ラムや甲類焼酎の原料となる「糖蜜」ってどんなもの?

糖蜜・廃糖蜜って何?

ラムや甲類焼酎を飲んだ経験がある人のなかには、原料となる「糖蜜」について気になった人もいるかもしれません。
聞きなれない言葉な上、一体どのようなものなのか想像がつきません。

というわけで本記事では、この「糖蜜」について、一体どんなものでどのように使用されるのか、詳しくご紹介していきます。
実は糖蜜は、多くのお酒に使われる汎用性の高い原料なのです。

それでは見ていきましょう。

糖蜜とは「サトウキビの搾りかす」で、廃糖蜜やモラセスとも言う

サトウキビ

サトウキビの搾りかすが糖蜜となる。

糖蜜とは、ざっくり言うと「サトウキビの搾りかす」です。

サトウキビが砂糖の原料となることは広く知れ渡っていますが、その砂糖を作る際にできる副産物が糖蜜です。
サトウキビから砂糖を精製する際に砂糖と分離されたもので、砂糖になりきれなかったものと言うとネガティブに聞こえますが、糖分をまだ多く残しているため、調味料や甘味料など色々な用途で使用されます。

お酒は原料をアルコール発酵させたものですが、発酵には糖分が必要不可欠で、糖分を含む糖蜜はラムや甲類焼酎など、お酒の原料となるのです。
ちなみに、他のお酒の原料は多くが穀物系で、これらには糖分はなく糖化と呼ばれる工程が不可欠となるのですが、糖蜜を使用するお酒の場合、糖化は必要ありません。

また原料として安価で、他のお酒の原料より安く、さらに発酵・蒸留させやすい便利な原料なのです。

ちなみに糖蜜は、モラセス、または廃糖蜜とも呼ばれることがあります。
“廃”というワードがネガティブに見えてしまうため、糖蜜の方がよく使用されています。

廃糖蜜

糖蜜の写真。

By BadagnaniOwn work, CC BY 3.0, Link

ともに糖蜜を原料とした蒸留酒であるラムと甲類焼酎…その違いは?

ラムと甲類焼酎では、この糖蜜を主な原料としており、さらにともに発酵した後に蒸留を経る、いわゆる「スピリッツ(蒸留酒)」です。
糖蜜の使用方法もほぼ変わりません。

ではラムと甲類焼酎の違いは何なのか、気になるところでしょう。

その違いは大きく分けて2つあり、

  • アルコール度数の違い
  • 熟成の違い

があります。

まずはアルコール度数については、ラムは基本的に40度以上であるのに対し、甲類焼酎はそれ以下。ほとんどのブランドは20〜25度前後となっています。
さらにラムは、期間の長短はありますが基本的に樽で熟成されます
多くのラムが茶色気味に色づいているのは樽熟成によるもので、透明ないわゆるホワイトラムもありますが、これは短期間熟成でなおかつろ過によって透明な色合いとなっています。

ラムや甲類焼酎以外の多くのお酒にも糖蜜は使われている

糖蜜を原料とするお酒は、実はラムと甲類焼酎だけではありません。

ニュートラルスピリッツ」や「醸造アルコール」といったワードを目にした人もいるかもしれませんが、実はこれらの原料は糖蜜です。
発酵・蒸留という製法もまったく同じで、呼び方が違うだけで中身は一緒です。

実はこのニュートラルスピリッツと醸造アルコール、さまざまなお酒で使用されています。
それぞれ詳しく見てみましょう。

よりピュアなニュートラルなスピリッツ

よりピュアなニュートラルスピリッツは各お酒のベースとして好まれる。

ジンやリキュールのベーススピリッツ

ジンは、ベースとなるスピリッツにボタニカルで風味づけがされたお酒ですが、このベースとなるスピリッツこそニュートラルスピリッツです。
最近ではニュートラルスピリッツではない穀物や果実由来のスピリッツを使用するジンも増えていますが、一般的なジンの多くは糖蜜が原料のニュートラルスピリッツが使用されています。

また、リキュールは果実やハーブのエキス等で風味づけされたお酒ですが、このベースのお酒として使用されるのも主にニュートラルスピリッツです。
さらにいうと、梅酒を自宅で作る家庭もありますが、梅を漬けるのに使用するお酒もニュートラルスピリッツです。(ホワイトリカーと呼ばれることも)

