世界五大ウイスキーの一つでありながらも、長年低迷期にあったアイリッシュウイスキー。
しかし近年大復活を果たし、数年前まで4つしかなかった蒸留所も、いまではなんと40ヶ所に。(計画中も含む)
長年スポットが当たることがなかったアイリッシュウイスキーが、いまでは大注目の、まさに今アツい分野となっているのです。
しかし長年下火だったこともあり、情報量も少ないのが現状。
そこで本記事では、アイリッシュウイスキーの定番銘柄と今後が楽しみな銘柄など、アイリッシュを知るうえで味わっておきたいおすすめ銘柄を8つピックアップしました。
まずはアイリッシュの特徴をおさらいしたうえで、各銘柄を見ていきましょう。
⇒アイリッシュウイスキーが今アツい!定義や特徴、銘柄をおさらい
アイリッシュウイスキーの特徴をおさらい
アイリッシュウイスキーには、シングルモルトやブレンデッドウイスキーといった代表的なウイスキーのタイプ以外にも、シングルポットスチルウイスキーなどといったアイリッシュ独自のものがあります。
また、単式蒸留の際には3回行うといった特徴もあります。
それぞれ特徴を見ていきましょう。
原料:大麦麦芽(モルト)30%以上、未発芽の大麦30%以上、他ライ麦や小麦など
蒸留:単式蒸留器(ポットスチル)で3回
特徴:オイリーで穀物感の強い味わい
【シングルモルト(モルトウイスキー)】
原料:大麦麦芽(モルト)のみ
蒸留:単式蒸留器で3回(2回の場合も)
特徴:スコッチに比べライトな酒質
【グレーンウイスキー】
原料:とうもろこし、大麦などの穀物類
蒸留:連続式蒸留機
【ブレンデッドウイスキー】
シングルポットスチルやシングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドしたもの
シングルポットスチルウイスキーは、未発芽大麦も使用することでスコッチなどよりオイリーで穀物感の強い味わいになる傾向があります。
蒸留(単式蒸留)は3回が基本なので、スコッチよりライトで軽快な飲み口です。
他にも、基本的にはピートを使用しないといった違いもあり、これもアイリッシュウイスキーがライトで飲みやすいと言われる所以でもあります。
アイリッシュウイスキー定番&おすすめ銘柄を8つご紹介
それではいよいよ銘柄紹介に移ります。
本記事ではシングルポットスチルやシングルモルトなどタイプ問わずピックアップしています。(各銘柄ごとにタイプは記載)
タラモアデュー
蒸留所:ミドルトン蒸留所(新タラモア蒸留所に移行中)
タイプ:ブレンデッド
タラモアデューは、ジェムソンやブッシュミルズとともにアイリッシュウイスキーでは非常に有名な銘柄。
世界中で人気があり、アイリッシュウイスキーの中ではジェムソンに次ぐ売り上げを誇ります。(2015年時点、Euromonitorより)
1954年までは旧タラモア蒸留所で造られていましたが、アイリッシュウイスキーの衰退とともに同蒸留所も閉鎖に。
その後はミドルトン蒸留所で造られるようになり、現行品も同蒸留所のシングルポットスチルとグレーンウイスキーを使用したブレンデッドウイスキーです。
しかし、近年のアイリッシュウイスキーの大復活をうけて、2014年に新生タラモア蒸留所が誕生。
徐々に同蒸留所産のウイスキーに切り替わっていくとみられます。
ライトタイプの穏やかな味わいで万人受けするウイスキーです。
ウイスキーの世界売り上げランキングはこちらで紹介しています。
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キルベガン
蒸留所:クーリー蒸留所&キルベガン蒸留所
タイプ:ブレンデッド、シングルグレーン
キルベガンは、世界最古の蒸留所と言われる1757年創業のキルベガン蒸留所で造られていた銘柄。
1953年に上記のタラモア蒸留所同様に閉鎖に追い込まれるものの、2007年に操業再開されました。
ブレンデッドとシングルグレーンを展開しており、現行品はほぼクーリー蒸留所の原酒が使用されています。(少しキルベガン蒸留所の原酒もブレンドされているようです)
長年クーリー蒸留所の創業者ティーリング一族の所有ブランドでしたが、現在はサントリーグループ(ビームサントリー)がオーナーとなっています。
ライトながら穀物の風味が豊かな味わいでコストパフォーマンスが高い銘柄です。
ターコネル
蒸留所:クーリー蒸留所
タイプ:シングルモルト
ターコネルは、20世紀初頭アメリカで大人気だった「オールドターコネル」の復刻版。
当時はワット蒸留所という蒸留所で造られていましたが、蒸留所の閉鎖とともに長年なきものに。1992年にクーリー蒸留所のジョン・ティーリングの手によって復活し今に至ります。
ちなみに銘柄名は同名の競走馬にちなんだものです。
2回蒸留のシングルモルトでどちらかというとスコッチタイプながらも、ピートを使用しないというアイリッシュならではの特徴も持ち合わせており、味わいからもアイリッシュらしさを感じます。
華やかな香りが素晴らしく、味わいもフレッシュで飲みやすいシングルモルト。
