世界に羽ばたくジン「季の美」はいかに造られているのか?京都蒸溜所取材レポート

京都から世界に羽ばたくジン「季の美」はいかに造られているのか?京都蒸溜所取材レポート

ウイスキーと同じように、今、日本の“クラフトジン”も世界での存在感を増してきています。
なかでも「季の美 京都ドライジン」は、世界で最も権威ある酒類品評会の一つ、インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション 2018(IWSC)で部門最高賞であるトロフィーを受賞し(コンテンポラリー・ジン部門)、世界最高のジンの一つとなりました。

今回LiquorPageでは、この季の美を手がける京都蒸溜所(京都市)に独占取材を敢行!
どのようにジンが造られているのか、その様子をレポートしていきます。

クラフトジンとは
ベースとなるスピリッツに、ジュニパーベリーを軸としたハーブや果皮、スパイスなどの“ボタニカル”を加えて蒸留し、香味づけされたお酒がジン。
その中でも、製法や素材など強いこだわりのもと造られる個性派ジンを“クラフトジン”と呼ぶ。少量生産のものが多く、その産地ならではのボタニカルが使われる傾向も強い。

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日本初のジンに特化した蒸留所「京都蒸溜所」

2015年に誕生したばかりの京都蒸溜所は、日本では初となるジンに特化した蒸留所としてオープンし話題となりました。
拠点を構えるのは京都市南区。JR東海道本線で京都駅から(大阪方面)一つ先に位置する西大路駅から、タクシーで10分ほどの場所にあります。

蒸留所のサイズは、国内のウイスキー蒸留所などと比べるとかなりの小規模ですが、海外含むクラフトジンの蒸留所としては「まあまあのサイズ」だとか。
しかし、世界的に有名になったジンの蒸留所としては、(筆者の主観ですが)少し小さい印象を受けます。

京都蒸溜所の内観。

京都蒸溜所の内観。写真の中央の複数のタンクは原酒を保管するもの。奥の大きなタンクはベーススピリッツや水を保管するもの。

蒸留所内はボタニカルの香りが漂う

いざ中に入ると、まず感じるのが、ボタニカルの香り。
季の美らしくとりわけ柚子の香りが蒸留所内を包んでいました。

案内していただいたマーシーさんは長年ジンの本場イギリスに住んでいた。

マーシーさんは長年ジンの本場イギリスに住んでいたという。

この日案内してくれたのは、製造チームの“マーシー”さんこと佐久間さん。
説明していただきながら設備を見せていただきました。

まず見せていただいたのは、季の美に使われるボタニカル。
季の美には、宇治の玉露やオーガニックの柚子、山椒、ヒノキなど京都産のボタニカルが使われています。

季の美の重要なボタニカルの一つ、玉露は宇治の老舗茶舗、堀井七茗園のものを使用している。

季の美の重要なボタニカルの一つ、玉露は宇治の老舗茶舗、堀井七茗園のものを使用している。

特徴的なのは、柚子や山椒など季の美の香りの軸となる素材が、乾燥させたものではなくフレッシュであること。(一般的には乾燥させたものが用いられる)
フレッシュな状態のまま真空パックで冷凍されます。

柚子と山椒が入った冷凍庫。柚子は収穫の際に蒸留所スタッフが契約農家まで手伝いに行き、鮮度を保つためにすぐさま皮むきして真空冷凍するという

柚子と山椒が入った冷凍庫。柚子は収穫の際に蒸留所スタッフが契約農家まで手伝いに行き、鮮度を保つためにすぐさま皮むきして真空冷凍するという。

こちらは冷蔵保管されていたヒノキ。「実は(ジンの根幹となるボタニカルである)ジュニパーもヒノキ科です。そういった意味では和のジンとして味わいを醸しだすうってつけの存在なのかなと思います」とマーシーさんは言う。

こちらは冷蔵保管されていたヒノキ。「実は(ジンの根幹となるボタニカルである)ジュニパーもヒノキ科です。そういった意味では和のジンとして味わいを醸しだすうってつけの存在なのかなと思います」とマーシーさんは言う。

続いて見せていただいたのは、ベーススピリッツや蒸留所内を循環させる水などのタンク。
季の美ではベーススピリッツに、和のジンらしく米のみを原料としたライススピリッツが使われています。
このベーススピリッツが文字通り季の美のベースとなり、これと各ボタニカルを蒸留することで季の美の原酒が出来上がるという、重要かつ多用する原料のため、ひときわ大きなタンクに保管してあります。

