クラフトジンのパイオニア「シップスミス」誕生秘話と、創業者に聞くこだわり〜飲み方のヒント

クラフトジンのパイオニア「シップスミス」誕生秘話と、創業者に聞くこだわり〜飲み方のヒント

一つの大きなムーブメントが巻き起こる時、そこには必ず何かきっかけとなる出来事があるもの。

今、クラフトジンが日本はもちろん世界中で大きなムーブメントとなっていますが、そのパイオニアともされているジンが「シップスミス」。
“ジンの聖地”であるロンドンで誕生した、今や世界的に知られるクラフトジンです。

今回のこの「シップスミス」について、クラフトジンのパイオニアとされるワケに迫るべく、その特徴にも触れながらブランド誕生からこれまでのストーリーを解説。
そして記事の後半では、創業者でありマスターディスティラーでもあるジャレッド・ブラウンさんにインタビューを実施!独自のこだわりや飲み方について教えていただきました。

商品協力:サントリースピリッツ株式会社

200年ぶりに聖地ロンドンで誕生したジン蒸溜所 〜 「シップスミス」誕生ストーリー

2008年、幼馴染のサムとフェアファックス、そして蒸溜家のジャレッドの3人が、ロンドンの地で創業した「シップスミス蒸溜所」。
実は、同市内にジンの蒸溜所が新設されたのは、およそ200年ぶりのことでした。

ロンドンといえば、300年以上前にジュネヴァがジンへと進化し、ロンドンドライジンが誕生した地であり、数百の造り手がいた“ジンの聖地”とされています。
ジンのカルチャーの中心地としてその歴史を紡ぎ、発展を支えてきたロンドンですが、戦後長らくジンそのものが低迷していたこともあり、2000年代にはジン蒸溜所は2箇所にまで減っていました。

シップスミス創業者の3人、左からジャレッド、サム、フェアファックス

創業者の3人、左からジャレッド、サム、フェアファックス

一方で創業者たちは、若い頃に暮らしていたアメリカの地で、ビールやコーヒーなどに代表されるクラフトのムーブメントを目の当たりにしていました。
そしていつしか、母国にそのカルチャーを持ち帰り、かつてロンドンで花咲かせていたジンのカルチャーとクラフトのムーブメントを組み合わせることに情熱を感じるように。そうして2006年にロンドンに戻ると、“聖地”であるこの地でジンを造ることを決意。
しかし、長らく蒸溜所の新設がなかったロンドンでの活動は困難を極め、厳しいルールを前に中々製造のライセンスを取得できませんでした。
2年かけてロビー活動を続けた結果、そのルールの一部解釈が緩和されることとなり、2008年にようやくライセンスを取得。ゆっくり飲むという意味をもつ「シップ(Sip)」と、職人を意味する「スミス(Smith)」を掛け合わせて「シップスミス(Sipsmith)」と命名し、ジンを造る上で欠かせない蒸溜器の大切な部分であるスワンネック(ラインアーム)からアイディアを得た、白鳥をロゴに用いた「シップスミス蒸溜所」が誕生しました。

こうして聖地ロンドンに、200年ぶりにジンの蒸溜所が新設されることとなったのです。

シップスミス蒸溜所

「シップスミス蒸溜所」

伝統的かつシンプルであることへのこだわり

では創業者たちは、どのようなジンを造ろうと思ったのでしょうか?
彼らがこだわったのは、“伝統的であること”、そして“シンプルであること”。

「シップスミス」誕生当時、世界では革新的なアイディアや製法で造られるジンが少しずつ増え始めていましたが、彼らはあえて1850-1870年ごろの、ちょうど“ロンドンドライジン”と呼ばれるスタイルのジンが確立し始めたころの製法をヒントにしました。
それはジンを特徴づけるボタニカル選びにもあらわれています。
ジンといえば、ベースとなるお酒(スピリッツ)に、ジュニパーベリーのほか、様々なハーブやスパイスなどのボタニカルを加え、蒸溜することで香り高いエッセンスが与えられるお酒。
例えば個性的なボタニカルを使うことで、ユニークな味わいのクラフトジンを造ることもできますが、「シップスミス」の創業者たちは、ジュニパーベリーのほか、アンジェリカやオリス、レモンなど、計10種類のジンのボタニカルとして伝統的かつシンプルな素材をチョイス。
それらボタニカルは、「シップスミス」誕生当時、ロンドンドライジンに広く採用されていたマルチショット蒸溜(数倍の量のボタニカルを蒸溜し、それをスピリッツと水で希釈することで、一度の蒸溜で数多くのジンを造る方法)ではなく、効率より伝統的であることにこだわり、ワンショット蒸溜(スピリッツで希釈しない方法)によってエッセンスを抽出。
そうして、伝統的なロンドンドライジンに現代の技術とセンスをプラスすることで、シンプルながらも洗練された「シップスミス」が完成し、2009年に世に送り出されました。

