注目のメスカル“ブエンスセソ”のプロデューサーに聞く「メスカルの今」

「ブエンスセソには“楽しい時間”を過ごしてほしいという想いが込められている」

ブエンスセソとディエゴ氏

ブエンスセソとDiego氏。自身の体験からこのメスカルが誕生したのだという。

ディエゴさんは日本で味わえる魅力的なメスカルの一つ“ブエンスセソ”のプロデューサーであり、生みの親の一人でもあるわけですが、そもそもなぜブエンスセソを創ろうと思ったのですか?その誕生秘話が聞きたいです。

Diego:私は昔、交換留学でドイツに住んでいました。
その時にドイツ人のファビアンと知り合った。彼がその後メキシコに遊びに来てくれて、とても素晴らしく楽しい時間を過ごしました。
その時に飲んでいたお酒がメスカルだったんです。
そのシーンがあまりにも鮮烈で、思い出を言語化するのは難しいけど、何か形に残せればその思い出はもっと楽しいものになる。そう思って、楽しい時間を記念した自分たちのメスカルを創ろうとなったんです。

それで“ブエンスセソ(日本語で楽しい時間という意味)”というネーミングのメスカルが誕生したんです。

ある意味では友情が創ったメスカルということですね。ではそのブエンスセソにはどういった特徴がありますか?

Diego:ブエンスセソはオアハカ州のサン・ルイス・デル・リオという山間の小さな村で、エスパディン種のアガベを使って造られています。
そして一つの生産場所で造られたものだけがブエンスセソであって、いくつかの生産場所で造られたものをブレンドしたりはしていません。

蒸留所の名前を聞いても良いですか?

Diego:フランシスコおじさんが造っています。(笑)

というのも、メスカルは蒸留所と呼べるような大きな施設では造られていないんです。
メキシコには「テキーラは工場で造られ、メスカルは農家で造られる」という有名なフレーズがあります。
ウイスキーで例えるなら、山崎蒸留所で造っているというより、山崎さんが造っている、メスカルはそんな感じです。

それで、そのフランシスコおじさんがアガベの栽培も行っている。
そこで2つの蒸留器を駆使して年間約1万リットルのブエンスセソが造られています。

要するにフランシスコ一家に全てが委ねられているんです。
本当に彼はスーパーマンですよ。

アガベはエスパディンという品種だけを使っているのですね?

Diego:そうです。
8年〜10年栽培したエスパディン・アガベを使用しています。
その球茎部分(ピニャ)を5m四方の穴に入れ(アーセンオーブン)、約5日間蒸し焼きにします。
その後、馬の力を借りて石(タオナ)ですりつぶして搾汁します。

発酵プロセスもテキーラとは少し違うようですが…

Diego:テキーラとは違いメスカルは、発酵の際に、培養された酵母を使わずに野生酵母の力によって自然発酵させています。
ブエンスセソは発酵期間がだいたい1週間…自然発酵なので天候にも左右されます。

他、蒸留など各プロセスもだいたい1週間で、アガベの収穫からだいたい3週間でブエンスセソは完成します。

しかし自然発酵だとバッチ(仕込み)の違いによって品質に差が出そうですが、ブエンスセソでは異なるバッチの原酒をブレンドしたりしているのですか?

Diego:山間と海に近いところとでは当然野生酵母の種類が違いますし、天候にも左右されます。
でもその条件の違いがメスカルの違いを生み出していると考えています。
違うのが当たり前という前提なんですよ。

とはいえブエンスセソとして世に出すために多少はブレンドしているので、大きく味が変わることはありませんが、例えばワインが生産年によって質が変わるのと同じような考え方がメスカルにもあるんです。

ブエンスセソのボトル

カラフルなボトルデザインにも理由があるという。

なるほど…それは面白いですね。ではディエゴさん一押しのブエンスセソの飲み方は何ですか?

Diego:ブエンスセソは複雑な味わいが魅力です。
それを感じていただきたいのでストレートでゆっくり味わうのがオススメです。
個人的にはダークチョコレートと一緒に味わうのが好きですね。

もちろん度数が高いお酒ですから、はじめはカクテルにして飲むのも良いと思いますよ。

ブエンスセソはカラフルでアーティスティックなボトルデザインですよね。これには何か理由があるんですか?

Diego:私たちは自分たちのアイデンティティとメキシコへのリスペクトを大切にしています。
メキシコのカラフルな文化を伝えたい、そして楽しい時間を共有してほしい、それを表現したいと思ってこのデザインを採用しました。

それでは最後に、日本の方にどんな風にブエンスセソを楽しんでもらいたいですか?

Diego:最も伝えたいのはブエンスセソはセレブレーション、つまりお祝いの酒だということ。
自分たちにとってブエンスセソを手がけること自体がお祝いであって、楽しい時間なんです。
だから日本のみなさんにも、ブエンスセソを通じてもっともっと楽しい時間を過ごして欲しいと思っています。

本日はメスカルとブエンスセソにまつわる貴重なお話、ありがとうございました!

トップバーテンダーが提案するブエンスセソを使ったカクテル

今回、インタビューにご協力いただいた店舗、SPIRITS BAR Sunface SHINJUKUのオーナーバーテンダー、江刺幸治さんにブエンスセソを使ったカクテルを提案いただきました。

キューカンバー メスカリータ
キューカンバー メスカリータ
材料:ブエンスセソ / 日本酒 / ライムジュース / キュウリ

メスカル版マルガリータをツイスト。キュウリの爽やかな香りとメスカルの複雑なフレーバーが活きたカクテル。

メスカル ネグローニ
メスカル ネグローニ
材料:ブエンスセソ / カルパノアンティカ フォーミュラー / グランクラシコ ビター / ボブズ アボッツビターズ

世界的ブームのネグローニをメスカルでツイスト。メスカルのスモーキーなフレーバーが活きた大人の味わい。

まだまだ日本では知られていないメスカルですが、記事中にもあったように、はじめのうちはカクテルで味わうのもオススメです。
その後ストレートで味わうのも良いでしょう。
より本格的に味わうならヒカラを使って、オレンジや、ディエゴさん一押しのダークチョコと一緒に味わってみてください!

ちなみにブエンスセソは現状、Amazonで販売されているようです。
気になった方は是非チェック!

協力:株式会社ワンズワード(ブエンスセソ輸入元)、JUAST、SPIRITS BAR Sunface SHINJUKU
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著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

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