昨今のウイスキーブームに伴い、シングルモルトの人気を高まり続けています。
「今までは角ハイばかりだったけどシングルモルトも飲んでみよう」そのような方も多いと思われます。
ただ、いざAmazonなどで「シングルモルト」と検索してみるとあまりの銘柄数の多さに驚くことでしょう。
これからシングルモルトを覚えようと思っている方にとって、この銘柄数の多さは少々やっかいなポイントでもあります。
そこで本記事ではシングルモルト入門編と称して、初心者の方がまずは味わっておきたいスコットランドの定番シングルモルト銘柄を8つピックアップ。
各銘柄の特徴や産地、味わいなど簡単にご紹介していきます。
※ランキングではありませんので紹介順は関係ありません。
1. ザ・マッカラン 12年
【産地:スペイサイド】
マッカランは日本でも超有名なシングルモルト。
イギリスの有名百貨店ハロッズが発行したウイスキーの書籍にて「シングルモルトのロールスロイス」と絶賛された銘柄で、これはマッカランを語る際の有名なキャッチコピーとなっています。
マッカランの特徴は、熟成の際にシェリー樽(※)の空き樽を使用していること。
実はバーボン以外のウイスキーでは熟成に使う樽は、新品のものでなく、何らかのお酒の熟成に使用した樽を再利用することがほとんどです。
スコッチの場合、多くがバーボンに使用した樽(バーボン樽)を再利用するのですが、マッカランでは熟成の全期間をバーボン樽より高価であるシェリー樽にて行います。
(シェリー樽を使用するシングルモルトは他にも多くありますが、全期間使用している銘柄は多くありません)
一般的にシェリー樽を使用することで濃厚でドライフルーツのような甘い風味、そしてスパイシーな風味が与えられるとされています。
全期間シェリー樽で熟成させるマッカランの風味もまさにこれで、深みのあるリッチな味わいとなっています。
シングルモルトにまだ飲みなれていない方からすると、濃厚な味わいであるため「飲みやすさ」という点での賛否は分かれそうですが、いずれにせよ一度は味わっておくべき銘柄です。
ちなみに「ファインオーク」というシリーズもあり、こちらはシェリー樽以外の樽も使用しており、通常シリーズに比べライトの飲み口なっています。
シェリーとはスペイン産の酒精強化ワインと呼ばれるお酒で、通常のワインにブランデーを添加することで保存性を高めたもの。
辛口タイプから極甘口タイプまであり、マッカランに使用されているのは甘口タイプ(オロロソという)の熟成に使用した樽。
バーボンに比べ空き樽の量が少ないため、シェリー樽は高価になっている。
マッカランの味わい
ドライフルーツの甘み、濃厚でスパイシー
2. グレンフィディック 12年
【産地:スペイサイド】
グレンフィデックは、世界的にはおそらくマッカランよりも有名なシングルモルト。
それもそのはずで、長年世界一の売り上げを誇ったシングルモルトだったのです。(2015年グレンリヴェットに僅差で抜かれ2位に)
つまり世界一愛されているシングルモルトとも言えるわけで、その人気の理由はズバリ飲みやすさ。(あと値段の安さ…)
「クセがないことがグレンフィデックの特徴」と言われることがあるように、軽快な飲み口で万人に受け入れられるような口当たりの良さがグレンフィディックの特徴です。
産地であるスペイサイドの特徴を表すような、華やかで程よい甘みもあり、初心者の方でも飲みやすいシングルモルトです。
グレンフィデックの味わい
洋梨のような爽やかな甘み、ライトな飲み心地
3. ザ・グレンリベット 12年
【産地:スペイサイド】
グレンリベットは、前述のように2015年にグレンフィディックを抜いて世界最も売れているシングルモルトとなった銘柄です。(※)
密造酒時代にいち早く政府の公認を得た蒸留所としても知られており、緑色のボトルがなんとも特徴的です。
グレンフィディック同様、シングルモルトの中ではクセが少なく、その飲みやすさが人気の理由と言えるでしょう。
グレンフィディックと似た程よい甘みがありますが、こちらはややボディがしっかりしていてバランスに優れた味わいとなっています。
マッカランとグレンフィディックの中間あたりの飲み心地です。
⇒ウイスキー世界売り上げランキングTOP20
グレンリベットの味わい
柑橘系のフルーティーな甘み、やや芳醇な味わいも
4. グレンモーレンジィ・オリジナル(10年)
【産地:ハイランド地方】
グレンモーレンジィは、ルイヴィトンの親会社「LVMH」が所有するシングルモルトで、同ブランドのようなラグジュアリーな出で立ちの銘柄です。
このシングルモルトが有名なのは樽熟成に関する高い技術力で、製造責任者であるビル・ラムズデン氏は「博士」とも呼ばれ業界ではかなりの有名人。
今でこそ「〇〇カスクフィニッシュ」(※)と謳う銘柄を多く見ますが、この製法を初めて導入したのがグレンモーレンジィです。
様々な樽を使用したシリーズがいくつもありますが、まずはスタンダードシリーズであるオリジナル(10年)から飲み始めることをおすすめします。
上記3銘柄とは少し違う、花のような華やかな甘い風味が特徴的な銘柄です。
より飲みやすさ(甘さ)を求めるなら、極甘口の高級白ワインの樽でフィニッシュさせているネクタードールというシリーズがあります。
