なぜ人気?熱狂的なファンを有するアイラ島のウイスキー「ブルックラディ」

なぜ人気?熱狂的なファンを有するアイラ島のウイスキー「ブルックラディ」

スコッチの聖地とも呼ばれるスコットランド・アイラ島の造り手「ブルックラディ」は単に人気というだけでなく、熱狂的なファンを有することでも知られています。

嗜好品であるお酒は、香りや味わいの良さはさることながら、それ以外の特徴やストーリーからなるブランドのイメージも重要な要素です。
今や世界中で造られ、数えきれないほどの製品が流通するウイスキー業界で、なぜファンを集められているのか。
今回は、ブルックラディが人気の理由について、いくつかご紹介します。

商品協力:レミーコアントロージャパン

ブルックラディは独自の哲学で造られている

世界中で親しまれているウイスキーを手がけていながらも、ブルックラディはまるで新興のクラフトウイスキーのような独自の哲学を掲げています。
アイラ島の海沿いにある蒸溜所では、「原材料と製品はつながっているべきであり、蒸留酒にもワインと同様にテロワール(土壌、気候、地形などに由来する特性)が存在すべきである」という考えのもと、故郷に寄り添いながら革新的なウイスキー製造を行っています。

海沿いにそびえ立つブルックラディ蒸溜所

海沿いにそびえ立つブルックラディ蒸溜所

ウイスキーは一般的に、原材料よりも樽熟成など主に製造のスペックに重きを置かれる傾向があり、原材料の産地はあまり重視されてきませんでした。国外産の大麦に頼る造り手も多い中、ブルックラディでは、アイラ島のものを中心に国内産の大麦のみにこだわっています。
また、大手蒸溜所としては唯一、アイラ島内で製造から熟成、ボトリングまでを行っており、故郷でウイスキーを完成させることにこだわっています。
そうした革新性がある中で、製造には、1881年の創業当時から残る古い蒸溜設備を使用。コンピューターによる制御もせずに、あえて人の手でウイスキーを造り続けています。
ただ革新的なだけでなく、伝統も重んじているのです。
アイラ島のウイスキーは日本でも注目を浴びる傾向がありますが、その中でもブルックラディは孤高の存在とも言えます。

故郷の“テロワール”と“人とのつながり”を大切にしている

大麦

“味わいながら産地を識る”という点で、ブルックラディのウイスキーはぴったりなのかもしれません。
前述したようにスコットランド産の大麦のみを使用しており、「アイラバーレイ」の名がつく銘柄ではアイラ島産のみに絞って使用しています。
「原料が育った環境はウイスキーの特徴として残る」という考えから、大麦の品種、農家、農場の違いやテロワールについて製品に記載し、飲み手が情報として入手できるようになっています。
ここまで原料のテロワールを重んじる造り手は極めて稀で、ブルックラディが人気を呼ぶ要因だと言えます。

また、人とのつながりも大切にしており、「人がウイスキーを育てる」として大麦農家と協力しながら、製造はなるべく人の手によって行われています。
そうした姿勢もあってブルックラディでは、決して大規模ではないながらもアイラ島内の民間企業としては最も多くの人が雇用されています。

蒸溜責任者(ヘッド・ディスティラー)のアダム・ハネット氏はアイラ島出身

蒸溜責任者(ヘッド・ディスティラー)のアダム・ハネット氏はアイラ島出身

挑戦的な姿勢から造られる3つのブランドは全く異なる特徴を持つ

ブルックラディは、スコッチでは珍しく全く異なるコンセプトのブランドを3つ手掛けています。
アイラ島のウイスキーといえば、麦芽の乾燥の際に“ピート”と呼ばれる泥でできた炭を多く焚くことで、燻製香のようなスモーキーなフレーバーを与えているのが特徴です。
蒸溜所名を冠したフラッグシップ・ブランド「ブルックラディ」では、あえてそのピートを使用していません。スモーキーさではなく、(こちらもアイラ・ウイスキーの特徴である)海を連想させる潮っぽさを感じさせる爽やかな味わいで、飲み手を選ばない傾向にあります。
一方でピートをしっかり使用し、クセになるスモーキーフレーバーを与えたのが「ポートシャーロット」。これぞアイラのウイスキーといった力強い香りは中級者以上向けです。
そして、前例のない量のピートを使用し、スモーキーさの指標となる“フェノール値”が世界最高を記録するブランドが「オクトモア」。理論上は世界で最もスモーキーなウイスキーであり、高価格帯ながら毎シリーズほぼ完売しています。

ブルックラディ

ブルックラディ、独特の鮮やかな色は“ラディ・ブルー”ともいうのだとか…

左がポートシャーロット、右がオクトモア

左がポートシャーロット、右がオクトモア

ブルックラディは蒸溜所のオフィシャルカラーでもある水色のボトルに、ポートシャーロットは緑色、そしてオクトモアは黒のボトルといったように、ウイスキーらしからぬモダンなボトルに詰められているのも特徴で、それぞれのカラーはまるで中身の味わいを反映しているかのようです。

ブルックラディの独自性が人気を呼んでいる

ここまでをまとめると、ブルックラディが多くの人を惹きつける理由は、一般的なウイスキーとは一線を画す独自の姿勢・取り組みをしているからだと言えるでしょう。

  • 伝統を大切にしながら革新的なウイスキー造り
  • アイラ島のテロワールにこだわる姿勢
  • 島内産の大麦を中心に国内産大麦のみを使用
  • 異なる特徴を持つ3つのブランド
  • モダンなボトルデザイン

その他にもウイスキー蒸溜所としてはいち早くジン(ザ・ボタニスト)の製造を開始していたり、複雑なウイスキーを造るべくあえて熟成年数に捉われない設計としていたりと、挙げればキリがありません。
そんなブルックラディについては、姉妹サイトのLiquorPage CLUBのオンライン座談会企画でメインテーマとして取り上げており、現在YouTubeで公開中です。ぜひご覧ください。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、ジン専門書籍やテキーラメディアなど外部酒類メディアの執筆協力の他、イベントの企画運営にも携わる。(ただの酒好き)

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