近年もてはやされるクラフトジンなど、ジンを楽しみたいならまず知っておいてほしいのが“4大ジン”です。
4大ジンとは、「ビーフィーター」、「タンカレー」、「ボンベイ(ボンベイ・サファイア)」、「ゴードン」といった世界でも特に売れている4つのジンブランド。いずれもロンドンドライジンと呼ばれるタイプのジンで、昔から存在する伝統的でスタンダードなジンですが、個性あふれるクラフトジンが人気を集めている今だからこそ、これらの存在の重要度は増していると言えます。
伝統的でスタンダードだからこそ4大ジンには、“ジンとは何か?”が詰まっており、その理解なく、クラフトジンの個性を知るのは難しいからです。
今のジンのカルチャーは、伝統と個性が両立しており、その両方を知って、体験することで、よりジンというお酒を楽しめるようになると言えるでしょう。
というわけで今回は、日本でも長らく人気を集める4大ジンの各ブランドについて、誕生ストーリーや特徴などをざっくりご紹介します。
ジンとは、ベースとなるお酒(スピリッツ)に、ジュニパーベリーというハーブのほか、様々なハーブやスパイス、フルーツなどの“ボタニカル”を加え、蒸溜することで香り高いエッセンスが与えられるお酒。
ゴードン ジン
1769年、“ジンの聖地”ロンドンで、アレクサンダー・ゴードンが創業したのが「ゴードン」です。
社会を混沌とさせたジンクレイズ(狂気のジン時代)と呼ばれるジンの暗黒時代が終わったばかりの当時、彼はジンに着せられた汚名を返上すべく「ゴードン」を創業。品質の向上を目指し、原料や製造方法に投資と手間を惜しまず製造すると、当時ジンは匿名で売られるのが一般的だった中で、信頼の証として敢えてその名を記して発売しました。
つまり「ゴードン」は、ジンのブランド化にいち早く動いた、最も長い歴史を有するジンブランドの一つだったのです。
1925年には、ジンとしては初めて“ロイヤルワラント(英国王室御用達)”の認定を取得。由緒正しきジンとして歩みを進め、一時は堕落のシンボルとまでされていたジンの地位向上に一役買いました。
今や約180カ国で販売される巨大ブランドへと成長し、その売上は年間670万ケース(※9l換算、2019実績、Drinks Internationalより)を記録。世界で2番目に売れているジンとして、世界中で親しまれています。
そんな「ゴードン」ですが、4大ジンの中では、よりジンらしい味わいを有しているのが特徴です。
他の4大ブランドは柑橘系の香りが印象的である中、「ゴードン」は、ジンに欠かせないジュニパーベリーのウッディな香りがしっかりと感じられます。
ビーフィーター ジン
ジンの代表的なスタイルである“ロンドンドライジン”の中でも、象徴的ブランドとして知られるのが「ビーフィーター」です。
4大ジンの中では「ゴードン」の次に歴史が長く、創業したのは1820年。薬剤師をしていたジェームズ・バローがロンドンのとある蒸溜所を買収し、ジンの製造を開始。彼は、薬剤師として持ち合わせていた知見を活かしながらジンを完成させると、ロンドンの象徴でもあるロンドン塔の近衛兵の別称もである「ビーフィーター」と名付けました。
前述したように、ロンドンは“ジンの聖地”ではあるものの、この地で誕生したジンの造り手のほとんどは、長い歴史の中でロンドン市外に拠点を移していました。そんな中でも「ビーフィーター」は、歴史の長いジンとしては唯一ロンドンの地を離れず、いわば聖地を守ってきました。
今では、世界におけるブランド別売上ランキングでは5位を記録(※2019年間実績、Drinks Internationalより)するなど、世界中で人気を獲得しています。
その味わいは、200年もの間、大都市ロンドンでジンを造り続けてきた“正統派のロンドンドライジン”らしさに溢れています。
