なぜテキーラは「サボテンのお酒」と誤解されるのか?

テキーラはサボテンのお酒ではない

テキーラは何かと誤解が多いお酒です。
よくある誤解として「度数が90度もある」「罰ゲーム用のお酒」などありますが、それらと同じくよくある誤解が「テキーラはサボテンのお酒」というもの。

誤解と言っているからにはもちろんこれは間違いであり、テキーラはサボテンのお酒ではないのですが、そもそもなぜ「サボテンのお酒」と誤解されるのでしょうか?
本記事ではテキーラにあまり詳しくない人でもわかるように、この理由について筆者の視点で迫っていきます。

テキーラの度数についてはこちらの記事で解説しています。
テキーラの度数は高いわけではない?他の蒸留酒と度数を比較

テキーラのサボテンではなく「アガベ」からできるお酒

冒頭で述べているように、テキーラはサボテンが原料のお酒ではありません。
テキーラでは「アガベ」が主な原料として使われています。

聞きなれない言葉ですが、アガベとは、サボテンと同じ多肉植物の一種。
とはいえサボテンの仲間というわけではなく、リュウゼツランと呼ばれる大型の植物の仲間です。
見た目も特にサボテンに似ているわけではなく、強いていうならアロエに似ているでしょうか。

このアガベの葉を切り落とし、ピニャと呼ばれる茎部分を絞ったものがテキーラの主な原料となり、サボテンは一切使われません。
ではなぜ「サボテンのお酒」と誤解されるのでしょうか?次項でその理由に迫ります。

アガベの写真。同じ多肉植物であるアロエと似ている。

アガベの写真。同じ多肉植物であるアロエと似ている。

By jay8085 | Blue Agave, Tequila, Mexico, CC BY 2.0

アガベについて詳しくはこちらの記事で解説しています。
テキーラの原料「アガベ」とはどんなもの?【徹底解説】

「サボテンのお酒」と誤解されるのはやっぱりメキシコのお国柄?

テキーラがサボテンのお酒と誤解される最らしい理由は、やはり産地であるメキシコのイメージでしょう。

テキーラは、実は厳しい規定があり、メキシコの限られた州(テキーラ5州ともいう)でしか生産が許されないお酒。
当然、日本で見かけるテキーラは全てメキシコ産で、そのため「テキーラ=メキシコのお酒」となんとなくイメージされることが多いのですが、メキシコと聞いてみなさんは何を思い浮かべるでしょうか?

メキシカン料理や古代文明、リゾートなど思い浮かべる人は多いかもしれませんが、それと同じく、もしくはそれ以上に「サボテン」を思い浮かべる人も多いと思います。
見るための植物としてだけでなく、食用としても重宝されるなどサボテンがメキシコの特産物であるのは間違いなく、「メキシコ=サボテン」はある意味正解と言えるでしょう。

このイメージを強く持っている人は少なくなく、また、サボテンがお酒の原料として成り立ちそうなことから、「テキーラといえばメキシコ、メキシコといえばサボテン、だからテキーラはサボテンのお酒だ」と誤解する人が多いのでしょう。

とはいえもちろん、これだけが理由ではないでしょう。

あのサボテンのテキーラも影響している?

これまでたくさんのテキーラを飲んだ人なら「ポルフィディオ」という名のテキーラを見かけた、もしくは飲んだかもしれません。
実はこのポルフィディオ、ある強烈な特徴を持ったテキーラなのです。

そう、“ボトルの中”にサボテンの細工が施されているのです。
とてもユニークなボトルで、女性からも「かわいい」と評判が良く、かなり個性的な見た目から一度見たら忘れないテキーラでもあります。(ゆえに巷では「サボテンのテキーラ」と言われることも)
しかも、銘柄にもよりますが1万円を超える高級テキーラでもあり、さらに同ブランドの説明文では、しばしば「ロバートデニーロの愛飲酒」というパワーワードが踊っていることもあり、テキーラの中でもとりわけ有名なブランドの一つなのです。

このように有名なテキーラであるポルフィディオに、あろうことかサボテンの細工が目立つように施されているため、「テキーラはサボテンのお酒」と誤解する人がいても何らおかしくないでしょう。
(ちなみにポルフィディオにはラムもあり、ラムのボトルの中にはヤシの木が施されているのですが、これまたラムの原料はヤシの木ではなく、サトウキビ由来のものです。ラムでもテキーラ同様に誤解を招いているかもしれません。笑)

ポルフィディオは正式にはテキーラではない?
「サボテンのテキーラ」ことポルフィディオについて、本記事では便宜上テキーラとしていますが、実はポルフィディオは正確にはテキーラでありません。
テキーラの厳格な定義を満たしていないからなのですが、製法自体はテキーラと同じであり、味もテキーラそのものであるため、バーのメニューや通販のカテゴリーでもテキーラに分類されることがほとんどです。

テキーラの定義にはついてはこちらの記事で解説しています。
テキーラの定義とは?名前の由来と生産地についても説明!