写真中央がライススピリッツのタンク。90度前後で仕入れたものを水で加水し、最適な度数に落とす。タンクはこれ以外にも2つあるという。

写真中央がライススピリッツのタンク。90度前後で仕入れたものを水で加水し、最適な度数に落とす。タンクはこれ以外にも2つあるという。

こちらは冷水と温水を保管するタンク。

こちらは冷水と温水用のタンク。

タンクに入った冷水と温水は、それぞれ場内を循環しており、例えば冷水はコンデンサーに送られ、蒸留の蒸気を冷やして液体を取り出すために用いる重要なもの。
これらはレバーで循環する経路を変更するそうなのですが、間違えて温水を冷水タンクに送ってしまうと蒸留ができなくなってしまうなど、ミスが許されない作業なのだとか。そのためアラームを設置するなどして適切に処置できるよう徹底しているそうです。

用途が異なる2種の蒸留器

次はいよいよ蒸留器。
京都蒸溜所では450Lと140Lの2種の蒸留器が用いられています。
どちらもコラムスチル(精留塔)が連結された、ドイツのCarl社製のいわゆるハイブリットスチルです。

左が450Lの蒸留器、右が140L。どちらもコラムスチルが連結されており、ボイラーで加熱する。

左が450Lの蒸留器、右が140L。どちらもコラムスチルが連結されており、ボイラーで加熱する。

各蒸留器はそれぞれ用途が異なると言います。
450Lの方は、ボタニカルを蒸留する蒸留器で、こちらにはヴェイパーインフュージョン製法などに用いられる、ボタニカルを入れるバスケットも付いています。
しかし今のところバスケットは使用しておらず、さらにはコラムスチルも使わずに蒸留していると言います。

ボタニカル用の蒸留器。バスケットとコラムスチルは使用していないという。

ボタニカル用の蒸留器。バスケットとコラムスチルは使用していないという。

別の角度から見た450Lの蒸留器。写真中央の銅製コラムスチルの左側のステンレスの筒がコンデンサー。右側の筒がバスケット。

別の角度から見た450Lの蒸留器。写真中央の銅製コラムスチルの左側のステンレスの筒がコンデンサー。右側の筒がバスケット。

これを用いて造り出された原酒は、蒸留時に最初に出てくる荒い部分(ヘッド)と最後に出てくる部分(テール)は取り除き、真ん中の部分(ハート)のみが原酒としてタンクに保管されます。
もう一方の140Lの蒸留器は、この時取り除かれたヘッドとテールの部分を再蒸留する専用のもの。
こちらはコラムスチルも使用し、出来上がったスピリッツは次回のボタニカルの蒸留に活用されます。

ちなみに、蒸留後に器内に残ったボタニカルは、熱と水によって分解され、肥料として契約農家に送られるのだとか。
近年様々な分野で重要なキーワードとなっている「サスティナビリティ(持続可能性)」は季の美でも実践されているようです。

6種の原酒はそれぞれ別々のタンクへ

最後に見せていただいたのは原酒を保管するタンク。
普通ジンでは、数種使用されるボタニカルは全てまとめて蒸留されますが、季の美では11種のボタニカルを6つのグループにわけ、それぞれ別々に蒸留しています。
手間がかかり、6つの原酒をブレンドする技術も要しますが、そうすることで目指すべき味を実現していると言います。

そのため原酒のタンクはいくつも並んでいます。

並べられた原酒タンク。一番大きなものは基礎となるジュニパーなどを使用した原酒が詰められるそう。

並べられた原酒タンク。一番大きなものは基礎となるジュニパーなどを使用した原酒が詰められるそう。

こちらはブレンディングタンク。

こちらはブレンディングタンク。

これらの原酒をブレンドし、加水したものを保管するのがブレンディングタンクです。
こちらで1〜2週間熟成され、ボトリングのラインに移され、ようやく「季の美」が完成します。

以上で見学は終了。

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季の美について独占インタビューも敢行!

最後にゲストルームにて、6つの原酒と季の美をテイスティング。

6種の原酒と完成品の季の美をテイスティング。

タイプの異なる6種の原酒と完成品の季の美をテイスティング。

6つの原酒はどれも完成度が高く、特にお茶が好きな筆者としては「茶」の原酒は、玉露の甘みがしっかり活きており、素晴らしいと感じました。
やはりどのように造られているのか、自分の目で確かめた後だと、その完成度の高い味わいにこれまで以上に納得がいきます。

実は今回の取材では、見学取材だけでなく、季の美の誕生秘話と今後についてインタビューもさせていただきました。
その内容は下記の記事でまとめています。
ぜひこちらもチェックしてみてください!

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小針 真悟
著者:小針 真悟

[LiquorPageオーナー / GINfest.TOKYO運営メンバー] 豊富な現場経験や長年のお酒愛によって、ジンを筆頭にあらゆるお酒の知識を持つ。

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