お酒に限らずですが“専門店”で体験するそれは、いつもとは少し違う特別な満足感を得られるもの。
今世界的に盛り上がっているジンの業界において、ジン専門のバーとして有名な大阪の「BAR JUNIPER(ジュニパー)」。
ジンが注目を浴びる以前の2011年に創業し、今や700種前後に及ぶジンを取り扱い、それらを使ったカクテルも楽しめる、日本を代表するジンバーです。
そんな同店の創業オーナーがバーテンダーの川崎正嗣さん。
今回は、ジン業界のトップランナーでもある川崎さんにインタビューを行い、その人となりに迫りながら「なぜジンのお店なのか?」など、お店やジンにまつわる“これまでとこれから”を聞いてみました。
「“めっちゃ美味しいジン&トニックを作る店を出そう”と決めていました」
– まずは川崎さんの今に至るまでに含め、自己紹介をお願いしても良いでしょうか?
川崎さん(以下、敬称略):今現在、大阪にて「BAR JUNIPER」と「BAR JUNIPER SECOND(ジュニパーセカンド)」の他、「THE BAR ELIXIR K(エリクシールK)」を営んでいます。
出身は宮崎でして、当初はフレンチのシェフを目指すべく大阪に渡り、調理師学校に入学しました。
在学中にアルバイトしていたのがバーで、その後店を移して店長職を経験したのちに独立しまして、2008年にエリクシールKをオープン。その後2011年にジュニパーを開き、2016年にその隣のスペースにジュニパーセカンドをオープンさせました。
– 当初はシェフを目指していたのですね。でもそこからなぜバーテンダーになろうと思ったのですか?
川崎:調理師学校時代、生活費や家賃を自分で払っていたので、飲食業界の中で少しでも高い時給をと辿り着いたのがバーだったんです。
意外とチープな動機だったかもしれませんが、最初に働いたBar K(大阪を代表する名門バー)が良い店でした。カクテルの大会で優勝してたり、最初はすごい世界に入ってしまったなと思いましたが、そこで「バーテンダーとは」、「プロフェッショナルとは」みたいな基礎をみっちり学びまして、店を辞める頃にはバーテンダーとして絶対に独立しようと意思を固めていましたね。
– 2011年というと日本ではジンはまだまだ注目されていませんでした。そんな時期にジンのバーを開こうと思ったのはなぜですか?
川崎:やっぱりバーで一番消費するお酒ってジンなんですよね。「一番飲まれているお酒なのになぜジンの専門店はないのだろう?」と長いこと考えてました。
エリクシールKをオープンさせた時から「次はめっちゃ美味しいジン&トニックを作るジンの店を出そう」と決めていたんですよ。
ジュニパーのオープンにあたっては「なるほど、だからここはジンの店なんだ」って思ってもらえるような、ジン&トニックもそうですけど、そういった雰囲気を醸し出せるような内装にもこだわりましたね。
– やはり最初は苦労もあったのでしょうか?
川崎:最初の頃は「何でジンなの?」と言われたり、同業者からは否定的な意見や心配されることも多かったですね。
それに、正直ちょっとだけウイスキーを置いてみようかとか、ブレそうになったことが無かったわけではありません。
それでもジンの店として「プライドを持ってやっていこう」という思いは常にありましたし、地道に続けていくことで認知してもらえるようになりました。「ジンならあの店が良いよ」と紹介いただける機会も増えたようで…
それと「〇〇のジン&トニックが飲みたい」ってジンやトニックの銘柄を指定してくれるお客様が増えましたし、少しずつジンそのものの文化も海外に近づいていってると思いますね。
「ジンには遊び心がある、バーテンダーが作るカクテルと何か近いものを感じます」
– 今はジュニパーとジュニパーセカンドと、2店舗ジンのバーを運営されてますが、これらは何かコンセプトが違うのですか?
川崎:ジュニパーでは、歴史上ジンの始まりは薬だったというところから、薬局をイメージしています。それでジンを薬箱っぽい引き出しの中に収納しているんですよ。
あとは、ジンの蒸溜器をイメージしてカウンターを銅板にしていて、自動販売機に隠された入口なんかもそうですけどスピークイージー(もぐり酒場)の要素も取り入れていますね。こちらはゆっくりお酒を楽しむことができます。
一方でセカンドは、15時からオープンしていますし、もっとカジュアルに楽しめるお店です。価格帯も少し抑えてますし、ハッピーアワーもあるんですよ。シェフが作るジンに合う料理も楽しめます。
– 川崎さんが思うジンの魅力ってどんなところでしょうか?
川崎:やっぱり多様性はありますよね。スピリッツの中で一番、味や特徴など多様性があると思います。
クラシックなジンももちろん大事なんですけど、ジュニパーというハーブさえ使っていればジンと名乗れる(多種多様な素材を使用でき、製法にも比較的自由が利く)というところで、造り手さん達が情熱的に遊べる。そうした遊び心ってジンの魅力だなと思います。
僕らバーテンダーが作るカクテルも、ある意味では個々人の遊びみたいなものですから、何か近いものを感じますね。
– バーテンダーとしてジンのカクテルについてはどうでしょうか?
川崎:多様性があるというところで、ジンのカクテルって本当に様々な顔を見せますし何でもできると思うんですよね。
特にハーブは取り入れやすいと思います。ちょうどお店としてこれから頑張っていこうと思ってたのがハーブなんですよ。自分たちで、市場にあまり出回らないハーブも含め様々なハーブを水耕栽培してまして、それをジンのカクテルに取り入れていこうと思っています。
もちろんフルーツとの相性も良いと思います。