八海山の造り手が新天地「ニセコ蒸溜所」で手がけるジンとウイスキーとは?

八海山の造り手が新天地「ニセコ蒸溜所」で手がけるジンとウイスキーとは?

「八海山」といえば、お酒好きなら知らない方はいないであろう日本酒の代表格。
そんな名酒を手がける八海醸造(新潟・南魚沼)が、なんと北海道のリゾート・ニセコ町に洋酒専門の蒸溜所「ニセコ蒸溜所」を10/1にオープン。
ジンとウイスキーを製造予定で、ジンはすでに地域限定で販売が始まっています。
そこで今回は、日本酒の名門による新たな挑戦をざっくりご紹介します。

日本酒の名門があえてニセコで挑戦する洋酒造り

岩手の名酒「南部美人」や秋田の「山本」、そして宮城の「伯楽星」など、名だたる日本酒を手がける造り手たちが今、ジンなど洋酒も手がけているのはご存じでしょうか?
それらに限らず、ここ数年、和酒の造り手による洋酒分野への参入が全国各地で相次いでいます。

ニセコ町の森の中に佇むニセコ蒸溜所

ニセコ町の森の中に佇むニセコ蒸溜所

そんな中で、酒処・新潟を代表する名酒であり、最も有名な日本酒の一つである「八海山」の造り手・八海醸造でも、2019年から洋酒造りのプロジェクトが動き始めていました。
自社の設備を流用したり、敷地内に蒸溜所を新設する造り手も多い中で、八海醸造が新たな挑戦の地として選んだのは地元・新潟ではなく、遠く離れた北海道のニセコ。
国内有数のスノーリゾートであるニセコは、自然に恵まれ、雪どけの軟水が流れることや寒冷ながらも寒すぎない環境など、ウイスキー造りに適しているともされています。
また、海外からの観光客が多いことでも知られ、日本のお酒造りを伝える場としても適しているといえます。
そのニセコに蒸溜所を新設し“株式会社ニセコ蒸溜所”として新たなスタートを切ることになりました。

蒸溜所内部

蒸溜所内部

蒸溜所を構えるのは、ニセコ町の深い森の中。
自然との共生を大切にするニセコ町の精神に共感し、豊かな景観を活かした保護林に溶け込むことを考慮して建屋が設計されているのだそう。
一方で設備は、ウイスキーの用の蒸溜器として本場スコットランドのフォーサイス社製のものを2基と、ジン用として最高峰と名高いドイツのホルスタイン社の最新型蒸溜器を導入。
八海醸造といえば「よろしく千萬あるべし(米焼酎)」に代表されるように、焼酎を手がけていることでも知られ、ジンやウイスキーなどとはスタイルこそ違うものの、蒸溜の知見と技術は持ち合わせており、それらが活かされることも期待できます。

また、蒸溜所は完全予約制ながらも一般公開されているのも特徴。
見学ツアーの実施や商品の購入などもできるようになっており、飲み手にとっては嬉しい取り組みといえるでしょう。

ウイスキー用のフォーサイズ社製蒸溜器

ウイスキー用のフォーサイズ社の蒸溜器

すでにリリースされているジン「ohoro GIN」

ウイスキーの製造は今年3月より始まっているそうですが、ご存じの方も多いように、ウイスキーは最低でも3年ほどの熟成を必要とするお酒。
蒸溜所の発表によれば、商品としての発売は2024年以降になるとされています。
一方でジンは、その特性上長期の熟成を必要とせず、ウイスキーの熟成を待つ間に商品として飲み手に届けることが可能です。
実際にニセコ蒸溜所では、10/1より「ohoro GIN」という名でクラフトジンの販売が始まっています。

ジン用のホルスタイン社の蒸溜器

ジン用のホルスタイン社の蒸溜器(手前)

ジンは、ベースとなるお酒(スピリッツ)に、ジュニパーベリーを軸に、様々なハーブやスパイス、フルーツといったボタニカルを加え、蒸溜することで独自の香りを与えているお酒。
近年大きな盛り上がりを見せているクラフトジンとして流通しているタイプのジンには、大きな特徴の一つとして、産地ならでは素材や特産品がボタニカルとして使用される傾向があります。
「ohoro GIN」では、北海道産のヤチヤナギと和製ミントとして知られるニホンハッカをボタニカルのキーとして使用。
その他ゆずなどの柑橘類やコリアンダーなど、ジンの伝統的なボタニカルを含む13種類の素材を用い、最新型の蒸溜器でエッセンスを抽出しています。

ohoro GIN

ohoro GINのパッケージ

気になる仕上がりについては、クリアでスムースでありながら、芯のあるしっかりとした味わいに軽やかなシトラスの香りを感じるような仕上がりで、カクテルベースとしても使いやすい味わいなのだとか。
なお「ohoro(オホロ)」という名は、アイヌ語で“続く”を意味する言葉からきており、ニセコの地で生まれたジンが多くの方に親しまれ、未来永劫続くように、という願いが込められています。

製造量の兼ね合いから、当面の間はニセコエリア限定での販売となるそうです。

詳細

【ニセコ蒸溜所】
住所: 北海道虻田郡ニセコ町ニセコ478-15
営業時間: 10:00-17:00 定休日なし
運営概要: ご来場は1日4回の完全事前予約制 ※物販のみの希望も予約制です
定員: 最大10名様/回
開場時間: ①10:00~11:30 ②11:30~13:00 ③14:00~15:30 ④15:30~17:00
見学内容: ウイスキー・ジンの蒸溜設備見学、貯蔵庫見学、Barでの試飲など
料金: 入場・見学無料、BARでの飲食有料
予約方法: オフィシャルwebサイトより予約(2週間前から希望日前日正午まで予約可能)

オフィシャルwebサイトはこちら
https://niseko-distillery.com/

【ohoro GIN】
アルコール分: 47%
容量: 720ml
希望小売価格: 3,800円(税別/箱代別)
発売: 2021年10月1日
ボタニカル: ヤチヤナギ(北海道産)、ニホンハッカ(北海道産)、ジュニパーベリー、 コリアンダー、アンジェリカルート、オリスルート、リコリス、 カモミール、レモン、オレンジ、柚子、ライム、グレープフルーツ

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著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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