シングルモルト入門〜「スペイサイドモルト」を簡単解説!

スペイサイドモルトを知る

シングルモルト・スコッチを見ていて「スペイサイドモルト」「アイラモルト」などの表記を見たことはないでしょうか?
これは産地となっているスコットランドの地域名を表し、これによってカテゴリーを分けたりしているのですが、シングルモルトを知る上では欠かせない知識です。
たかが産地かもしれませんが、この産地によってある程度傾向が出るので、ウイスキー選びにも役に立ちます。

そこでリカーページでは、スコットランドのシングルモルトの主要産地6つを、それぞれ産地ごとに記事にしてご紹介していきます。

  1. スペイサイド
  2. ハイランド
  3. ローランド
  4. キャンベルタウン
  5. アイラ
  6. アイランド

本記事ではスペイサイドについて、入門編としてウイスキー初心者の方でもわかりやすいよう簡単に解説していきます。
記事後半では、代表的なスペイサイドモルト銘柄を簡単にご紹介します。

スペイサイドモルトとは?

スコットランドの主要産地を示した地図
By Drawn by User:Briangotts as Image:Scotch regions.png and converted to SVG by w:User:Interiot,CC BY-SA 3.0, Link

スコットランドのスペイサイド(Speyside)という地域で作られるシングルモルト・ウイスキーをスペイサイドモルトと言います。
地理的には決して大きな地域ではありませんが、6つの産地の中で特にボリュームが大きな、メインとも言える産地で有名蒸留所が集中しています。
日本でも有名なマッカランやグレンフィディック、グレンリベットなど錚々たるシングルモルトが、このスペイサイドで作られています。

シングルモルト・スコッチの中では、華やかな香り・風味をもつ銘柄が多い傾向にあり、バランスに優れた名酒が揃っています。
そのため一般的には飲みやすく、ウイスキー初心者でも親しみやすい銘柄が多いのが特徴です。

傾向や特徴という面では、スペイサイドはアイラモルトと対極にあります。
しかし、どちらも世界中のモルトファンから愛される主要産地で、ともにブレンデッド・ウイスキーの原酒として欠かせないものです。

アイラモルトについてはこちらをご参考ください。
シングルモルト入門〜「アイラモルト」を簡単解説!

スペイサイドとはどんな地域?

スペイ川の様子
By Ameins – Eigene Aufnahme, CC 表示-継承 3.0, Link

スペイサイドは、スコットランドの北部、ハイランド地方の東側に位置しています。
元々はハイランド地方の一部に過ぎなかったのですが、現在はウイスキーの産地分けにおいては、スペイサイドとして独立して見るのが一般的です。
この地域にはスペイ川という大きな川があり、その流域の地域を指すことから「スペイサイド」と呼ばれています。

地域とはいうものの、正式なものではなく後付けで作られた地域であるため、実は境界線があいまいで必ずしも確定されているわけではないようです。

ちなみにスペイサイドは、モルトウイスキーの産地としてだけでなく、サーモンフィッシングのメッカとしても有名です。

スペイサイドモルトの味わい・特徴とは?

スペイサイドモルトは酒質がライトかヘビーかは銘柄によって異なるものの、全体的には華やかな香り、風味を持つ傾向があります。
華やかとは専門用語でよくエステル香と例えられます。
エステル香はとても複雑な香りで、リンゴや洋梨のようなフルーティーな香りや、時にセメダインのような香りとも例えられます。
他にもスペイサイドモルトには、花や蜂蜜のような甘い香りを伴うものなどがあります。

味わいは香りの印象のままで、甘くなめらかでリッチな銘柄が多いです。
ウイスキーに慣れていない方でも飲みやすいと感じる銘柄が多いため、スペイサイドモルトは初心者にもぴったりです。

