日本酒の味のタイプを表す「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」を解説

薫酒・爽酒・醇酒・熟酒を徹底解説

その日本酒がどのような味わいなのか、飲む前に知りたい。そう考える人も多いと思います。
日本酒はたとえ同じ銘柄でも、使用する酒米や酵母の種類、はたまた純米か吟醸か、などいくつもの要素によって味わいは変わります。
「この銘柄だから」や「純米吟醸だから」といったように、一概に判断できないのです。

これがよく言われる「日本酒は複雑でわかりにくい」と言われる所以でもあるでしょう。

これではよくないと、日本酒の味わいを、よりわかりやすくするために定められた指標があります。
それが本記事でご紹介する「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」の4つのタイプです。

「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」の4つのタイプを知ることによって、日本酒各銘柄の香りや味わいが大まかにわかるようになるかもしれません。
本記事ではこれらタイプについて、簡単に解説していきます。

爽酒・薫酒・醇酒・熟酒をまずはざっくり解説

「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」の4タイプは、日本酒の香りの強弱や、味わいの濃さなどを組み合わせてタイプ分けしたもの。
全ての銘柄が4タイプのいずれかにハッキリとわけられる訳ではありませんが、これらを指標として用いることで、味わいの傾向がわかるだけでなく、適した飲用温度や(冷酒が熱燗かなど)、相性の良い料理をある程度知ることができます。

4タイプそれぞれにどのような特徴があるのかは、文字のイメージどおりかもしれません。
例えば爽酒は、香味が控えめで、軽快で爽やかなタイプを指します。
薫酒はフルーティーで香り高いタイプ。
醇酒は芳醇でコクがあるタイプ。
そして熟酒は、長期熟成による濃醇で複雑なタイプを指します。

爽酒・薫酒・醇酒・熟酒のチャート

次にそれぞれのタイプについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

「爽酒」とはどのような日本酒?

軽快で爽やかな特徴を持つ爽酒は、日本酒の種類でいうと、生酒系の日本酒や、本醸造、普通酒、吟醸などが当てはまります。
4タイプのうち、もっとも多くの日本酒が該当するタイプと言っても良いでしょう。

爽酒の香り・味わい

爽酒の味わいを表した図

爽酒の味わいを表した図

爽酒は、香りは控えめですが、フレッシュで青々しいフルーツや菜類のような香りが特徴です。
味わいも、軽快で主張が控えめで、ミネラル感やみずみずしさを感じるサッパリした味わいが特徴です。
いわゆる「淡麗」な味わいとも言えるでしょう。

爽酒に適した飲用温度

なるべく冷やした方が、爽酒のみずみずしさや清涼感が活きます。
冷やしすぎると苦味が際立つことがありますが、爽酒の場合苦味成分も少なめなため問題ありません。

適した飲用温度:5〜10℃前後

爽酒と相性が良い料理

爽やかで軽快な味わいの爽酒は、合わせられる料理の幅が広いことが特徴です。
あえて言うなら、味わいが淡白な魚介類や野菜、そばなどの、軽快でやや薄めの味付けの料理が適しています。

>> そば、刺身、魚の塩焼き、冷奴、イカ・エビなどの炒め物、ロールキャベツなど】

「薫酒」とはどのような日本酒?

フルーティーで香り高いことで特徴の薫酒は、日本酒の種類でいうと、純米大吟醸や大吟醸、純米吟醸や吟醸などが当てはまります。
精米歩合が高く(より磨いている)、比較的高価な日本酒が多い傾向にあります。

薫酒の香り・味わい

薫酒の味わいを表した図

薫酒の味わいを表した図

華やかで香りの主張が強く、りんごやメロン、バナナと言った果物や、花やハーブなど、フルーティーで爽やかな香りが特徴です。
いわゆる「吟醸香」が強いタイプとも言えるでしょう。
味わいは一転、爽やかなものが多く、辛口のものから甘口のものまで様々。
白ワインに似た要素を感じます。

薫酒に適した飲用温度

基本的には冷酒が適していますが、冷やしすぎは禁物です。
あまり冷やしすぎてしまうと、持ち味である香りが閉じてしまったり、酸味・苦味が際立ってしまうかもしれないからです。

適した飲用温度:8〜15℃

筆者的には冷蔵庫(野菜室)から出して15〜20分放置してからが丁度良いと感じます。

薫酒と相性が良い料理

香りが強い薫酒は基本的に食前酒に向きますが、合わせる料理は選びがちです。
爽酒と相性が良い料理でご紹介したような、魚介類や野菜など、淡白で爽やかな味わいの料理が向いていると言えるでしょう。

>> サラダ各種、生牡蠣のレモン添え、アサリの酒蒸し、カルパッチョ、バンバンジー、生春巻きなど】

「醇酒」とはどのような日本酒?

