瓶内二次発酵 〜 シャンパンに泡が生まれるワケを簡単解説

シャンパン・泡が生まれるワケ

シャンパンといえば、お祝いの際にもよく飲まれるように、非日常を感じさせる「特別な」お酒でもあります。
これはきっと、シャンパン独特の繊細な泡による、見た目の美しさも関係していることでしょう。

さて、シャンパンといえばワインの一種ですが、同じ仲間であるワインには泡、つまり炭酸はありません。

なぜシャンパンには炭酸が含まれるのか?
どのようにして泡が生まれているのか?
これが今回のテーマ。

まず先に答えから言うと、シャンパンは「瓶内二次発酵」という独特の仕組みによって泡が生まれています。
何やら難しいそうなワードですが、この仕組みを用いることによって、シャンパンに炭酸が含まれ、繊細できめ細かな泡が生まれているのです。
本記事ではこの「瓶内二次発酵」という仕組みについて、簡単に解説していきます。

シャンパンは、普通のワインに「瓶内二次発酵」という一手間を加えたもの

瓶内二次発酵と言う独自の仕組みによって、泡が生まれているシャンパンですが、この仕組みを用いる前の段階では普通のワインと変わりません。
むしろ、炭酸のない普通のワイン(スティルワインという)とまったく同じもの。
この普通のワインに、瓶内二次発酵を用いることでシャンパンができているのです。

そもそも発酵とは?

瓶内二次発酵の仕組みを知るには、まず発酵について知っておけなければなりません。

発酵とは、酵母の働きによってアルコール生成(分解)すること。
原料に含まれる糖分が酵母のエサとなり、それが元になってアルコールを生み出しています。(つまり糖分→アルコールになる)
ただし、ここで重要なのが、酵母が生み出すのはアルコールだけではないこと。
実は酵母は、発酵によって二酸化炭素、つまり炭酸ガスも生み出しているのです。

赤ワインの発酵の様子。

赤ワインの発酵の様子。炭酸ガスによって泡が出ている

By Mark Smith – originally posted to Flickr as Stefano Lubiana Pinot Noir ferment vintage 2010, CC BY 2.0, Link

普通のワインも発酵させているのに、なぜ炭酸が含まれない?
そう思うかもしれませんが、ご存知のとおり、炭酸は密閉しなければ抜けていきます。
つまりワインは、発酵の時密閉状態ではないから炭酸が抜けているということです。

瓶内二次発酵の仕組み 〜 シャンパンに泡が生まれる瞬間

発酵について理解したうえで「瓶内二次発酵」というワードを見ると、なんとなくその仕組みがイメージできてくるかもしれません。
瓶内二次発酵とは、文字のとおり、瓶の中で2回目の発酵をさせるというもの。

瓶の中という密閉空間で発酵させるわけですから、生み出された炭酸の逃げ場がなく、そのまま残るのです。

瓶内二次発酵の方法

瓶に詰めたワインを放置していたら勝手に二次発酵が進むわけではありません。
意図的に発酵させる必要があります。

発酵に必要なのは酵母と、そのエサとなる糖分。
つまり、瓶詰めしたワイン一本一本に糖分と酵母を加えることで発酵を促すのです。

こうすることで発酵が進み、瓶内という密閉空間で炭酸が生み出されることで、泡のワイン、シャンパンが出来上がります。

瓶内二次発酵の様子

瓶内二次発酵の様子

一般的に、瓶内二次発酵で生まれる泡は、通常の炭酸の泡よりきめ細かくなります。
シャンパン独特の繊細で美しい泡は、この手間のかかる製法による賜物なのです。

泡のワイン全てがシャンパンではない
炭酸ありのワインの総称はスパークリングワイン。シャンパンはその一種に過ぎません。
シャンパンを名乗るにはフランス・シャンパーニュ地方で造られ、なおかつ独自の厳しい規定を満たす必要があります。
なお、スパークリングワインの一部は、瓶内二次発酵ではない方法で炭酸を注入しています。

瓶内二次発酵は一部ビールや日本酒でも利用されている

シャンパンを造るには欠かせない瓶内二次発酵ですが、実は一部のビールや日本酒でも利用されています。

まずはビール
一般的なビールではこの製法は用いませんが、トラピストビールと呼ばれるものやベルギービールの一部では瓶内二次発酵を用いています。
当然ながら高価になりますが、シャンパンのような繊細な口当たりとなります。
なお、こうしたビールにおける瓶内二次発酵は、ボトルコンディションとも呼ばれます。

次に日本酒
日本酒にもスパークリングがあることで知られていますが、なかにはシャンパン同様に瓶内二次発酵を用いているものがあります。
活性にごりの日本酒や炭酸ガスを意図的に注入するスパークリング日本酒もありますが、瓶内二次発酵の日本酒は、シャンパンのようにきめ細かく美しい泡をもちます。

まとめ

ここまでシャンパンの泡が生まれる仕組みである、瓶内二次発酵について解説していきました。

最後にざっくりまとめると…

  • そもそも発酵によって炭酸は生まれるもの
  • 瓶内二次発酵とは瓶詰めワインに酵母と糖分を加え発酵させること
  • 密閉空間で炭酸の逃げ場がないことで泡のワインが生まれる
  • シャンパンのきめ細かい泡は瓶内二次発酵によるもの

瓶内二次発酵というワードだけ見ると、専門的で難しそうですが、発酵の仕組みを理解することで意外と単純と感じたかと思います。
この独自の製法以外にも、長期熟成など様々な手間がかけられるからこそ、シャンパンは高価で特別なお酒となっています。

これらを理解すると、今後シャンパンの味わい方が変わるかもしれません。
それではこの辺で。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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