お酒の解説や説明文を見ていると、頻繁に「発酵」というワードが出てきます。
ビールやウイスキー、それにワインなど様々なお酒の解説に登場するワードです。
「当たり前のように発酵って言うけど、そもそも発酵って何?」
そう思っている方も多いのではないでしょうか?
本記事ではこの「発酵」をテーマとし、発酵とは一体どんなものなのか、お酒にそれほど詳しくない方でも分かりやすいよう簡単に解説していきます。
発酵は、お酒の基本中の基本ですから、覚えておくことをおすすめします。
覚えておくと、後々お酒の説明などに対する理解度が上がりますので。
それでは見ていきましょう。
発酵とは、酵母の働きによってアルコールを作り出すこと
発酵とは、酵母と呼ばれる微生物の力を借りて、アルコールと炭酸ガスを作り出すこと。
微生物(要するに菌)の働きによって変化が起き、単純に言うと(表現は汚いですが)ものが腐ることです。
腐ると言うとネガティヴなイメージがありますが、実はものの腐り方には主に2タイプあり、良い腐り方と悪い腐り方があります。
言わずもがな発酵は良い腐り方で、発酵食品などもあるようにもちろん食すことができます。
(悪い腐り方は「腐敗」と呼びます)
私たちが飲むすべてのお酒に含まれるアルコールは、この発酵を経て発生しています。
つまりは、どのお酒にも発酵という工程は欠かせないということです。
次項で、発酵でアルコールが発生する理由やそのメカニズムについて触れていきます。
発酵の仕組み 〜 アルコールが発生する理由
発酵とはどういった仕組みなのか?
発酵にはまず、酵母と呼ばれる微生物(菌)の存在が不可欠。
原料に酵母を加えることで、発酵は始まります。
原料に加えられた酵母の働きによって、糖分が分解され、アルコールと炭酸ガスが作り出されています。
発酵の際の、エンジンとなるものが酵母ということです。
働き者の酵母、エサは糖分
エンジン役の酵母は、糖分をエサとします。
糖分がないことには酵母はうまく働いてくれません。
酵母が糖分を食べ、それを元にアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を作り出します。
こうして、アルコールがないただの原料だったものが、アルコール入りのお酒に変わるのです。
(例えばワインなら、ブドウジュースに過ぎなかったものが、酵母の働きによってワインに変わる)
酵母がエンジンなら、糖分はその燃料となるものと捉えることもできます。
炭酸といえば、ご存知のように密閉状態ない限りどんどん抜けていきます。
要するに、密閉状態で発酵させない限り、発酵による炭酸ガスは抜けていくのです。
つまり、ビールなど炭酸を含むお酒は、基本的に密閉状態で発酵させているということです。
(後から炭酸ガスを注入する方法もあります)
酵母は食品にも使用されている
ちなみに発酵の際の酵母は、基本的にお酒造りに適した酵母(培養酵母)を添加することがほとんどですが、そもそも酵母自体は自然界にも存在しているので、酒蔵に住み着いていることもあり、これをお酒造りに使用するケースもあります。
一部のワインやビールなどでこの方法がとられていますが、大多数のお酒では酵母は添加されています。
それからご存知の方もいると思いますが、実は酵母は、パンや味噌、醤油にも使われています。
つまり、これら身近な食品は発酵されているということです。
よく発酵食品とも言われるのはこのため。
しかしこれらの食品は、アルコールは揮発している(飛んでいる)ため、アルコールは残っていません。
ほとんどのお酒の原料には糖分は含まれず、すぐには発酵できない
お酒の原料は様々ですが、ブドウを使用するワインを除く、ビールやウイスキー、日本酒に焼酎など、ほとんどのお酒は米や麦など穀物を原料としています。
しかし、これら穀物には元々糖分は含まれておらず、主成分はデンプンです。
酵母のエサである糖分がないのに、どうやって発酵をさせているのか?
それは、デンプンを糖分に分解させているのです。
このように糖分を作り出すことを「糖化」と言います。
実はデンプンには、一定の条件を満たすといわゆる酵素の力が働き、糖分に分解されるという特性があります。
温度や水分などを調整することで酵素の力が働き、それによりデンプンが糖分に変わっていくのです。
ちなみにビールやウイスキーの原料となる麦が、そのままの「麦」ではなく、わざわざ「麦芽」(麦を少しだけ発芽されたもの)の状態となっているのは、麦芽の状態の方が、より酵素の力働き糖化しやすくなるからです。
それから、日本酒や焼酎など日本のお酒では、昔から麹菌を使用して原料の米や麦を糖化させています。
ワインの原料であるブドウは、果物であり十分な糖分を含むため、糖化が必要なく、酵母を加えるだけ発酵することができます。
発酵させただけのお酒は醸造酒
発酵によってアルコール、つまりお酒を作ることができるわけですが、発酵だけで作り出せるアルコール度数には上限があります。
発酵だけでは、基本的に20度以上のアルコールを作ることはできません。
それ以上の度数を作り出すには蒸留という作業を行う必要があります。
しかし、全てのお酒が蒸留させるわけではなく、ビールなどアルコール度数が低いお酒は発酵させただけで完成します。
ウイスキーや焼酎でよく聞く「蒸留」とは何か?を簡単解説!
ビールのように発酵させただけの低アルコールのお酒は醸造酒
ウイスキーのように蒸留させた高アルコールのお酒は蒸留酒(スピリッツ)
と呼ばれ、カテゴリー分けされます。
醸造酒には、ビールだけでなく、ワインや日本酒などが含まれ、基本アルコール度数は5〜15度前後、もしくはそれ以下の低いものとなります。
蒸留酒はウイスキーの他にも、焼酎やウォッカ、ジンやブランデー、テキーラなど度数40度を超えるようなお酒が含まれます。
基本的に発酵させただけの醸造酒は、度数が低い分、原料の風味が残りやすい傾向にあります。
ワインから、原料であるブドウの香りや味がしっかり感じ取れるのはそのためです。
まとめ
発酵についてお分かりいただけたでしょうか?
「発酵」というワードだけ見聞きすると、なんだか理科っぽくて小難しく感じてしまいますが、実は仕組みは意外にもシンプル。
最後にざっくりまとめると…
- 発酵とは、酵母の働きによって、アルコールと炭酸ガスを作り出すこと
- 酵母は糖分をエサにして、アルコールと炭酸ガスを生み出す
- 穀物など、原料に糖分がない場合「糖化」が必要
- 発酵で生み出せるアルコール度数には限界がある
お酒の説明や解説でしばしば登場する「発酵」というワード。
これを理解したことで、今後お酒への理解が進み、よりお酒が楽しくなることでしょう。
それではこの辺で。
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