日本酒の醸造用アルコール

日本酒でも実は糖蜜由来のアルコールが使用されています。

日本酒には純米酒とそうでないお酒(例えば本醸造酒や吟醸酒、大吟醸酒など)がありますが、純米酒以外の日本酒には醸造アルコールなるものが添加されています。
この醸造アルコールこそ、糖蜜を原料とする醸造用アルコール(ニュートラルスピリッツ)のこと。

ちなみに、増量目的というより主に香りを立たせるために使用されています。

まとめ

このように糖蜜由来のアルコールは原価が安くとても便利なため、汎用性が高く、実は多くのお酒に使用されているのです。

最後におさらいすると…

糖蜜(廃糖蜜、モラセス)とは、サトウキビから砂糖を作る際の不産物で、要するにサトウキビの搾りかす。
副産物のため原価が安く、発酵させやすいためお酒の原料として汎用性が高い。

糖蜜は調味料でも使用されることもあることから、実はお酒以外でも口にしているからもしれません。
正体がわかったことで、今後よりラムや甲類焼酎など糖蜜を使用するお酒を楽しめることでしょう。

それではこの辺で。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

関連記事

  1. 黄麹の芋焼酎・厳選4選 黄麹の芋焼酎をリストアップ!オススメ銘柄厳選4選
  2. 世界のラム売上TOP5 世界一売れているラムは?売上TOP5のラム銘柄を発表!
  3. 個人的に好きな芋焼酎・麦焼酎 筆者が個人的に好きな「芋焼酎・麦焼酎」を8つ挙げてみる
  4. 魔王・村尾・森伊蔵 魔王・村尾・森伊蔵は定価以上の価格でも買うに値するのか?
  5. 赤霧島の秘密 意外と知らない!赤霧島はなぜ「赤」なのか?
  6. 芋焼酎、麦焼酎、米焼酎 芋焼酎、麦焼酎、米焼酎の違いと特徴をざっくり説明!
  7. 和と洋の良さをあわせ持つ新時代の泡盛「尚」、その誕生ストーリーと特徴に迫る 和と洋の良さが合わさる新時代の泡盛「尚」、その誕生ストーリーと特…
  8. 本格焼酎ならではの特徴・魅力とは?…今こそ焼酎を飲もう! 本格焼酎ならではの特徴・魅力とは?…今こそ焼酎を飲もう!

おすすめ記事

国産ジンの造り手21社が新潟に集い、唯一無二のジンを創る「DistiRally NEXT 2024」始動! 国産ジンの造り手21社が新潟に集い、唯一無二のジンを創る「DistiRally NEXT 2024」始動!

この度、当メディア(LiquorPage)、および洋酒専門の酒販店・株式会社千雅は、国産ジンが造り手…

「ボンベイ・サファイア」が仕掛けるお酒の枠を超えたクリエイティブな表現とは?〜上海イベント取材 「ボンベイ・サファイア」が仕掛けるお酒の枠を超えたクリエイティブな表現とは?〜上海イベント取材

美しく輝くブルーのボトルが印象的なジン「ボンベイ・サファイア」日本でも広く親しまれている人気のジ…

広島市・ベネチア市 友好協力記念!「SAKURAO GIN」と「MARTINI」を使ったカクテルプロモーションを開催! 広島市・ベネチア市 友好協力記念!「SAKURAO GIN」と「MARTINI」を使ったカクテルプロモーションを開催!

水の都として世界的に知られるイタリアのベネチア市、そして中国地方最大の都市・広島市が友好協力関係にあ…

人気の記事

  1. あのパーカーポイントが日本酒に!90点以上78銘柄を発表 日本酒版パーカーポイント
  2. ジャパニーズ・クラフトジンが今アツい!話題の4銘柄をご紹介 ジャパニーズ・クラフトジン
  3. 日本でも流行必至!「クラフトジン」の特徴と銘柄まとめ クラフトジンとは?
  4. ウイスキー世界売り上げランキングTOP20 世界ウイスキー売上ランキング
  5. 世界一売れているビールは?2015年世界シェアTOP10を発表! 世界一のビールは?

新着記事

関連記事

PAGE TOP