これにより若干のその樽の風味がついたものとなる。
グレンモーレンジィの味わい
フローラルで華やかな甘み、なめらかでバランスが良い
5. グレンファークラス 10年
【産地:スペイサイド】
グレンファークラスは、本記事でご紹介する銘柄のなかでは知名度はそれほど高い銘柄ではありません。
なぜご紹介するかというと、筆者がまだシングルモルトを飲み始めたばかりの頃「これは飲みやすい」と感じたからです。
もう10年ほど前ですが、ブレンデッドばかり飲んでいた筆者にはシングルモルトの個性はややキツいと感じるものだったのです。しかしグレンファークラスはなぜかピタリとはまったのですね。(完全に個人の体験談ですが…)
そんなグレンファークラスですが、熟成にはシェリー樽も使用しており(他にバーボン樽も)、マッカラン同様ややボディがしっかりしつつも、それよりはやや軽めでソフトな飲み口となっています。
リンゴ、キャラメルのようなまろやかな甘みによって飲みやすさを感じます。
グレンファークラスの味わい
リンゴ、バニラ、キャラメルのようなまろやかな甘み
6. ハイランドパーク 12年
【産地:アイランズ】
ハイランドパークは、アイランズモルトの中でもタリスカーと並び日本でも有名かつ人気のシングルモルト。
オークニー諸島と言うかなり北に位置する場所で作られており、同蒸留所はつい最近まではスコットランド最北に位置していました。
島で作られるシングルモルトは、麦芽を乾燥させる際に使用するピートと呼ばれる炭の一種の風味が強く、ややスモーキーなフレーバーになることが多いです。
また海に近いことから潮っぽい風味も感じることもしばしば。
こちらのハイランドパークも甘みが主体ではありますが、焚き火のようなややスモーキーなフレーバー、それから多少の潮っぽさも感じる特徴的な味わいとなっています。
とはいえ全体的には飲みやすい味に仕上がっており、甘さ、しょっぱさ、スモーキーな風味を感じるシングルモルトです。
⇒ウイスキーでよくみる「ピート」とは一体何なのか?
ハイランドパークの味わい
オレンジマーマレードのような甘み、ややスモーキーで甘辛い
7. タリスカー 10年
【産地:アイランズ】
タリスカーは、ハイランドパーク同様有名なアイランズモルトで日本にもファンが多い銘柄。
スカイ島というスコットランドの観光名所でもある自然豊かな島で作られています。
スカイ島は海が荒れることでも有名な島で、このタリスカーもその海の荒っぽさを表現したようなシングルモルトです。
ハイランドパークよりもピートによるスモーキーフレーバーが強く、さらにシングルモルト随一のスパイシーな風味となっており「舌がピリピリする」「胡椒のような」などと例えられます。
このとりわけスパイシーな風味がファンが多い理由で、タリスカーに胡椒を加えてソーダで割る「スパイシーハイボール」も人気の楽しみ方。
正直なところ、シングルモルト初心者の方からすると少々キツく感じる方もいると思います。
ただ、なかには一発でハマる人もいるためピックアップしました。
タリスカーの味わい
スモーキーでスパイシー、海藻のような塩っぽさ、若干の甘み
8. ラフロイグ・セレクトカスク
【産地:アイラ島】
ラフロイグは、独特の風味が特徴的で日本にもファンが多い「アイラ島」で作られるシングルモルトです。
アイラモルトの独特の風味とは、ピートを大量に使用することによる超スモーキーなフレーバーに加え、消毒液のような薬品臭(ヨード香という)にあります。
こちらのラフロイグはそのアイラモルトの特徴がかなり顕著に出た銘柄で、昔の宣伝文は「愛せよ、さもなくば憎めよ」だったと言われるほど好き嫌いが分かれる味わいとなっています。(モルトウイスキー・コンパニオンより)
初めて味わう方は「なんじゃこりゃ」とネガティブに感じることが多いのですが、飲むにつれて不思議と好むようになり、だんだんとファンになっていきます。(筆者がまさに)
最初はかなりキツいと感じるかもしれませんが、シングルモルトの個性を知るうえでは適した銘柄ですので、一度味わっておくと良いでしょう。
ちなみに英国王室御用達のシングルモルトでもあります。
10年が看板商品ですがセレクトカスクの方が値段が安く、多少ですが飲みやすくなっているためこちらをピックアップしました。
ラフロイグの味わい
正露丸のような香り、海藻の塩っぽい風味、ややマイルドな甘みも
まとめ
ここまで8銘柄ご紹介してきました。
気になる銘柄は見つかりましたでしょうか?
最後の2銘柄は少々変化球でしたが(笑)、いずれの銘柄もおすすめであることは間違いありません。
さらにどの銘柄も有名なシングルモルトですので、飲めるお店も多いことでしょう。
これらを少しずつ試し味に慣れていくと、シングルモルトが楽しくなり、色々な銘柄を飲んでみたくなります。
そうして少しでも多くの方に、シングルモルトを好きになっていただければ嬉しいですね。
(沼にはまったかのようにどっぷりハマりウイスキー貧乏続出中の世界へようこそ!)
それではこの辺で。
以上「シングルモルト入門・初心者におすすめの定番モルト銘柄8選」でした。
【参考文献】
ウイスキー完全バイブル|ナツメ社
ウイスキーコニサー資格認定試験教本|ウイスキー文化研究所