次にスペイサイドで作られる銘柄について見ていきましょう。

代表的なスペイサイドモルト

スペイサイドにある有名な蒸留所とそこで作られるモルト銘柄について簡単にご紹介します。

マッカラン

日本でも有名で人気が高いのがマッカラン。
密造酒が横行していた時代に、政府公認第2号の蒸留所として1824年にスタートした由緒ただしき蒸留所です。
特徴を挙げるとすれば「スペイサイドで最小の蒸留器」「シェリー樽熟成」の2点で、前者はマッカランになめらかでクリーミーな口当たりを与え、後者はフルーティーかつスパイシーな風味をもたらしています。
世界的に評価が高く「シングルモルトのロールスロイス」と絶賛されるほどです。

グレンフィディック

グレンフィディックは直訳すると「鹿の谷」という意味で、そのネーミングのとおりラベルには鹿が描かれています。
1886年の蒸留所オープン以来、蒸留から瓶詰めまでを行っており(瓶詰めは外注する所が多い)、これによって一貫した品質管理を実現しています。
酒質がライトでほんのり甘く、個性際立つシングルモルトが多い中、際立つ個性がないことがグレンフィディックの最大の個性とも言われています。
世界的に人気のシングルモルトで、しばらくの間世界一飲まれているシングルモルト・ウイスキーとして君臨していました。(現在は2位、データ元はEuromonitor)

詳しくはこちらの記事をご参考ください。
ウイスキー世界売り上げランキングTOP20

グレンリベット

上記2銘柄と同様に日本でも有名なのがこのグレンリベット。
グレンリベット蒸留所は、1824年に政府公認蒸留所のライセンスをいち早く取得した蒸留所でもあります。
麦芽の香ばしさと蜂蜜のような風味でバランスが良く、グレンフィディック同様控えめな個性であるため飲みやすい銘柄です。
そのため世界的に人気が高く、2015年にグレンフィディックを抜き、シングルモルトで売り上げ世界一になりました。

ベンリアック

上記3銘柄と比較すると、必ずしも有名ではないながらも評価が高いのがこのベンリアックです。
創業は1898年ですが、その後2度の操業停止を経験しており、2004年の操業再開し今に至ります。
シリーズの中でも「ベンリアック12年 シェリーウッド」は2011年のIWSC(世界的な品評会)でカテゴリー最高賞のトロフィーを獲得しています。
焼いたりんごのような濃厚な甘みで、飲みやすい銘柄です。

カーデュ

カーデュは、シングルモルトとして出回る量が少ないため、有名銘柄と比べると見かけることが少ないかもしれません。
しかしこの銘柄は、ジョニーウォーカーのキーモルト(重要な原酒)として有名で、とりわけスペインでは高い人気を誇るようです。

ストラスアイラ

ストラスアイラは、創業自体は古く、1786年にスタートしておりスペイサイドで最古の蒸留所です。
この銘柄もカーデュ同様にシングルモルトとして出回る量は少なく、多くは「シーバスリーガルの原酒」として使用されています。

他の有名銘柄

  • バルヴェニー
  • グレンファークラス
  • グレングラント
  • グレンロセス
  • クラガンモア
  • アベラワー
  • ベンロマック
  • タムデュー

まとめ

スペイサイドモルトについての理解は深まりましたでしょうか?

最後にざっくりとまとめると…

スペイサイドモルトはスコットランドのスペイサイド地域(有名銘柄が集中する主要産地)のシングルモルトで、
華やかで甘くなめらかな香り・味わいの銘柄が多いといった特徴がある。

その味わいによって飲みやすく、ウイスキー初心者にも親しみやすいのがスペイサイドモルトです。
まずはぜひ一度試してみてください。

それではこの辺で。
以上「シングルモルト入門〜「スペイサイドモルト」を簡単解説!」でした。

【参考文献】
ウイスキーコニサー資格認定試験教本・スコッチ文化研究所
世界の名酒事典2017年版・講談社

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、ジン専門書籍やテキーラメディアなど外部酒類メディアの執筆協力の他、イベントの企画運営にも携わる。(ただの酒好き)

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