今、人気急上昇中のお酒“ジン”は、歴史を遡ると“感染症”と深いつながりがありました。
そのつながりとは何なのか、紐解いていくのが今回の記事。とはいってもジンにとってネガティブなお話ではありません。きっとジンが飲みたくなるお話です。
新型コロナウイルスの感染拡大問題によって、社会が大きく動かされている昨今ですが、感染症とのつながりを知ることで、ジンへの見方が変わるかもしれません。
“ジュニパーベリー”は、ペストに効くと信じられていた
今から遡ること約700年、ヨーロッパでは「ペスト(別名:黒死病)」と呼ばれる感染症が大流行し、猛威をふるっていました。
原因もわからずに、感染すると1週間とたたずに患者の命を奪ったこの病に、当時はなす術がなく、ヨーロッパの人口のおよそ半数が犠牲に。あまりの影響の大きさに、社会の構造が変化せざる得なかったともされています。
そんな恐ろしい感染症を前に、人々が希望を見出したのが、かねて“万能薬”だと信じられてきたボタニカル「ジュニパーベリー」。
ジュニパーベリーは、古代エジプトでは頭痛薬として、アラブ人達の間では痛み止めとして重宝されていた他、12世紀ごろイタリアの医学校で“薬酒”としてこのボタニカルを使った酒造りが始まると、医師たちの間で欠かせない素材になるなど、元々は薬として重宝されていた素材でした。
ペスト流行の際にもその薬効は信じられていました。
この時に登場した巨大なくちばしのようなマスク、通称「ペストマスク」は今でも有名ですが、その尖った先端にジュニパーベリーを詰め込んで着用していたのです。
また、当時の人は、ペストは腐敗した蒸気など有毒な空気を吸うことで感染すると思い込んでいたために、ジュニパーベリーを大量に焚き込むことで、その芳香で空気を清めていたともされています。
実際の効果はさておき、ペストに効くと信じられ、人々を絶望の淵から救ったのがジュニパーベリーだったのです。
“ジュニパーベリー”は、薬からジンの欠かせない素材へ
このように、恐怖の感染症を前に大活躍したジュニパーベリーですが、その後は、ジンに欠かせない素材として役割を変えていきます。
ジュニパーベリーのお酒は、ペスト流行以前から存在していたのですが、その用途はあくまで薬であり、味わうため、そして酔うためのものではありませんでした。それが時代の変化とともに、嗜好性が求められるようになっていくと、15-16世紀ごろのオランダで、ジュニパーベリーと様々なスパイスを使用した、ジンのルーツとなるお酒「ジュネヴァ」が誕生。そのジュネヴァがイギリスの地で「ジン」へと変化し、衰退と繁栄を経ながら、世界中で愛されるお酒へと登りつめていくのでした。
今では、イギリスを含むEUやアメリカなど主要国における規定によって、ジンは、ジュニパーベリーの使用が義務付けられており、ジンのシンボルともいうべき素材へとなっています。
そしてそのジンは今、歴史的に最も繁栄していると言っても過言ではない、いわば黄金期を迎えています。
世界中で個性豊かなクラフトジンが登場し、多くの人気を集めるなど、口にする人に希望や活力を与えていくことになるのでした。
たとえ感染症に効かずとも、ジンは人々の心を癒してくれる
新型コロナウイルスが、社会に大きな影響を及ぼしている今現在。
ペストマスクはスマートでより顔にフィットする形に変わり、ジュニパーベリーは薬としてではなく、ジンとして私たちの身近に存在します。
どことなく、ペスト流行とジュニパーベリーのエピソードは、新型コロナウイルスが流行し、一方でジンもまたとても大きな盛り上がりを見せている今現在とリンクしていると、いちジンラバーでもある筆者は感じています。
もちろん感染症そのものへの効き目を期待できるものではありませんが、社会の変化に不安に駆られてしまう今だからこそ、その昔ペスト流行の際に大活躍したジュニパーベリーのお酒、ジンを飲むことで少し気持ちが前向きになれるかもしれません。
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