ジュニパーベリーのウッディな香りがありつつも、柑橘の華やかさも感じられ、派手すぎず、簡素なわけでもない、バランスに長けた味わいが特徴的。その味わいからバーテンダーからも愛されています。
近年は、定番ボトルに加え、プレミアムジンにあたる「ビーフィーター24」や、イチゴのフレーバーが特徴的なピンクジン「ピンク ストロベリー」をリリースするなど、飲み手の幅を広げています。
タンカレー
バーシーンに欠かせないジンとして知られる「タンカレー」もまたロンドンで誕生しました。
創業は1830年。聖職者の家系に生まれたチャールズ・タンカレーが、家の掟を破ってでもジンを造りたいという思いにかられ、20歳という若さで蒸溜所を立ち上げました。
1898年には、ともに切磋琢磨していた「ゴードン」を手がけるゴードン社と合併。当時の世界最大とされるジン会社、タンカレーゴードン社が誕生し、お互いの技術と知見を活かし、ジンをさらに洗練させていきました。
今やブランド別売上ランキングでは世界4位を記録(※2019年間実績、Drinks Internationalより)する「タンカレー」ですが、定番ボトルである「ロンドン ドライジン」の他、2000年に誕生したプレミアムジンの「タンカレー ナンバーテン」もまた、人気を集めています。
容量400Lという、とても小型の蒸溜器「タイニーテン」を使用しながら造られる少量生産のジンで、定番ボトルと同じ素材をベースにしながら、グレープフルーツやオレンジ、ライムなどの柑橘類を、一般的である乾燥させたものではなく、フレッシュな状態のまま使用しているのが特徴です。
柑橘がみずみずしく香りながらもバランスに長けたエレガントな味わいや、大手ブランドの高級商品とあって、瞬く間に人気に。プレミアムジンの価値を多くの人に知らしめ、ジンのプレミアム化に一役買い、昨今大きな盛り上がりを見せるクラフトジンのムーブメントに大きな影響を与えました。
一方で定番ボトルの「ロンドン ドライジン」は、4大ジンの中ではとりわけドライな味わいが特徴的で、マティーニなどクラシックカクテルのベースとして長年愛されています。
ボンベイ ジン (ボンベイ・サファイア)
最後にご紹介するのは、輝くブルーのボトルが特徴的な「ボンベイ・サファイア」など、4大ジンの中でもとりわけ華やかなイメージを有する「ボンベイ ジン」。
4大ジンの中では比較的新しいブランドで、1987年にまずは「ボンベイ・サファイア」から発売されました。
第2次世界大戦後から1980年代ごろまで、ジン全体が低迷期にあった中で発売されたこのジンは、当時の常識をくつがえす3つの取り組みによって、のちに「GINNOVATION」とも呼ばれる変革をもたらしました。
まず1つ目は、ボタニカルレシピの公開。ジン業界では長らく非公開が当たり前だった中で、「ボンベイ・サファイア」は全10種のボタニカルを公開し、ボトルの側面に記載。ジンが「ボタニカルのお酒」だということを世界に知らしめました。
2つ目は美しく輝くブルーのボトルを採用。時代遅れと捉えられてしまっていたジンに、洗練されたラグジュアリーなイメージをもたらしました。
そして3つ目は、「ヴェイパー・インフュージョン製法」という特殊な製法の採用。一般的であるボタニカルの漬け込みはせず、蒸溜時の蒸気を利用することで、ボタニカルの繊細な香味を抽出する方法です。この製法によって、余分な香味を抑えながらボタニカルの華やかな香りが引き立つ軽快でクリアな味わいが与えられ、ジンのイメージ改善に一役買いました。
こうした革新性をまとった「ボンベイ・サファイア」の登場によって、低迷していたジン業界が転換期に。つまり、ボンベイ・サファイアは今の世界的なジン人気の土台を創り上げたブランドの一つでもあるのです。
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