芳醇でコクがあるタイプである醇酒は、日本酒の種類でいうと、主に本醸造や純米、特に生酛や山廃造りの日本酒が醇酒の典型と言えます。
精米歩合が低く(あまり磨いていない)ものや、無濾過や原酒などに多い傾向があります。

醇酒の香り・味わい

醇酒の味わいを表した図

醇酒の味わいを表した図

醇酒タイプは香りはやや落ち着いており、コメそのものを思わせる芳醇な香りが特徴です。
味わいは、コメの旨味が活きており、味わい深くコク深い。後味に力強さを感じるのも特徴です。
ある意味もっとも日本酒らしい味わいがするタイプと言っても良いでしょう。

醇酒に適した飲用温度

醇酒は、基本的に様々な飲用温度に適しており、温度の違いによって味わいに変化があらわれます。
どちらというと高めの温度の方が、旨味がふくらみキレも増すのでオススメです。

適した飲用温度:15〜18℃または40〜55℃

醇酒と相性が良い料理

醇酒は4タイプのうちもっとも食中酒に適しています。
合わせる料理の幅はとても広く、肉料理や味付けの濃い料理にもよく合います。

>> 肉じゃが、おでん、タレの焼き鳥、エビチリ、ステーキ、煮魚、ピザなど】

「熟酒」とはどのような日本酒?

濃醇で複雑な味わいが特徴的な熟酒は、日本酒の種類でいうと、古酒や秘蔵酒、長期熟成酒がこれにあたります。
特に3年以上の長期熟成酒でよく見られ、稀少性が高いため、値段も高価なものが多いです。

熟酒の香り・味わい

熟酒の味わいを表した図

熟酒の味わいを表した図

4タイプの中ではもっとも個性的で、ドライフルーツやスパイス、キノコのような熟成感を感じる深い香りが特徴的です。
味わいは、とろりとした甘みや強い旨みを感じるものが多く、複雑かつ力強い、独特の味わいが魅力と言えるでしょう。
嗜好性が高く、好みは分かれがち。

熟酒に適した飲用温度

熟成感が持ち味の熟酒は、冷やしすぎず温めすぎずが良いでしょう。
よりしっかりしたタイプの熟酒なら、やや温度は高め。
飲みやすくしたいのであれば、低めの温度にすることで、香り・味の主張を抑えることができます。

適した飲用温度:15〜35℃

熟酒と相性が良い料理

香り・味ともに主張が強く、個性的な熟酒は、合わせる料理を選ぶ傾向があります。
基本的には味の濃い料理や、油の多い料理などと相性が良いです。

>> 豚の角煮、すき焼き、熟成チーズ、ビーフシチュー、甘酢餡かけ、麻婆豆腐など】

まとめ

ここまで「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」の4タイプについて、それぞれの特徴を解説してきました。

最後にざっくりとまとめると…

  • 爽酒は、普通酒や吟醸などが該当し、軽快で爽やかな特徴を持つ。冷やがおすすめ
  • 薫酒は、純米大吟醸や大吟醸が該当し、フルーティーで香り高い。やや冷やがおすすめ
  • 醇酒は、純米や本醸造(特に生酛、山廃)が該当し、芳醇でコクがある。燗酒がおすすめ
  • 熟酒は、古酒や長期熟成酒が該当し、濃醇で複雑な味わい。常温がおすすめ

このように、4つのタイプがそれぞれ全く違った特徴を持ち、相性の良い料理も全く異なることがお分かりいただけたと思います。
しかし、人それぞれ味覚や捉え方が異なることから、このような指標はあくまで目安にしかなりません。
あまり盲目的に頼らない方が、新たな発見があるかもしれません。

とはいえ、銘柄選びに迷った際や、合わせる料理や飲み方に迷った際など、非常に役に立つ指標でもあるので、うまく活用していきたいところ。
結局のところ、自分の感覚と客観的な指標とのバランスが大切なのかもしれません。

それではこの辺で。

【参考文献】
日本酒の新しい選び方|日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会
日本酒の教科書|新星出版社 著・木村克己

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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