お酒は楽しいものですが、是が非でも避けたいのが二日酔い。
約半数の人があまり飲めない、もしくは全く飲めないとされる我々日本人は特に、二日酔いに悩まされることが多いでしょう。
(なんと23%の人は二日酔いに抵抗性を持つとされている!※「酒の科学(記事下部に記載)」より)
二日酔いを防ぐには、まず原因を知っておかないことには対策のしようがありません。
二日酔いの原因といえば、おそらく最も言われているのが、アルコール分解における副産物であり、毒性の物質「アセトアルデヒド」が悪さをしているというもの。
要するに肝臓でうまく分解しきれず、それが原因で二日酔いになっているという主張ですが、実はこれは“正しいものではない”かもしれません。
本記事では、二日酔いと肝臓・アセトアルデヒドの関連性について、関連文献(記事下部に記載)をもとに探っていきます。
何が原因で二日酔いがおきているのか、実は未だわかっていない…
「酒の科学|白揚社 著アダム・ロジャース」では、二日酔いが与える悪影響について、面白いデータを記述しています。
アメリカ政府が算出した、二日酔いによって損なわれた生産性を集計し金額に置き換えたもので、それによればアメリカ国内における経済的損失額はなんと年間1600億ドル。(日本円で約13兆円)
一個人どころか、国家にまで大きなダメージを与えている二日酔い。(深酒が大好きな日本人だともっと影響は大きいかもしれない…)
それだけ大きな影響を与えているものなら、さぞかし研究も進んでいるのだろうと思うところ。
しかしながら、実は二日酔いの原因については驚くほど解明されていません。
二日酔いに関する論文を多数発表しているジョナサン・ハウランドの言葉を借りれば
「何が二日酔いを起こすのか誰も知らない」
のです。
厚生労働省が管轄する医療サイト「e-ヘルスネット」でも、
誰もが知っているあのつらい症状が何故起きるのかについては驚くほど解明されていません。
二日酔いのメカニズム|e-ヘルスネット[厚生労働省]より
と、見解が一致しており、原因はコレと断定できる段階ではないのは確かなようです。
二日酔いの震源地は肝臓にあらず?アセトアルデヒドと二日酔いは相関しない?
ということは、最もよく語られる「肝臓のアルコール分解と副産物アセトアルデヒド説」も関連性が証明されていないのでしょうか?
実はこの説については、関連性どころか、非関連性がデータとして出ています。
アルコールは胃や小腸から吸収され、肝臓に到達し分解が始まります。
アルコール(エタノール)は、肝臓にてまずアセトアルデヒドに分解され、その後無害の酢酸に分解されます。
しかし、このアセトアルデヒドがかなり厄介な毒性物質で、これを分解しきれず、翌日まで持ち越してしまうことで二日酔いになる、という説が有力だとされてきたのです。
たしかにアセトアルデヒドがもたらす症状の多くは、二日酔いのあの忌々しい症状と一致しており、有力とするのも無理はありません。
しかし実は、オランダの研究者ヨリス・ファースターらの研究によれば、二日酔いの時、アセトアルデヒドの数値は低いことが分かっているのです。
要するにアセトアルデヒドと二日酔いの度合いは相関しないということ。
さらに厚生労働省のe-ヘルスネットでも、
血中アセトアルデヒドが二日酔いに関係していることを示すデータは驚くほどありません。事実二日酔い状態にあっても、血中にアセトアルデヒドが検出されることは稀です。
二日酔いのメカニズム|e-ヘルスネット[厚生労働省]より
と、アセトアルデヒドと二日酔いの関連性に懐疑的な見方をしています。
二日酔いはあらゆる説が複雑に絡み合って起きている
では、肝臓が分解しきれなかったアセトアルデヒドが二日酔いを起こしているという説は、全くもってのデタラメなのかというと、そうは言い切れません。
なにせ二日酔いの研究は進んでおらず、原因がはっきりわかっていないのですから、完全には否定できないでしょう。
もしかするとアセトアルデヒドそのものというより、後遺症が関係しているのかもしれません。
現状二日酔いについて、最もらしい説明をするなら「これまで挙げられている説(脱水や低血糖など)と未だ明かされていない要因が複雑に絡みあって二日酔いになる」とすることでしょう。
ただし、二日酔いになってから、アセトアルデヒドの分解を促すような肝機能系のサプリを飲んでもあまり効果は望めないかもしれません。
二日酔いの時にはもう、アセトアルデヒドの数値は低いのですから。