レッドブレスト
蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:シングルポットスチル
レッドブレストはアイリッシュを代表するシングルポットスチルウイスキーで、近年のブーム以前から販売されていた唯一のシングルポットスチル。
元々は、ジンやウォッカで有名な英ギルビーが所有するブランドでしたが、90年代にジェムソンなどを所有するアイリッシュ・ディスティラリーズ・グループ(IDG、ペルノリカール傘下)の銘柄に。
現在はミドルトン蒸留所で造られています。
未発芽大麦を使用し、3回蒸留という伝統的なシングルポットスチルの製法で造られており、軽快でオイリーでありながらも複雑な風味が魅力です。
シングルポットスチルとしてはもちろん、世界的に評価が高いウイスキーで、アイリッシュを知るうえでは味わっておきたい銘柄です。
カネマラ
蒸留所:クーリー蒸留所
タイプ:シングルモルト
カネマラは、アイリッシュウイスキーのなかでは際立った銘柄(シングルモルト)。
それはピートを多く使用した、いわゆるピーティなウイスキーだからです。
ピート使用しないのが普通であるアイリッシュの中でピートを多量使用し、さらに2回蒸留という異端ともとれるウイスキーを手がけるのは、クーリー蒸留所。
クーリー蒸留所の創業者ジョン・ティーリングは「アイリッシュの革命児」という異名もとる人物であることから、カネマラを手がけるのはそう不思議なことではないかもしれません。
アイラモルトのようなスモーキーな特徴がありつつも、ややライトで甘みも感じるためアイラのそれよりは飲みやすくなっています。
アイリッシュらしさという点では微妙ですが、近年ワールドウイスキーアワード(WWA)やISC、IWSCなどのコンクールで賞を受賞しており、一度は飲んでおきたい銘柄です。
グリーンスポット
蒸留所:ミドルトン蒸留所
タイプ:シングルポットスチル
グリーンスポットは、ミドルトン蒸留所発の7〜10年の原酒を使用したシングルポットスチルウイスキー。
アイルランド・ダブリンにある有名ワイン商・ミッチェル&サンが、プライベートブランドとして所有する銘柄で、現在はペルノリカール系列であるIDGがオーナーとなり、ミドルトン蒸留所で造られています。
グリーンスポットの他にも、12年熟成のイエロースポットがあります。
シングルポットスチルであるため当然のことながら未発芽大麦を使用し3回蒸留で造られており、アイリッシュらしさを感じるうえでは適した銘柄です。
熟成にはバーボン樽だけでなくシェリー樽も使用しており、これにより、軽快な風味ながらもフルーティーで複雑な味わいとなっています。
グレンダロウ(グレンダロッホ)
蒸留所:グレンダロウ蒸留所
タイプ:シングルモルト、シングルグレーン
グレンダロウはグレンダロッホと呼ばれることもあり、2013年に設立されたばかりの同名のクラフト蒸留所で造られています。
同蒸留所は、アイリッシュウイスキーの復活からの大きな流れを象徴する、アイルランドを代表するクラフト蒸留所です。
ウイスキーだけでなくポティーン(アイルランド特有のスピリッツ)やクラフトジンなども手がけることから、各方面で注目を浴びる蒸留です。
写真はグレンダロウのシングルグレーンで、アイルランド産の大麦とトウモロコシを原料に、珍しいカフェスチル(連続式蒸留機)で蒸留しています。
さらに熟成にはシェリー樽、バーボン樽を使用しており、風味が豊かで複雑な味わいのグレーンウイスキーです。
ティーリング
蒸留所:ティーリング蒸留所&クーリー蒸留所
タイプ:シングルモルト、シングルグレーン
ティーリング蒸留所は、2015年にジャックとスティーブのティーリング兄弟によって設立されました。
同兄弟の父親はアイリッシュウイスキー復活の立役者の一人でもある、クーリー蒸留所の創業者ジョン・クーリング。
現行品は、クーリー蒸留所の原酒を使用したいわゆるボトラーズ製品で、熟成が進み次第ティーリング蒸留所のウイスキーに切り替わっていくとみられます。
アイリッシュ特集などでもしばしば取り上げられる、今後大注目のブランドです。
写真で紹介しているのはティーリングのシングルモルトで、シェリーやポート、マデイラなど5種の樽の原酒を使用している特徴的なウイスキー。
ドライフルーツのような甘くスパイシーな風味が特徴です。
まとめ
気になる銘柄は見つかりましたでしょうか?
アイリッシュウイスキーは見事な大復活を遂げ、今まさにアツいカテゴリーです。
長年の低迷期により味わえる銘柄も少なかったですから、アイリッシュの魅力といってもいまいちピンとこない方も多いかもしれません。
ぜひこの「アイリッシュルネッサンス」とも言われる大きな流れに乗り、色々な銘柄を味わってみてください。
それではこの辺で。
以上「アイリッシュウイスキー定番&おすすめ銘柄8選」でした。
【参考文献】
改訂世界ウイスキー大図鑑|柴田書店 監修・チャールズ・マクリーン
ウイスキー完全バイブル|ナツメ社 監修・土屋守