まとめ

ここまでをまとめると…
「テキーラはサボテンのお酒」という誤解は、メキシコのお国柄が強く関係と見られ、さらに、有名なテキーラにサボテンがあしらわれていることで誤解を助長している。
といったところです。

ポルフィディオについては、正式にはテキーラでないのにテキーラの誤解を助長しているかもしれないと考えると、何とも言えない気持ちになります。がしかし、もちろんポルフィディオ側は意図的ではないでしょうし、ポルフィディオ自体はとても美味しいお酒ですから、罪はないでしょう。笑

最後に正しい答えを再掲すると、「テキーラはアガベのお酒」です。
ぜひ次回テキーラを飲む際は、「サボテンじゃなくてアガベのお酒なんだよ」と知人に言いふらしてください。

著者:小針 真悟

[LiquorPage運営責任者] お酒の現場を7年経験したのちに独立。お酒の魅力を多くの人に知ってもらうべく、2016年11月に「LiquorPage」の運営を開始。 洋酒から和酒まで幅広い知見をベースに、様々な酒類専門メディアの執筆・編集のほか、酒類イベントの企画運営やWEB制作、プロモーション業にも携わる。写真撮影も行うなど、お酒を通じた様々な制作業を一人でこなす。(ただの酒好き)

関連記事

  1. 女性達が手がけるメスカル「アハル」の魅力と、プロに聞く美味しい飲み方 女性達が手がけるメスカル「アハル」の魅力と、プロに聞く美味しい飲…
  2. 米国で大人気!骸骨ラベルのテキーラ「エスポロン」の魅力と、アンバサダーに聞く飲み方 米国で大人気!骸骨ラベルのテキーラ「エスポロン」の魅力と、アンバ…
  3. 「マルガリータの日」セレブレーションパーティーが2/24に開催!マルガリータを飲んでお祝いしよう 「マルガリータの日」セレブレーションパーティーが2/24に開催!…
  4. テキーラ・個性的で魅力的なボトル テキーラほどアート性が高く個性的な”ボトル̶…
  5. 待望の日本上陸を果たしたテキーラ「フォルタレサ」は一体何が凄いのか? 待望の日本上陸を果たしたテキーラ「フォルタレサ」は一体何が凄いの…
  6. 骸骨の貴婦人も登場?11/1-2の死者の日は「ドン・フリオ」テキ…
  7. テキーラのブランド、世界にいくつある?全ブランド数を調べてみたら驚きの数が流通していた テキーラのブランド、世界にいくつある?全ブランド数を調べてみたら…
  8. 世界のトップバーでトレンドのテキーラ・ランキングTOP5【2019】 世界のトップバーでトレンドのテキーラ・ランキングTOP5【201…

おすすめ記事

日本一のバーテンダーと行くロンドン・バー巡り - 旅でかきたてられた創造力とは?その集大成カクテルもご紹介 日本一のバーテンダーと行くロンドン・バー巡り – 旅でかきたてられた創造力とは?その集大成カクテルもご紹介

新たな発見や想像しえないインスピレーションを得られるのは、旅の大きな醍醐味の一つ。日本一のバーテ…

日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』後編 - こだわりの蒸溜法と最先端のサスティナビリティとは? 日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』後編 – こだわりの蒸溜法と最先端のサスティナビリティとは?

『ボンベイ・サファイア プレミアクリュ』のカクテルコンペティションで日本一に輝いた加藤晋悟さん(TH…

日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』前編 - アンバサダーが語るボタニカルへのこだわりとは? 日本一のバーテンダーと行く『ボンベイ・サファイア蒸溜所』前編 – アンバサダーが語るボタニカルへのこだわりとは?

青く輝く美しいボトルで知られる『ボンベイ・サファイア』は、日本でも人気のジンですが…その蒸溜所の様子…

人気の記事

  1. あのパーカーポイントが日本酒に!90点以上78銘柄を発表 日本酒版パーカーポイント
  2. ジャパニーズ・クラフトジンが今アツい!話題の4銘柄をご紹介 ジャパニーズ・クラフトジン
  3. 日本でも流行必至!「クラフトジン」の特徴と銘柄まとめ クラフトジンとは?
  4. ウイスキー世界売り上げランキングTOP20 世界ウイスキー売上ランキング
  5. 世界一売れているビールは?2015年世界シェアTOP10を発表! 世界一のビールは?

新着記事

関連記事

PAGE TOP