧ジェムソン蒸留所

旧ジェムソン蒸留所。今は博物館となっている

前述のように長い間衰退傾向にあったアイリッシュウイスキー。
日本においても見かける銘柄は限られており、その存在感はイマイチでした。

それもそのはずで、数年前までは五大ウイスキーの一つに挙げられるものの蒸留所の数は4つしかありませんでした。(ミドルトン蒸留所、ブッシュミルズ蒸留所、クーリー蒸留所、キルベガン蒸留所)
ウイスキー発祥の地とも言われている(諸説あり)にもかかわらず、20世紀初頭から内戦やイギリスからの独立など政治的な背景もあり、蒸留所の数が減り衰退してしまったのです。

しかし近年、世界的なウイスキーブームも相まって、アイリッシュウイスキーに再び注目が浴びるように。
それは数字にも顕著に表れており、ここ3〜4年の間に新しい蒸留所が次々と誕生し、今では40もの数に。(計画中のものも含む)
4つしかなかった蒸留所が40ヶ所に増えたのですから、単純に10倍の数になったということになります。

このアイリッシュウイスキーの復活、そして大注目を浴びる現状については「アイリッシュ・ルネッサンス」とも言われるほどです。

アイリッシュウイスキーの定義と特徴

アイリッシュウイスキーが再び注目を浴びるようになったのには、「シングルポットスチルウイスキー」を筆頭としたアイリッシュ独特の特徴が関係しています。
まずは定義をおさらいし、その特徴について見ていきましょう。

アイルランドと北アイルランドのマップ

アイリッシュウイスキーはアイルランドと北アイルランドの二カ国で造られる

By The original uploader was Jonto at English WikipediaCC BY-SA 3.0, Link

アイリッシュウイスキーの定義

アイリッシュウイスキーは、アイルランドと北アイルランド(イギリス領)で造られるウイスキーの総称。
その定義は以下のとおりです。

  • 穀物類を原料とする
  • 麦芽の酵素にて糖化、酵母の働きで発酵
  • 蒸留液はアルコール度数94.8%以下に抑える
  • 木樽で3年以上熟成させる
  • アイルランド、もしくは北アイルランドの倉庫にて熟成を行う

アイリッシュウイスキーの特徴

アイリッシュウイスキーには、シングルモルトやブレンデッドウイスキーといった代表的なウイスキーのタイプ以外にも、シングルポットスチルウイスキーなどといった独自のものがあります。
また、単式蒸留の際には3回行うといった特徴もあります。

シングルポットスチルウイスキーの特徴
原料:大麦麦芽(モルト)30%以上、未発芽の大麦30%以上、他ライ麦や小麦など
蒸留:単式蒸留器(ポットスチル)で3回
特徴:オイリーで穀物感の強い味わい

シングルモルト(モルトウイスキー)の特徴
原料:大麦麦芽(モルト)のみ
蒸留:単式蒸留器で3回(2回の場合も)
特徴:蒸留が3回なので、スコッチに比べライトな酒質

グレーンウイスキーの特徴
原料:とうもろこし、大麦などの穀物類
蒸留:連続式蒸留機

ブレンデッドウイスキーの特徴
シングルポットスチルやシングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドしたもの

スコッチウイスキーとの違い

  • 単式蒸留は3回行うのが基本
  • ポットスチルウイスキーには未発芽麦芽も使用
  • ピートはほとんど使用しない

シングルポットスチルウイスキーは独自のもので、未発芽の大麦なども使用することで、スコッチなどよりオイリーで穀物感の強い味わいとなります。
ただし、シングルモルトにも共通していますが、蒸留(単式蒸留)は3回が基本なので、スコッチのそれと比べるとライトで軽快な味わいとなります。

他にも、基本的にはピートを使用しないといった違いもあり、これもアイリッシュウイスキーがライトで飲みやすいと言われる所以でもあります。

ピートについてはこちらで解説しています。
ウイスキーでよく聞く「ピート」の正体とは?意味と役割を解説

アイリッシュウイスキーの代表銘柄

アイリッシュウイスキーの定義や特徴について理解できたところで、次に代表的な銘柄をご紹介していきます。

ブッシュミルズ

蒸留所:ブッシュミルズ蒸留所
タイプ:シングルモルトもしくはブレンデッド

ブッシュミルズは、ジェムソンと並ぶアイリッシュウイスキーの代表銘柄。
シングルモルトは伝統的な3回蒸留を行なっており、シングルモルトと全く同じ銘柄名でブレンデッドも展開しています。

ジェムソン

蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:ブレンデッド

ジェムソンは世界で最も売れているアイリッシュウイスキー(2015年データ、Euromonitorより)
全てがブレンデッドウイスキーとなっており、軽く飲みやすいのが特徴ですが、これといって「アイリッシュらしさ」があるわけではありません。

ウイスキーの世界売り上げランキングはこちらでご紹介しています。
ウイスキー世界売り上げランキングTOP20

タラモアデュー

蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:ブレンデッド

タラモアデューはジェムソンに次いで世界で売れているアイリッシュウイスキー。
現行品はミドルトン蒸留所ですが、2014年に新生タラモア蒸留所を新設したため、今後同蒸留所のウイスキーに切り替わっていくと見られます。
ジェムソン同様全てブレンデッドとなっています。

グリーンスポット

蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:シングルポットスチル

グリーンスポットは、ミドルトン蒸留所で造られるシングルポットスチルウイスキー。
伝統的なシングルポットスチルの特徴を持つ10年もののウイスキーで、他にも12年熟成の「イエロースポット」というシングルポットスチルがあります。

レッドブレスト

蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:シングルポットスチル

レッドブレストは昔から残る代表的なシングルポットスチルウイスキー。
伝統的な手法はもとより、評価が高く、アイリッシュらしさを知るうえではふさわしい銘柄です。

カネマラ

蒸留所:クーリー蒸留所
タイプ:シングルモルト

カネマラは、クーリー蒸留所で造られるシングルモルトで、ピートを多く使用し、さらに2回蒸留というアイリッシュウイスキーでは非常に珍しい造りをしています。
アイリッシュらしさという点では微妙ですが、近年様々なコンクールで受賞歴があるなど、評価が高く、アイリッシュウイスキー復活を先導する銘柄の一つです。

まとめ

アイリッシュウイスキーの復活は、ウイスキーのブームが世界的に根強いことを表している事象でもあります。
蒸留所の増数だけで見ればスコッチよりアイリッシュの方が上回るなど、熱狂度でいえばアイリッシュの方がすさまじく、今後大注目と言えるでしょう。

最後にまとめると…

  • アイリッシュウイスキーは長く衰退していたがウイスキーブームの影響もあり復活
  • シングルポットスチルウイスキーなど独自のタイプがある
  • シングルポットスチルは未発芽大麦なども使用
  • さらに蒸留は単式蒸留で3回(シングルモルトも)
  • 基本的にピートは使用しない
  • スコッチよりもライトな味わいになる傾向がある

スコッチとはまた違った特徴を持ち、また、本記事では触れていませんが、クラフト蒸留所の動きが活発になっているなど、明るい話題が多いアイリッシュウイスキー。
ぜひ色々な銘柄を味わってみてください。

それではこの辺で。
以上「アイリッシュウイスキーが今アツい!定義や特徴、銘柄をおさらい」でした。

【参考文献】
改訂世界ウイスキー大図鑑|柴田書店 監修・チャールズ・マクリーン
ウイスキー完全バイブル|ナツメ社 監修・土屋守
世界の名酒事典2017年版|講談社

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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