「シップスミス」で使われる蒸溜器

「シップスミス」で使われる蒸溜器、レシピどおりのボタニカルの量を用い、のちにスピリッツで希釈せずに一度の蒸溜で得られた分だけを製品化している(ワンショット蒸溜)

“クラフトジンのパイオニア”たる所以

斬新さやユニークさではなく、あえて伝統とシンプルさにこだわることで“クラフト”を追求したジン「シップスミス」。
200年ぶりに新たな造り手によるジンが誕生したことで、ロンドンは“聖地”として再び光が照らされるようになりました。

2008年まで長らく2箇所しかなかったジンの蒸溜所は、今やなんと70箇所にまで急増。
「シップスミス」の誕生を皮切りに、聖地ロンドンは活気を取り戻し、続々とクラフトジンが誕生するようなり、そのムーブメントは世界に波及。
今や日本でもクラフトジンが注目されるなど、ジンは、数ある酒類の中でも、とりわけ大きな盛り上がりを見せています。
「シップスミス」の誕生は、そのムーブメントの起点の一つとなり、また、彼らがイギリスにおけるジンの製造ライセンスの壁を突破したことから、のちにクラフトジンを手がけることになる造り手たちに希望を与えたとも言えます。
だからこそ“クラフトジンのパイオニア”とされているのです。

「シップスミス ロンドンドライジン」と「シップスミス V.J.O.P」

日本で展開されている「シップスミス ロンドンドライジン」と「シップスミス V.J.O.P」

そんな「シップスミス」は、伝統的でシンプルながらも、ジンらしさが洗練された味わいが人気を呼び、今ではクラフトジンの王道として世界中で親しまれています。
日本においても、とりわけバーテンダーなどのプロやジンラバーからの支持が厚く、クラフトジンとは何か、ロンドンドライジンとは何かを知る上で、欠かせないジンとも言えるでしょう。

「シップスミス」創業者に聞く、独自のこだわりからお気に入りの飲み方まで

さて、「シップスミス」のストーリーについて解説を終えたところで、この先はその当事者である創業者にバトンタッチ。マスターディスティラーでもあるジャレッド・ブラウンさんにインタビューを行いました。
ロンドンへのこだわり、ブランドカラーの秘密や今後の目標、そしてお気に入りの飲み方についてなど、語っていただきました。

ジャレッド・ブラウンさん

インタビューにご協力いただいたジャレッド・ブラウンさん

— コストがかさむであろう大都市ロンドンではない土地でジンを造ることもできたと思いますが、それでもなおロンドンを拠点に選んだのはそれだけ特別な思い入れがあったということでしょうか?
はい、ロンドンが大好きです。私はアメリカ生まれですが、頻繁にイギリスを訪れ、2006年にロンドンに引っ越してきました。サムとフェアファックスはイングランド生まれで、初めて会った時にはみんなロンドンに住んでいました。
ロンドンでジンを造るのは、(テキーラの9割以上が造られる一大産地である)ハリスコでテキーラを造り、(歴史的なラムの産地である)ハバナでラムを造るようなもので、ロンドンにはジンの心と魂が生きています。その発祥の地であるロンドンでは、ジンの歴史を歩むことができます。私たちは常にここで「シップスミス」を造っていくつもりです。

— 「シップスミス」といえばブランドカラーのグリーンが印象的ですが、その色を選んだのはなぜでしょうか?
イギリスの国旗の色は赤、白、青です。しかし、イギリスの本当の色は緑です。イギリスの伝統的な歌の一つである「エルサレム」には、この国を「緑豊かで気持ちの良い土地」と表現する言葉がよく使われています。イングランドは緑に溢れ気持ちがいい。シップスミスの濃い緑色は、イギリスのレーシンググリーンやフォレストグリーンをベースにしています。

— 「シップスミス」はプロの間でも支持が厚く、Drinks Internationalが世界のトップバー100店から集計したジンのセールスランキングとトレンドランキングではTOP10入りを果たしています。支持を集める理由はずばり何だと思いますか?
答えは簡単で、とても良いジンだからです。可愛いラベルであれば1本目は売れますが、2本目、3本目は良い液体でなければ売れません。私たちは可能な限り最高のジンを造るために努力しました。
今日、クラフトジンはたくさんありますが、クラフトの伝統的なジンは非常に少ないのです。「シップスミス」は、伝統的なレシピと製法を用いて、手作りのジンを復活させたパイオニアです。かつてのジンが造られていた方法、つまり造られるべき方法で造られたジンです。
私たちの目標は、真のクラシックジンを復活させ、200年後も人気のあるジンを造ることでした。それは成功するのでしょうか?私はそう望んでいます。

