何事にも必ず理由は存在するもの。
国酒として広く一般に浸透している焼酎ですが、「九州のイメージが強い」という方は少なくないでしょう。
実際にその製造を手がける蔵元は九州に集中しており、国税庁の「都道府県別の免許場数(2017年)」によれば、全国にある856の焼酎の免許場のうち、331箇所が九州に。なんと全体の38%以上の焼酎の製造所が九州に集中しています。
そこで今回は、「そもそもなぜ九州に焼酎の蔵元が多いのか?」をポイント3つにまとめ、それぞれ解説します。
①“蒸溜酒造り”は九州・沖縄で始まり発展してきた
焼酎は、蒸溜という技術によって造られる“蒸溜酒”と呼ばれるカテゴリーのお酒です。
蒸溜を行うことによって日本酒との明確な違いが生まれ、アルコール度数がより高い焼酎へとなっているのですが、蒸留酒造りはその昔、南方から沖縄、九州へと伝わったきたとされています。
アルコール発酵をさせる醸造については古来より日本で行われていたのですが、その発酵させた原料をさらに精製させるというお酒の蒸溜技術がやってきたのは14〜15世紀ごろ。諸説あるものの、タイや中国南部から沖縄へ、そして九州へと伝わったとされています。
いずれにしても最初に蒸留酒造りが伝わったのは九州・沖縄とされており、これらの地で焼酎または泡盛が生まれました。
始まりの地であり、古くからその技術がアップデートされてきたからこそ、今も盛んなのでしょう。
②焼酎造りに向いた気候であること
焼酎も日本酒も、その酒造りには「麹」が欠かせません。
その麹の力を借りながら原料を発酵させるのですが、日本酒で使われている麹が冷涼な気候の方が管理しやすかったのに対し、焼酎の伝統的な麹は温暖な気候が適していたとされています。
日本酒に用いられる麹は、伝統的には「黄麹」と呼ばれる種類で、冷涼な温度帯でその力を発揮し、逆に暖かい場所では雑菌の繁殖を抑えられないとされています。
一方で焼酎造りで伝統的に用いられてきた麹は、「黒麹」と呼ばれるもので、暖かい場所で活発に育つとされています。それだけでなく、黒麹はクエン酸を作るため暖かい場所でも雑菌の繁殖を抑えながらその力を発揮してくれるのです。
技術が発達した今では、気候はあまり関係なくなってきていますが、焼酎の蔵元が多い九州は以前は日本酒造りがあまり向かず、焼酎に適していた、だから今でも蔵元が多いと考えられるわけです。
③原料の生産地である
焼酎といえば特に芋焼酎と麦焼酎が有名。
その原料となるさつま芋や大麦の産地としても九州は有名です。
さつま芋はその名のとおり、鹿児島の薩摩に由来し、実は前述した蒸留酒造りと同様に、南方から沖縄へ、そして九州へと伝わったとされています。
土地が痩せていた九州の地区に南部では、米の栽培はあまり向かなかったとされ、そうした土地でも十分に育つさつま芋が重宝されるようになったとされています。主産県である鹿児島は日本一のさつま芋収穫量を誇り、日本全体の収穫量のうち35%が鹿児島で採れているのです。(農水省・2018年度作物統計より)
かたや大麦もそうした土地でも栽培しやすかったとされ、直近のデータでも全体の収穫量のうち55%が九州で生産されています。(2018年度作物統計、二条大麦の収穫量)
昔から焼酎はこれらの特産品を用いて発展してきた、だから今でも九州に蔵元が多い、ということです。
まとめ
最後に3つのポイントをまとめると…
- 焼酎造りで欠かせないお酒の蒸溜技術は、日本では九州・沖縄が始まりの地であり発展してきた
- 黒麹を用いた酒造りが暖かい九州に適していた
- 原料のさつま芋や大麦が昔も今も九州でよく採れる
これら3つが重なり、日本酒とはまた違う軸で発展してきたからこそ、全体数の38%を占めるほど九州に焼酎の蔵元が多いと考えられているのです。
こうした謎が解けたことで、今まで以上に焼酎が美味しく感じられるかもしれません。
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