日本酒のラベルを見ると銘柄名や「純米」や「吟醸」といったグレードだけでなく、様々な専門用語が記されています。
「ひやおろし」や「火入れ」「斗瓶囲い」に「無濾過生原酒」など…
そのバリュエーションの多さに銘柄選びの際に難しさを感じるかもしれません。
そこで本記事では、これらの日本酒のラベル用語を全20個ピックアップし、その意味を簡単に解説していきます。
※あいうえお順で記しています。
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日本酒ラベル用語集
用語の並び順は関連性などではなく、単純にあいうえお順となっています。
あらばしり
日本酒を作る際、モロミを搾って最初に出てくる液体を「あらばしり」と呼ぶ。
香りが強く、やや荒っぽさが残すフレッシュな味わい。
おりがらみ / にごり酒
モロミを搾った際のタンクに沈殿している滓(オリ、白い沈殿物)を混ぜて商品化したもの。
そのため白く濁った日本酒となる。
タイプにより様々だが、フレッシュで甘みを感じるものが多い。
活性清酒 / 発泡性清酒
炭酸入りの日本酒。
発酵の際に発生する炭酸ガスを瓶詰めしたもの、後から炭酸ガスを注入するものがある。
前者の場合、瓶詰め後も発酵させているため白く濁ったものが多い。(開栓の際は注意)
一般的に低アルコールのものが多く、フレッシュな甘みを感じるものが多い。
生一本
単一の製造場だけで造られた「純米酒」のこと。
貴醸酒
仕込み水の代わりに一部を日本酒で仕込んだ特殊な酒。
非常の濃厚な甘みな味わいで、やや琥珀色をしている。
生酛(きもと)
日本酒の酒母の造り方には「速醸系」と「生酛系」がある。
前者が乳酸を添加して効率的に早く造るのに対し、生酛系では自然発生する乳酸菌によって造る。
非常に手間がかかる製法のため、現在行っている蔵はごくわずか。
一般的にコク深い味わいとなり、燗酒などに向くとされる。
福島の「大七」などが有名。
原酒
日本酒は通常、モロミを搾った後に加水して風味やアルコールを調整するが、これを行わないものが原酒。
そのため20度前後のものが多く、濃厚で深い味わいとなる。
近年人気を高めつつある。
古酒
製造後、1年以上熟成させてから出荷するものを古酒と呼ぶ。
なかには3〜5年など長期間熟成させるものもあり、これらは非常に高価になる。
やや琥珀色に色付いたものが多く、熟成を感じさせる複雑で深い味わいになる。
しぼりたて
出来上がったばかりの日本酒をしぼりたて、または単純に「新酒」と呼ぶ。
新酒ならではの新鮮な風味が特徴。
樽酒
主に杉の樽で貯蔵され、杉の香りをつけたもの。
現在では鏡開きなどお祝いの席で用いられることが多い。
なお販売時点で樽に収容されているかは問わない。
袋吊り / 袋取り / 斗瓶囲い(とびんかこい)
モロミを搾る際、通常は専用の器具で圧力を加えて搾るが、そうではなくモロミの入った木綿の袋を上から吊るし、無加圧で自然の力だけで搾ることを「袋吊り(袋取り)」と呼ぶ。(搾るというより滴り落ちるのを待つイメージ)
搾った酒は斗瓶と呼ばれる18Lの容器に集められ、一定期間保存し、オリ引き、熟成させる。この作業を「斗瓶囲い」と呼ぶ。
最高級の日本酒に用いられる製法。
雫酒 / 斗瓶囲い
上記の袋吊り、斗瓶囲いを経て造られた日本酒を「雫酒」または「斗瓶囲い」と呼ぶ。
非常に華やかな香り、新鮮で完熟したフルーツのようなエレガントな味わいとなる。
極端に数が少なく、非常に高価となる。
中取り / 中汲み / 中垂れ
モロミを搾る校庭にて液体の出てくる順に「あら・中・せめ」に分けられる。
最初に出てきたあらの部分の酒を「あらばしり」と呼ぶのに対し、なかの部分の酒を「中取り(中汲み、中垂れ)と呼ぶ。
最も酒質が安定している部分で、味香りともに安定感がある。
生酒
通常2回に及ぶ「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌を一切しない日本酒。
最も造りたての香味を楽しめるタイプで、フレッシュでやや甘酸っぱいものが多い。
輸送や保管には必ず冷蔵保存が求められるデリケートな酒でもある。
⇒日本酒の「生酒」「生詰め」「生貯蔵」の違いは何?
生詰
通常2回の火入れを1回しか行わない酒。モロミを搾ったあとの火入れを行い、瓶詰め後の火入れは行わない。
生酒ほどではないが鮮度があり、フレッシュな風味が特徴。
「火入れ」「一回火入れ」などと記されているものも、この生詰にあたる。
生貯蔵
通常2回の火入れを1回しか行わない酒。モロミを搾ったあとの火入れは行わず、出荷前に火入れされる。
一般的に軽い酒質で、フレッシュな風味を持つことが特徴。
ひやおろし
生詰の一種で、生詰同様に搾った直後の火入れのみを行い、その後春〜夏の期間熟成させ、秋に出荷される。(出荷前の火入れは行わない)
一夏の熟成によって適度な熟成感があり、コクがあるのが特徴。
名前にひやとつくが、熱燗など燗酒にも向くとされる。
復古酒
各地方に伝わる昔の製法や、文献などに記されている製法を再現し造られた日本酒。
タイプにもよるが非常に濃厚な甘みを持つものが目立つ。
無濾過
瓶詰め前の濾過を行わない日本酒。
これにより本来持つ香味成分が保たれるため、フレッシュで香り高く濃厚でややパンチのある味わいとなる。やや黄色がかった色も特徴。
無濾過のものは「生酒」であり「原酒」であることがほとんど。
「無濾過生原酒」は一時期ブームとなったが、今もなお人気が高いタイプ。
山廃仕込み(やまはい)
生酛造りにおける山卸しという作業を省略したもので、山卸しを廃止したものなので「山廃」となる。よって生酛にやや似たタイプとなる。
一般的にコク深い味わいとなり、燗酒などに向くとされる。
石川の「天狗舞」などが有名。
まとめ
本記事で記されているラベル用語だけでも20あります。
このように一言に日本酒といっても、実に多種多様なタイプがあることがわかりますね。
これらを全部を覚えることは難しいかもしれないですが、色々なタイプを試していくことで自分の好みがわかり、日本酒がより面白くなっていくかもしれませんね。
以上、ご参考になれば幸いです。
それではこの辺で。
【参考文献】
世界に誇る – 品格の名酒|ギャップ・ジャパン 著・友田晶子
日本酒の新しい選び方|日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合
日本酒の教科書|新星出版 著・木村克己