— 「シップスミス」の開発者として印象的だったエピソードを教えてください。
日本のとあるお店やバーに入って、そこに「シップスミス」があるのを見た時が、私にとって最も印象的な瞬間です。
2009年、ロンドンの小さなガレージに私と(創業者の)サムとフェアファックスの3人だけがいたことをいつも覚えています。(当時は)ジンに興味を持ってくれる人がいるかはわかりませんでしたが、伝統的なクラフトジンに対する私たちの情熱を人々が共有しているのを見て、私は光栄に思うと同時に、身が引き締まる思いでした。

— 今後の目標や夢を教えてください。
私と妻は現在、イギリスの蒸溜士ギルドが運営する慈善団体の資金調達のために、ジンの歴史を書き換える本を執筆しました。私たちの研究は、ジンの起源についての理解を完全に変えています。ジンがロンドンで生まれたことが証明されたのです。
「シップスミス」と一緒にジンの歴史と伝統を発見し、探求し続けたいと思っています。
現在、私の庭ではジンのボタニカルも栽培しており、歴史的に使われてきたボタニカルの研究を続けていきたいと思っています。
それから、また長野にスキーに行きたいし、いつか北海道にも行ってみたいと思っています。

— 最後に、ジャレッドさんお気に入りのジン&トニックのレシピを知りたいです。
家では、背の高い300mlのグラスでジン&トニックを楽しんでいます。完成した際に、グラスの上から1センチくらいに液面がくるようにします。

【作り方】

  1. グラスに3つの氷を入れます。
  2. 「シップスミス ロンドン・ドライ・ジン」を50ml加えます。
  3. 100mlのトニックウォーターをそっと注ぎます。(普段は家にある「フィーバーツリー」を使っていますが、良いトニックはたくさんあります)
  4. かき混ぜずに液体を2〜3回持ち上げます。こうすることで泡を保つことができます。
  5. 蒸溜所ではガーニッシュ(添え物)にライムを使いますが、私は小さなくし形のレモンや柑橘類のツイスト(アレンジ)も楽しんでいます。

ジャレッドさんに教えていただいたレシピで作ったジン&トニック

ジャレッドさんレシピで作成したジン&トニック

私はジンソニック(50mlのトニック、50mlのソーダ)も好きです。また、50mlのジンと100mlのソーダで作られたライムを絞った伝統的なジンリッキーも好きです。

— ありがとうございました!

日本独自のファンコミュニティ「Swan Lab」の活動も見逃せない

ジンの心と魂が生きるというロンドンで、真のクラシックジンを復活させ、歴史の一部となることに意欲を見せる創業者のジャレッドさん。
クラフトジンの王道であり、ロンドンドライジンの正統な後継者として、今後の歩みにも期待したいものです。

Swan Lab

Swan Lab

さて、そんな「シップスミス」ですが、日本独自の無料のファンコミュニティがあるのはご存じでしょうか?
その名も「Swan Lab」では、ブランドが掲げる“Cocktails donʼt need to be complicated.(カクテルは複雑である必要はない)”というメッセージにならい、シンプルでこだわりのある人生を歩む上でのヒントとなるコンテンツを配信。ニュースレターを登録すると、特別なコンテンツの閲覧、イベントの案内などを受け取ることができます。
その中でも注目すべきは、第1弾となるプロジェクトとして進行中のブランド独自のカクテルブック制作。
日本を拠点に活躍する25名のスミス(職人)たちと、50名のトップバーテンダーによるコラボレーションによって創作される50個のオリジナルカクテルが掲載される予定です。
完成までの道のりはコミュニティで配信されており、スミスへのインタビューとバーテンダーによるカクテルはすでにいくつか公開されています。

当記事を読んで「シップスミス」が気になったという方は、ぜひコミュニティものぞいてみてください。

ニュースレターの無料簡単登録はこちらから!
「Swan Lab」公式サイト

商品詳細

「シップスミス ロンドンドライジン」
ボタニカル: ジュニパーベリー、コリアンダー、アンジェリカ、リコリス、オリス、アーモンド、桂皮、シナモン、オレンジピール、レモンピール
容量: 700ml
度数: 41%
価格: 4,200円(税抜)

「シップスミス V.J.O.P」
ボタニカル: 「ロンドンドライジン」と同じ
容量: 700ml
度数: 57%
価格: 4,735円(税抜)

「シップスミス V.J.O.P」

「シップスミス V.J.O.P」はジュニパーベリーを通常の3倍使用した高アルコール商品、ジンの核となるジュニパーベリーの風味を鮮烈に感じることができる

「シップスミス」公式サイト / サントリーHP

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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